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首なしナイト  作者: 渋柿塔
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デュラハン討伐─1

 シュヴァル王国、王都ケルコス。

 そこは、史上初の魔法建築を生み出した国だ。主に木材の運搬、加工である。魔法を使っているからこそ、木材を加工する際に芸術的な形に変形させることもできる。なので、王都ケルコスでは、複雑に建てられた芸術建築が多く見られる。そのため、筋骨隆々な男たちがせっせと汗を流しながら建築することはなく、魔法を使える者であれば、少し勉強することによって建築を許されている。現場には男女も体つきも関係ないのだ。

 その技術で建てられた冒険者ユニオンがあった。

 そこの二階にある相談室。

 ここでは、依頼主が依頼したい内容を密かに交渉する場であり、冒険者たちが依頼をする中で起きた予想外な出来事を報告する場でもある。

 そんな相談室のとある一室。4人の冒険者の内、フリックという男が向かいのソファに座る2人の冒険者ユニオンの役人に迫っていた。


「俺は見たんだって。錆びてボロボロな剣で大蛇を一刀両断するところを!」


 役人である2人の男は互いに顔を見合わせたあと、再びフリックに向き苦い表情を浮かべた。

 絶対に信じてない。そりゃそうか、デュラハンがあの森で発見されたなんて一度も聞かない。でも、見たのは事実なんだ。


「調査団を募ってくれよ。それもイエローサルタン以上の冒険者じゃないと危険だ」


 冒険者には位があり、上から、ストック、サウギキョウ、アメジストセージ、カタバミ、イエローサルタン、カリブラコア、エニシダと7つあり、冒険者を始めたばかりの初心者に与えられる位はエニシダ。その逆で選ばれし中の選ばれし存在。今現在では5人しかいないとされる最強の位、それがストック。


「イエローサルタン以上ですか……お話を聞く限り、カタバミの冒険者では荷が重いでしょうね」

「ええ、恐らく、アメジストセージかサウギキョウになるかと」

「だったらそれで」

「ですが、むやみやたらに調査団を募ることはできません」


 役人の淡々とした物言いに、フリックは苛立っていた。それは彼だけではなく、エルフの女エレノもドワーフの男タルメもそうだ。ただ、ヒューマンの少年シスは、相談室に流れる険悪な空気に、額に冷汗を滲ませていた。


「国に打診してはもらえないのだろうか」


 タルメがそう言った。蓄えられた顎鬚が、口を動かす度にふさふさと揺れる。


「……わかりました。一応、打診してみます」


 役人の1人がそう言ったことで、流れていた嫌な空気が消え去った。


「ですが、通るかどうかは保証できません。そこはご了承ください」


 念を押すように、もう1人の役人がフリックに対しそう言った。


△△△


 それから3日が経った昼。

 冒険者ユニオンに併設された酒場にて、フリックたちは昼食を摂っていた。

 周囲には、一仕事を終えた冒険者やこれから仕事をしに行く冒険者たちで溢れかえっていた。

 テーブルの上に並べられた色とりどりのサラダ、分厚いステーキ、そして飲み物。それらを口の中に頬張りながら、


「調査団はどれくらい集まった?」


 とフリックは言った。


「汚い。飲み込んでから喋ってよ」


 エレノのフリックを見る目は軽蔑していると言っても過言ではない。なにせ彼女は綺麗好きな性格なのでそれは仕方ないこと。

 フリックは、咀嚼速度を上げて喉を鳴らして飲み込んだ。

 そしてもう一度同じことを言った。


「さあ、それは知らないわ。でも、まさか通るなんてね。あれだけ嫌な顔をされてたのに意外だわ」

「確かにな。大蛇を一刀両断したってのが決め手とか」

「それは知らないわ」


 エレノは、色とりどりのサラダを小さな口でちびちびと食べていた。

 その脇で、シスがシチューを啜っている。


「調査団は集まるんでしょうか。アメジストセージ以上の冒険者限定ですし」とシス。


 フォッグ大森林に潜むデュラハンの調査。報酬として金貨20枚。条件はアメジストセージ以上の冒険者。


「金貨20枚だぜ。調査するだけで破格の報酬が貰える。そりゃあ集まるだろう」


 もぐもぐと咀嚼しながらフリックが答えると、エレノがそれを睨んだ。


「わりぃ。気をつけるよ」


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