僕は君に会えない
レビュー執筆日:2021/6/15
●一辺倒な点が薄れ、彼らの持ち味がより分かりやすくなった印象が。
【収録曲】
1.ライフ/アフターライフ
2.タイムトラベラー
3.生活と自粛
4.遺書
5.僕の音楽を聴いてくれてる君へ
6.カウントダウン
7.月曜日
8.猫と飛行機
再びドラマーが脱退し、サポートメンバーを交えた3人体制となったそれでも世界が続くならの初となるEP(構成的にはミニアルバムと大差無い感じがしますが)。ここ数作の彼らは、個人的には良くも悪くも一辺倒な印象がありましたが、今作においては、速いテンポで一気に駆け抜ける『僕の音楽を聴いてくれてる君へ』やレゲエのリズムとテクニカルな演奏が耳に残る『月曜日』、8分の12拍子の『猫と飛行機』と、曲調のバリエーションが若干増えたように思えました。
曲ごとの歌詞のテーマやフレーズに関しても、印象に残りやすいものが増えたように感じられます。『ライフ/アフターライフ』は「心中しようとしたのに自分だけ死ねなかった」というファンの実話をもとに作ったようなのですが、そういった話を変に飾り立てることなくしっかりと彼ららしい楽曲に落とし込んでいますし、『タイムトラベラー』の「彼女が笑ってるのは ずっと幸せだった からじゃない」という歌い出しのフレーズは非常に秀逸。『カウントダウン』においては、「夢」や「愛」という言葉の無責任さを歌いながらも「君が生きた今日は 本物のドキュメンタリー」とある種の肯定感を持ったフレーズで締める点からは彼らなりの「優しさ」というものを受け取れるのではないでしょうか。
ここまで「ここ数作との違い」を中心に述べてきましたが、別に作風が変わったわけではありません。サウンドにしろ歌詞にしろ、「鬱々とした雰囲気をまといながらも、その中に一筋の光のような柔らかな希望も感じられる」という点は相変わらずですが、今作においてはそれがより分かりやすくなった印象があります(先程挙げた『タイムトラベラー』の冒頭のフレーズはまさにそれを体現していると言えるでしょう)。メロディと歌詞の結び付きがもっと強くなってほしいところもありますが、一辺倒な点が良い意味で薄れたこともあって、ここ数作の中で一番の出来になっているように思えました。
インタビューによると、ボーカル兼ソングライターの篠塚将行は最近になって「たくさんの人に知ってもらう」ことに自覚的になったようですが、今作はその思いがある程度表れた結果と言えるかもしれません。そんな彼らが今後どのような作品をリリースするのか注目していきたいところです。
評価:★★★★★