牛すき鍋・店のオーナー
週に2日のお休みの日は、日本でダラダラするのが土曜1日、異世界でちょっと働くのが日曜1日と決めている。
日曜も働いてはいるけど、接待を受けるのと、店で飯を食うだけ。ああ、日本の物資を渡すのも仕事だな。
そんな感じなので、 あくせく働いてはいない。気楽なものだ。
資金がやばくなった場合は勇者時代の資産を切り売りしても良いんだけど、今のところ、そんな事になってない。経営は順調だ。
「オーナー。こちらが御依頼の「特製牛すき鍋」です」
「ヨシ!」
こっちの世界にも鍋料理はある。
けど、醤油は無い。
砂糖だって雑味が強いし貴重品だ。
それに、肉をふんだんに使う料理は、意外と研究が進んでいない。
畜産がそこまで行われていないので、普段から食べる肉を用意するのは大変なのだ。一部の家畜には穀物を食わせるし何年も育てるから、その余裕のあまり無い異世界だと畜産で得られる肉は高級品確定なのだ。
それに、輸送の問題もある。飛竜便のような空輸、高速輸送はあるけど、ごく少数。鉄道だって無いから生産地と消費地を結ぶのは難しい。そうやって更に値段が上がる。
しかし、俺の場合は。
「オーナー。そういえば、牧場長から間引きをお願いしたいと言う話が出ています」
「来週は予定があったかな? うん、再来週に予定をいれておくよ」
「承りました」
必殺、放し飼い。
魔王討伐の報酬で得た広い土地に、牛を放し飼いにしているので、餌代はかけていない。
牧場は少々管理が大変だけど、牛の管理は楽である。牧場エリアに勝手に入り込むバカを処分するのが大変なだけだ。
間引きと言うのは、牛の話ではなく、密猟者の話。
ああいうバカは、大概が紐付き、黒幕がいる。牧場長が言っているのは、そんな黒幕を退治してくれと言う要望だ。
元勇者である俺の土地にちょっかいをかけるのは、それを下賜した王家へ喧嘩を売るようなもの。
証拠を揃えて、根回しをして。サクッと潰すとしますかね。