俺の弁当・家宰
朝。
いつものように、異世界に行く。
俺のご飯は、だいたい異世界で用意させているからね。
「ご主人様、本日のお弁当です。そしてこちらがお夕飯です」
「うん。ありがとう」
異世界に魔法で移動すると、異世界側の自宅、自室に出る。
他のところだと、何があるかわからないからね。こっちの管理人にも、俺が出入りする辺りには入らないように注意してある。
で、自分の部屋を出て食堂に向かうと、用意されている朝御飯を食べ、昼飯と夕飯を受けとる。
夕飯は基本的に作りおき。1日に何度も異世界転移はできないので、一回の移動で2食分受けとるようにしている。
「ご主人様。そろそろ醤油の在庫が切れそうだと、店から連絡が」
「分かった。明日にでも用意するよ。ついでに塩も補充するね」
「分かりました。伝えておきます」
飯の管理は、雇った家宰がしている。
彼は秘書みたいに、俺の周辺に関わる一切を取り仕切る。
俺がこちらでやっている事業なども、基本的にはこの家宰任せである。
俺は日本では一軒家で独り暮らしの独身貴族サラリーマンだけど、異世界ではそこそこ良い家に住んで、いくつもの店のオーナーをしているお金持ち。
こちらでは元勇者の肩書きがあるため、金持ちムーブで実業家みたいなことをしているのだ。
こうして金持ちになって思うのは、お金って、有る奴のところに集まり易いってこと。
貧乏な時に頑張ってもたいして稼げず、金持ちの時にちょっと何かした方が儲かるってことだ。
日本ではサラリーマンだし、そこそこの生活しかできないけど、こっちでは金持ちとして色々できる。
昼飯に食べてるお高い御牛様も、異世界なら簡単に買えるのだ。そうやって高級品を常食できる。
ただ、調味料をはじめ、日本で手に入るものの方が高品質で安いものもあり、そういった品は日本で買って、こちらに回している。
日本で高級品を食べる機会が少ないので断言はできないけど、異世界の食材は日本のものより旨いものが多い。それを日本の調味料で料理すれば、まさに無敵。どちらが上とか言わず、両方の強みを活かして至高を目指すべきだろう。
俺が経営させている会員制の高級料理店は、いつでも人気。予約でいっぱいである。月に二万円ほど調味料代が必要になるけど、利益は凄まじいよ。
そこで作らせている料理が俺の弁当の試作みたいなものとは、みんなには秘密だけどね。