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17話:お嬢様は未来の義姉と仲良く交流しております

 

 週末、フィーリアは王宮を訪れていた。来月に迫った第一王子の結婚式に王族関係者として出席するため、その打ち合わせに来ているのだ。その合間、フィーリアは未来の姉であるシャーロットとお茶と会話を楽しんでいた。


 第一王子ルキウスの婚約者シャーロットは昨年貴族学院を卒業し、結婚に向けて様々な教育を受けていた。第二王子ラシオスの婚約者であるフィーリアとも十年来の付き合いである。


「いよいよですわね、シャーロット様」

「もう覚えることが多くて大変よ」

「まあ、そんなに?」

「式にお招きする近隣諸国の方々のお名前や立場などを全部暗記しなくてはなりませんの。挨拶の際に失礼があってはいけませんからね」


 第一王子ルキウスはブリエンド王国の次期国王である。王族の結婚ともなれば国境を接する国はもちろん、国交のある国からも王族やそれに準ずる立場の人物が招待される。招待客の総数もかなりのものだ。それらの情報を全て覚えなくてはならないのだから、シャーロットの苦労は計り知れない。


「貴女も自分の式が近くなれば分かるわ。手順や作法だけでもすごいのよ」


 苦笑いを浮かべているシャーロットだが、どこか嬉しそうにも見える。ルキウスとの仲は睦まじい。十数年の婚約を経てようやく結婚に至るのだから、苦労や重圧より幸せへの期待感が優っているのだろう。


 第一王子のルキウスが王位に就いた後、第二王子のラシオスは王の補佐として兄を助けることになっている。故に、結婚後も王宮に住み続け、兄嫁となるシャーロットとは家族同然の付き合いとなる。女性同士、また同じ王族に嫁ぐ立場として二人は昔から仲が良い。だからこそ、弱音も吐ける。


「わたくし、シャーロット様と姉妹になることをとても楽しみにしておりますの。でも、ラシオス様のお相手がわたくしで務まるのかと不安になってしまって」

「珍しく弱気なのね、フィーリアさん。まあ分からないでもないわ。私もマリッジブルーというか、言い様のない不安に襲われることはよくありますもの。結婚式の日取りも決まって後戻り出来なくなって、やっと覚悟が出来たくらいですのよ」

「シャーロット様でもそうなのですか」

「そうよ。不安になるのは当たり前。だからそんな悲しそうな顔をしないで欲しいわ」


 沈んだ表情をした未来の義妹を案じ、シャーロットはにっこりと微笑んでみせた。それを見て、フィーリアも無理やり笑顔を作った。


「そうそう。招待客の一人が期間限定で貴族学院に転入してくるそうよ」

「留学ですか?」

「そうみたい。隣国の王子が見聞を広めるために来られるの。一ヶ月ほど滞在して、私たちの式に参列してから帰国する予定なんですって」

「隣国の王子……」


 短期留学とはいえ、隣国とはその後も付き合いが続く。下手に扱えば国同士の問題にも成り得る。


「もしかしたら同じクラスになるかもしれないわよ」


 そうなれば気が重い、とフィーリアは嘆息した。

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