それでも世界が続くなら
レビュー執筆日:2019/5/1
●ライブ感を重視した、彼らのドキュメントとも言えるアルバム。
【収録曲】
1.イツカの戦争
2.魔王とバッドエンド
3.SNSとオフライン
4.銃声のエンターテイメント
5.春と呪い
6.ハピネス
7.ユートピアの生活費
「それでも世界が続くなら」がドラマーの脱退による活動中止前にリリースしたミニアルバム。(現在はドラマーを探しながら暫定的に活動を再開しているようですが)。このアルバムは、彼らの他の作品と比べてかなり音が粗く、ライブを意識したかのような造りになっています。演奏が上手いというわけではなく、ボーカルも相変わらず粘着質で非常に癖が強いため、人によっては聞くに堪えないように感じられるかもしれませんが、元々彼らは「完成度の高い作品を見せる」と言うよりも、「ネガティブな感情を率直に音楽として表現する」作風のため、むしろこのようなサウンドの方が、彼ららしさがよく表れているのではないかと思えます。(このアルバムをセルフタイトルにしたのはそういう理由かもしれません)特に、『銃声のエンターテイメント』の最後の急に激しくなる展開には鬼気迫るものを感じ、こういった録り方ならではの楽曲になっているのではないでしょうか。
しかし、個人的にはもう少しフックとなるメロディを用意して、楽曲ごとにバリエーションを持たせてほしかったところ。特に、今作においては音が粗く潰れているように聞こえてしまうため、雰囲気は伝わるものの1曲ごとの印象が薄く感じられ、どういう曲だったか覚えにくいという状況に陥っているように感じられます。(もちろん、意図したところもあるのでしょうが)彼らのCDの帯に「音楽を聴きたくなくなった人にこそ聴いてほしい」という文言がよく使われているのですが、私のように「バリエーションが」「覚えにくい」などど書く「音楽好き」よりも、そうでない人の方がこの音楽が「刺さる」かもしれません。「音楽を聴く人」のみならず、より多くの「音楽を聴きたくなくなった人」に届くことを信じて、このレビューを締めさせていただきます。
評価:★★★★




