この罪はずっと続くのか
「ねえ、もう直ぐ、君を壊しにいくんだよ」
水無は、幼い少女が眠る部屋で、眠り姫をじっと見つめていた。
ガラスケースに手をついて、指で彼女の輪郭をなぞっていく。
「ごめんね、せっかく君が一生懸命考えて、創ってくれたのに……君をこんな目にあわせて、君は僕を……僕を許してくれるだろうか」
消えそうな声で呟く。
「少し、髪が伸びたみたいだ……早く、大人になった君に会いたいな」
ガラスに顔を近づけていって、左の頬をつける。
頬に感じるひやりとした感触。生と死の狭間。
水無は環の横で過ごした日々を振り返った。
環の顔を見つめながらあまおうのプリンを食べる時。
たくさんの資料を抱えながら、環の側でうつうつとまどろむ時。
対照的なほどの、環の死と自分の生。
(そうだよ、君は死んでるも同然なんだ。愚かな僕は、こうして生き延びているというのに。君は僕が殺したようなものだ。君はそんなこと、ちっとも望んでいないのにな)
涙が頬をつたって、次々と零れ落ちていく。
「すまない、環。すまない、すまない……こんなことになってしまって、君の人生は……」
唇を噛む。痛みで痺れ、そのうちにじわりと血の味がしてくる。
「狂ってしまった……僕のせいだ。僕のせいで、」
さらに涙が落ち、その雫はじわりじわりとガラスの上で広がり、水無が見つめる環の寝顔をぐにゃりと歪めた。
(こうやって頬をつけると、君も冷たいと感じるのだろうか)
冷えた頬をようやく離す。
(生きたいと思うのだろうか……)
「環、」
大切そうに呟くと、涙はそのままガラスを伝っていき、そして床へとぽとんと落ちた。