鉢合わせ
翌朝。
目が覚めたライアはごろん、とベッドで寝返りを打って。
あー……なんか起きるのに気が重いような……あれ? なんだっけ?
なんてぼんやり思いながら。
ふと、静かなはずの家の中で微かに物音がする気がして体が固まる。
あれ、一階に誰かいる?
誰か……うわ! そうだった! いるじゃない、中途半端に空気読まない白ウサギ!
がばっと起き上がり、急いで着替える。
洗面所兼浴室は二階にあるのでそのまま駆け込んで顔を洗って髪を梳かし直す。
下手にゆっくりやってると白ウサギ……いやもとい、レジナルドと鉢合わせる可能性があるんだということに気づいてしまったので超高速身支度だ。
で、下階に降りるのはちょっと慎重に。
……あの子、どんな格好で何やってるか読めないもんね。
思いっ切り眉間にシワを寄せて、つい昨夜のストリップを思い出してしまう。
で、居間を覗いたところで。
……あれ?
誰もいない。
なんならソファに使った後の毛布や寝間着がちゃんと畳んで置いてある。
で、音がするのは台所。
ライアが不審に思いつつも台所のドアを開けると。
「あ、おはよ」
爽やかな白っぽい男が人懐っこい笑みを向けている。
「……おはよ?」
何してるの、と言いかけたが見ればすぐわかる。
これは見るからに朝食の支度。
「ちょっと見たらだいたい分かったから作ってみたけど……食べられる?」
唖然としているライアの目の前でキラキラとした笑顔の男はフライパンで目玉焼きを作っている。目玉焼きの横には保存庫にあったはずの塩漬け肉のスライス。作業台の上には先に焼いておいたと思われるパンケーキ。
で、火にかけられたやかんはちょうど沸いたところのようだ。
「嘘……これ、全部作ったの?」
「うん……なるべく食材が沢山あるものだけ手をつけるようにしたけど……ダメだったかな……」
ちょっと決まり悪そうになってこちらを窺うレジナルドに。
「ああ、ううん。大丈夫よ。こういうの作れると思わなかったからびっくりしただけ。……ありがとう」
まじまじとパンケーキを見つめるライアが唖然としっぱなしで答える。
だってこれ、焼き加減とかいい感じなんだけど。普通初めて作ったらこうはいかない。これは作り慣れてる人の作品。
「そう? このくらいならできるよ。ていうか……本当にこれしかできないんだけど。昨日一緒に料理したのが楽しかったからつい……」
うわ。
決まり悪そうだった表情が和らいで照れたような笑顔になる様は……ちょっと見応えがある。なんなら窓から入る柔らかい光を背負って絵になるくらいだ。
「えーと、じゃあ……私は……」
「何か美味しいお茶淹れてもらえないかな?」
「ああ、はいはい」
目のやり場に困って視線を逸らしたライアにレジナルドのリクエストが入る。
もうこれは初めからそのつもりだったのだろう。作業台の上には昨日使って一旦片付けたティーポットとカップが出されている。
なのでライアはポットを温めるところから始めて……棚から瓶を取り出した。
緑茶をゆっくり焙じて作った茶葉が入っている瓶だ。開けた途端に香ばしい香りが広がる。
これなら食事の邪魔にはならないだろうし食後にも飲める。
朝から薬草茶ではなくてもいいと思う。
「何? いい匂いがする」
耳元で声がしてライアの肩越しに手元が覗き込まれた。
……っ!
近い! 近すぎるんだよ、白ウサギ!
心の中で叫び声を上げたライアが固まりながらそーっと横に小さく一歩退いて。
「え、と。焙じ茶。緑茶をさらに加熱すると甘みが増すの。ミルクで入れても美味しいけどね」
「へぇ、ミルク? それも飲みたいけど」
一歩避けたせいで出来た距離は顔を覗き込むのにちょうど良かったらしく薄茶色の瞳が好奇に輝いてライアの顔をまじまじと見つめてくる。
「っあー……じゃあ、先にそれを作るわね」
さらに一歩離れたライアはミルクの瓶に手を伸ばした。
パンケーキ作りに使ったのであろうそれは残りが後わずか。
とはいえミルクなんてそう日もちさせるものではないので朝のうちに使い切る方向で。多分、今日あたりお客さんの誰かが「今朝のミルク」と言って薬代の足しに持ってきてくれる。
卵やミルクは大体がそういう貰い物だったりする。
「……美味しい……」
朝食のパンケーキを食べる合間にレジナルドがカップに口をつけて何度目かの賛辞を呟く。
ライアはもう、苦笑してしまう。
そんなに珍しいか。いや、珍しいのだろう。緑茶に手を加える人はそういない。なんならライアはその日の気分で緑茶に乾燥させた果物や薬草を混ぜることもあるくらいなのだが。
そして自分が手がけたものが口に合った事をこんなに何度も告げる人も珍しいと思いながら……微笑ましいを通り越して苦笑になっている。
シズカだってこんなに何回も褒めることはない。……彼女の場合はストレートに言葉で表現するというより表情に出ているような気もするが。
「パンケーキも上手に出来てるわよ。よくこんな綺麗な焼き色にできたわね」
こんがり満遍なくキレイに焼けているパンケーキを一口、口に運びながらライアが答える。
こちらにはバターを乗せて蜂蜜がたっぷりかかっている。
「そう? 良かった。昔仲良くしていた使用人がよく作ってくれたんだけど、そばで見ていて覚えたんだ。最近は自分の朝食用に自分で作るからね。……初めて人の役に立ったな」
うっとりと目を細めて嬉しそうに呟くレジナルドだが……何となくその言葉から連想される情景にライアが「うん?」と引っかかった。
「……朝ごはん、一人で食べてるの?」
使用人がいる、と言う言葉といでたちからしてそこそこいい感じの屋敷にお住まいになってる人だろう。その環境で自分で作るって……どういう状況だ?
「ああ、食事はだいたい一人で食べるかな……」
「ええ? だいたい……って……他の食事も? ご家族は?」
ライアの想像力が底をついた。
使用人がいて、もう確実に富裕層。しかも家族がいて、なのに食事を独りでする? なんなら昨夜話していた不眠症っぽい発言なんかも相まって……ちょっと問題ありありな家庭を思い描いてしまうんですけど。
「……まぁ……なんか色々あるっていうかないっていうか」
気まずそうに答えるレジナルドの表情に既視感を覚え……ああ、昨日も何かの弾みで一瞬表情が凍りついたなこの人。なんて思い直したライアはそれ以上突っ込んで聞くのを思いとどまる。
うん。深入りされたくないことだってあるだろう。
……いや、そもそも私が深入りする必要も……無いんだよね。
差し障りない感じで「ふーん……」と相槌を打ったライアはレジナルドには帰りに昨夜の薬草茶も持たせよう、と決めた。
「そういえばさ、いつもはそういう格好してる?」
話題をすり替えるようにレジナルドがライアの方をまじまじと見つめながら尋ねてくる。
朝食を食べ終えて食器の類も台所に下げ、新しく今度は焙じ茶をストレートで淹れ直したところで。
「え? ああそうね」
ライアは彼の視線を反射的にたどって自分の服装を見下ろしながら答えた。
いつも通りの淡いブルーグレーのワンピースに白のエプロン。
そういえば昨日はちょっと上等な翡翠色のワンピースだった。台所作業の時はエプロンを着けていたが夕方からは少し肌寒くなるのでそれ以外はショールを羽織ったりして……結局普段着に着替える暇がなかった。
「……そっか……」
何かを考えるように視線を宙に浮かせたレジナルドに理由を尋ねようとした矢先。
トントトトン。
と、軽快なノックの音がした。
おや。
朝一のお客さんにしては時間が早いな、と思いながらライアが立ち上がる。
一応ドアに掛けている小さなプレートにはオープンとクローズの表示がある。出かける用事がある時や夜間はクローズになっていて、午前中はもう少し日が高くなってからオープンの方にひっくり返すのだが。
首を傾げながら玄関まで行ってドアを開けると。
「おう、おはようさん。昨日はどうだった? 夕方から雨だったから様子見に来れなくて……」
人の良さそうな長髪赤毛が満面の笑顔でそこにいた。
「オルフェ……」
まだいたの、という後半の言葉はかろうじて飲み込んで。……いや、世話になった人にそれは言っちゃいけない、ってくらい分かってる。つい条件反射のように出かかっただけだ。
「……しばらく滞在するって言っただろう」
飲み込んだはずの言葉を察したらしく、わざとらしく頬を膨らませるおっさんはもはや可愛くもなんともない。なんなら可愛いの王道を行く白ウサギを長時間観察した後なので見苦しいとしか言いようがないくらいだ。
「何も言ってないでしょう。……あの服、とても役に立ちました。ありがとう」
そういえば私って昨日はパーティーに行ってたんだっけ。
なんて後付けのように思い出しながらライアが自分の顔に笑顔を貼り付けた。
で、「そうか」と頷くオルフェを一瞥して。
「お茶、飲んでいきます?」
と、声をかける。
特に用事があるという風にも見えない。何しろ手ぶらだ。
クローズになっているプレートの意味も分かるだろう。
と、なるともうお茶をしにきたとしか考えられないので。
「ああ、そのつもりで来た」
にっと笑うオルフェを確認してライアがドアを大きく開き直す。
で。
満足げな笑みを浮かべて中に入ったオルフェが一瞬固まり、ライアがああそうかとテーブルの方に目をやる。
客がたまたま重なることは稀にある。
どちらも客、つまり薬を調合してもらうために来ている者同士だし、村の知った間柄だから「あら、来てたの」とか「おや、奇遇ですね」みたいな挨拶があって余程深刻な、人に知られたくない症状とかでなければその場で会話が始まるので変な空気になることはない。
なので、深く考えずにこの度も二番目の客を通したのだが。
今日の場合はちょっと事情が違うか。
と、改めて気がついた。
なんなら二人とも薬を買いに来た客ではないし、まだクローズの時間、言ってみればプライベートな時間だ。そして二人とも初対面。……つまり、なんかめんどくさい。
「……オルフェはあのお茶でいいですよね。ああ適当に自己紹介とかしといて」
ライアはめんどくさいという気持ちを前面に出しつつ、それだけ告げると有無を言わさず台所に引っ込んだ。
お茶の準備はもう自然に体が動く。
ので、なんとなく居間の方に注意を向けてしまう。
初めのうちは何かボソボソと話し声がしていたのだが……ついに無言になって静まり返った居間の様子にライアの方もいたたまれなくなってきた。
うわ。そうよね、あの二人初見で和気藹々とするとは思わなかったけど……それにしても結構な沈黙。オルフェなんか商売人なんだからもう少し場を盛り上げる的な努力をするかと思ったんだけど……そういう努力を一切合切放棄しているような気がするのは気のせいだろうか。
ライアはそんなことに思い当たった途端、こんなところで現実逃避している場合じゃない! とばかりに小さめのティーポットに一人分で作った白茶を用意してカップと共にトレイに乗せ、居間に戻った。
あんまり仲間に加わりたくない二人の構図。って感じの居間に足を踏み入れたライアの頬がひきつる。
ライアが座っていた席にオルフェが無遠慮に座ってこちらを向いている。頬杖をついて向かいに座っているレジナルドを不躾に眺めながら。
で、こちらに背を向けるような位置に座っているレジナルドは完全に体を横に向けてオルフェと視線を合わせることもなく先程の飲みかけのお茶を片手に……無表情だ。
やだ怖い。なんだこの凍りついたような部屋。
なんならいつも何かしらの空気感を醸し出す部屋の植物たちさえひっそりと、自分の存在感を消しにかかってる。
「はい、オルフェ」
トレイからカップを取り上げて彼の前に置きティーポットからお茶を注ぐと美しいオレンジ色が白いカップを満たしていく。
「ああ、どうも」
緑の瞳が細められて大事なものを扱うような手付きでカップが持ち上げられる。
一口、口に含む所作は……あれ、この人こんなに上品だったっけ、というほど丁寧だ。
「うん、美味いな。……あいかわらず」
なぜか最後の言葉を強調するように言ってから……にっと笑ってレジナルドの方に視線を向けた。
「……帰るよ」
視線を受けたレジナルドは小さくため息をつくと不機嫌そうに立ち上がった。
「え、あ……そう?」
ライアはその動きを目で追って……なるべく明るい声で答える。で、ああそうだ。と、台所の方に目をやり。
「ちょっと待って」
オルフェの分のお茶を淹れながら用意していた昨夜の薬草茶を取りに行く。
秒で戻ってきたライアの手には小さめの包み。
「これ、一回分ずつ包んであるから良かったら飲んで。あと、約束したハーブ、摘んであげるわ」
「ああ……昨夜の……」
包みからは昨夜飲んだ薬草茶の香りがほのかに広がっているので、手にしたところで中身の察しが付いたのだろう。反射的にそう言うとレジナルドは得意げに目を細めて、すいとその視線をテーブルの方に向ける。
……なんかめんどくさい。
咄嗟にそんな気がしたライアはオルフェの反応を窺うこともなくそのまま真っ直ぐ玄関に向かう。
裏庭のラベンダーをあげる約束だものね。
「……あいつ、よく来るの?」
「え?」
裏庭に回るに当たって先頭をいくライアの後ろから不機嫌そうな声が投げかけられたので、ちょっとだけ振り向くと。
……なんでだ。
声の通り、あからさまに不機嫌極まりないといった顔のレジナルド。
「よく来るってほどでもないと思うけど。年に一度は色々持ってきてくれるわね。何、自己紹介したんじゃないの?」
ライアが眉を顰める。
「……ただの行商人なんでしょ?」
不機嫌そうな様子を直視するのが面倒くさくなって前を向き直ったライアの背後から不機嫌そうな声のまま答えるレジナルドに。
「ああ、まぁ……そうね」
間違いではないな。と思うので肯定してみる。
年に一度やってくる行商人だ。確かに彼の父親の代からウチとしては付き合いがあって……その頃子供だった彼も一緒に来ていたから知らない間柄ではないが、幼馴染というほど親しくしたことはないし、そもそも一緒に遊んだ事だってない。
「ふん……やっぱりね……」
そんな、聞こえるか聞こえないかの呟きが彼の口から漏れ、そして。
「……うわ……」
小さく息を飲む気配と共にそんな声が聞こえて後ろからついてきたレジナルドが立ち止まった。
「え……?」
ちょうど家を回り込んで裏庭に出たところでライアが振り返る。
レジナルドはライアの少し距離をおいた後ろで目を見開いて固まっていた。
「……凄いね……ここ。全部薬草?」
ああそうか、と、ライアがちょっと得意げに笑みを浮かべた。
ちょうど家を回り込んだところで薬草の香りが一斉に香り立つ場所に出るのだ。そして、結構な種類と広さ。どの薬草も摘みやすく鑑賞しやすいように絶妙なバランスで植えてある。
「いいでしょ。ここにいると結構落ち着くのよ?」
そう言ってライアが笑うとレジナルドの不機嫌もどこかに吹っ飛んだようで、物珍しそうにキョロキョロしながら歩き出した、ので。
「ああ、その奥は行っちゃダメよ。触るだけで危ない種類の薬草もあるんだから」
「え、何それ。毒……ってこと? 薬草って薬でしょ?」
踏み出した足をそのままに、くるんとライアの方を振り向いたレジナルドは目を丸くしている。
そんな彼の反応がおかしくてライアはくすくすと笑いながら。
「薬にもいろいろなのよ。毒と薬は紙一重なところもあるしね」
そう言いながら近くに咲いている紫の花を手折って小さな花束を作る。
「いつも素敵な香りをありがとうね」と小さく囁いて花に軽くキスをするのはもう習慣のようなもの。
少し離れているレジナルドには聞こえていないだろうし見えていないくらいのささやかな仕草。
そうやって作られたブーケを差し出すとレジナルドはそれを受け取って香りをゆっくり吸い込み笑顔になった。
「……良い匂いだ」
先ほどまでの不機嫌はどこへやら、のキラキラ笑顔になって上機嫌そうだ。
機嫌が回復したレジナルドをそのまま送り出したライアが家に入ると。
長髪赤毛がティーカップを片手にこちらに視線をチラリと送ってよこし。
「……あいつよくここに来るのか?」
すごく聞き覚えのあるセリフに。
「……あなたたち、本当はすごく仲良しなの?」
ライアがすかさず半眼になった。
「なんでそうなる」
青みがかった緑の瞳が眇められる。
「いや別に……」
テーブルの上に残った焙じ茶の方のティーセットを片付けるべく、トレイにカップとティーポットを移しているとそれを目で追っていたオルフェが。
「男を朝帰りさせるような娘に育てた覚えはないんだけどなぁ……」
とわざとらしく呟くので。
「私もあなたに育てられた覚えはありませんが」
と答えて作業を続ける。
……はぁ。なんだか最近やけに人との距離が近い気がしてならない。
聴覚が戻っている期間だからまだいいけど、普段ならこんなふうに誰かとぽんぽんやり合ったりなんかできない。
警戒もしているからこんなに距離を詰めて来られることもない。
……レジナルドにしてもオルフェにしても毎日のように付き合わなきゃいけない相手ではなく、短期間限定の付き合いだと割り切れるからまだいいのかもしれないが。
そもそもレジナルドは町の方に帰って行ったわけだからそうそう会うこともないだろう。オルフェにしたって通常なら年に一度の付き合いだ。今回だけたまたま満月期に重なったからやりとりが重なっただけだろう。次回こちらに来るときにはまた今まで通りの感じに戻るという自信がある。
どちらにしても私の聴覚が戻っているのももうあと数日だ。
「なんだ、ライアはもう茶は飲まないのか」
一通り片付け終わって居間に戻ってくるとオルフェが意外そうに声を上げた。
「もうお腹一杯だからいいの」
そう言うと向かいの席、先ほどまでレジナルドが座っていた場所に腰を下ろして。
で?
と言わんばかりに改めて視線をオルフェに向ける。
お茶を飲むためだけにわざわざそう親しいわけでもない自分を訪ねてくるとも思えなかった。
……昨日のことを聞きに来たのだろうか。
とも思えるが……こちらから積極的に話したい事もない。とはいえ、服を都合してもらったという負い目もあるので邪険にもできず……すごく微妙だ。
「あー……またしばらく茶飲みにここに通おうかと思って、だな」
横を向きながらオルフェが頬のあたりを指でかく。
「……え?」
意味が分からなくてライアが少し考えてから聞き返した。
「……いや、出立が遅れそうなんだ。昨日の雨で東の森の橋が落ちたらしい」
「え……橋が?」
そういえば昨夜は遅くまで雨音がしていた。なんなら明け方までけっこうな降り方だったような気がする。
「ああ。いつもならこのまま東の森を抜ける道を通って東の都市に行くんだけどな。森の中を通り抜けるのに使っている橋、もうだいぶ前から古くなってて危ないなーと思っていたんだけど……昨夜遅くに流されたらしいんだ」
「そ、そう……」
うーん……もういなくなる人だと思うから愛想良くできていたのにと思うと少々複雑だ。
「……もう少し嬉しそうにしたらいいのに」
「……なんのために?」
「やっぱりお前、面白いやつだったんだな……」
微妙に噛み合わない会話に発展しながらライアが遠い目をした。