お仕事・顧客
俺の仕事は、顧客へのサービスである。
もっとも、大半は世間話しかしていない。
「そうなのよ~。もう、困っちゃって」
「ええ、ええ。大変ですよね」
お年寄りのところに、顔を出して回る。
そして世間話をして帰る。
こういった顔繋ぎは、意外と重要。
若い世代はこの手の対面を嫌うのでメールでのやり取りがメインだが、年配の方々は対面をした方が喜んでくれる。
こちらとしても、顧客の顔を直接見ることで分かることも多いので、顔繋ぎは重要だと思っている。
なんかね、この辺りは夫婦だけで生活していて、子供と別居している人もいるし。お金が自動振り込みだからと、支払いがしっかりしていても安心できない面もあるんだ。特に今は流行病が怖いからね。
いつまでも元気でいてください。
異世界で金持ちをしていても、日本で働き、一般的な生活をしているのには、訳がある。
まず、俺には異世界の物で日本円を稼ぐ気がない。
よくある「金を売って~~」はやりたくない。捌くルートも持っていない。金など貴金属を売るのは大変なんだ。
他の売り物も、高く売れそうなものは出所が怪しければあまり売れない。売れるのは、小遣い稼ぎレベルの手間に見合わないものばかり。
そこまでするなら、普通に働いた方がいいね。気分的に。
なんだかんだ言って、異世界の物を売るのはリスクが高いと思っている。
あと、そこまで日本円を稼ぎたいとも考えていない。
高級品が欲しければ向こうで買えば良いし、その方が質の良いものが手にはいる。高級品は金を出せば入手できるものじゃないのは日本も異世界も変わらない。
なら、すでに信用がある異世界で買うのが正解なのだ。
それに、なんと言っても日本でまで、あくせく働きたくないんだ。ほどほどの仕事で、ほどほどの給料を貰うだけの、普通の生活が良い。
向こうじゃ上の立場の人間だからね。日本で一般人をするのはストレス発散になるんだよ。
大して責任が無い、気楽な立場も金で買えない。むしろ、金があると面倒な話が増えてしまう。
俺は一軒家で気楽な独り暮らしの生活が楽しいんだよ。
持ち家だし、プライベートな空間を好きにいじり倒せる自由がある。
顧客とは顔馴染みになっているから、問題も少ない。
これぐらいが、俺にはちょうど良い。