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飲みニケーション・宰相

 悪い奴を退治するのに必要な事は、事前に「誰に・何をするか」周知しておく事。

 悪い奴だからといってすぐに切り捨てると、周りに大きな被害が出るんだよ。面倒だよね。



「――と、言うわけだ。殺しはしないけど、あの大臣は潰すよ。

 俺の土地を荒らして管理不十分を理由に取り上げようとするんだ。なら、ちゃんと管理していることを教えてあげないとね」


 密猟者の元締めは、この国の大臣の一人だった。

 密猟の理由は、俺が下賜された土地を奪う事。広い土地を牛の飼育に使うだけと言うのが気に入らなかったらしい。昔、「そんないい土地があるなら、人を住まわせろ」と噛みつかれた事がある。それを無視された事を恨んでの犯行だろうね。


「大臣を、そんなあっさりと……。ああ見えて、愛国心の強い御仁なんだが」

「けどまぁ、犯罪者には代わりないし、何もしなければ俺が舐められる。

 俺が周囲に舐められることなく、アレを黙らせてくれるなら任せるけど?」

「いいや。愚痴を言いたくなっただけだ。手出しはしない。伝えておくよ」


 俺が密猟者の件で話を振った相手は、この国の宰相。実質、国を動かしているトップだ。

 上には国王がいるけど、彼は実務能力に欠けているからね。宰相の方がトップである。


 で、宰相の部下である大臣を処分すると、俺は宣言しに来た。

 上司とはいえ、宰相本人に全ての責任を押し付けはしない。しかし部下の監督不足と言うことで後始末で苦労させる。宰相には、そこまでにしておく。

 宰相とは喧嘩しない程度に付き合いを持ち、上手くやっていく方が得だからね。





「まー、嫌な話はここまでにして。

 飲んで、憂さ晴らしでもしよう」

「では、ツマミを用意させよう。おい!」


 人間関係は、個人の情によって利益以外で繋がることを可能にする。

 そして感情論で人と付き合うのに、酒は有効なツールだ。日本じゃ「飲みニケーション」が廃れて久しいが、こっちではまだ現役。杯を交わせば、仲良くなれる奴は多い。


 俺は東洋の幻獣がプリントされたビールの缶を、段ボール箱一箱ぶん取り出す。

 すると宰相は嬉しそうに笑い、ツマミを持ってくるよう、執事に言いつけた。酒のツマミを用意するのは、だいたい執事の仕事である。


「「乾杯!」」


 仕事だけ、小難しい話ばかりの付き合いは、破綻しやすい。こうやって、繋いだ糸を緩めるような付き合いをしないとすぐに関係が切れる。

 俺たちは、箱を空にする勢いで、アルコールを摂取するのだった。





 そして翌朝、二日酔いに苦しむのである。

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