拾った手紙と片思いの話
見舞い客が帰った夕方、病院の廊下のごみ箱の横で捨て損なったような手紙を拾った。
宛名のない手紙で、悪いとは思ったが中に宛名があるのではと思い封を切る。宛名はなかったけれど、手紙の文字をみて誰が書いたものかすぐにわかった。
辺りを警戒しながらも、つい懐にそれを忍ばせて何事も無かったように病室へ戻り枕の下へ隠す。
そのまま夕食を食べて検診をうけ、見回りの人が病室の前を通り過ぎるのを息を殺して待った。
拾った手紙を、消灯時間がすぎてしんと静まりかえる頃に月明かりを頼りに読んだ。
知らぬ間に涙が溢れた。
あいつが親友の俺をどれだけ大事におもってくれているのかがよくわかった。同時に、この気持ちはどこまでいってもあいつには届かないということも。
自分でも、なんでこんなに好きなのかよく分からない。とても格好良いとかとびきり可愛いとか救ってもらったとか特別な出来事なんかは全くない。
他の誰かを好きになろうと、忘れようとすれば出来そうなのになぜかできない。そうしようとする度に、はじめて見た少年の自分にすら向けられていない、横から見た笑顔が頭をよぎるのだ。
あいつにはもうその面影もあんまりないのになんでこんなにも胸がくるしいのか本当に分からない。
考えれば考えるほど非情に、愛しさは増すばかりで涙となって目から溢れる。誰にも知られまいと静かに溢れるそれを拭い続け、手紙にまた封をする。そして今度は拾われないようにきちんと廊下のごみ箱へ捨てた。
病室に戻りまた横になりながら、東雲の仄かな光が部屋を包んでいるのに気づく。
夜通し泣いたせいで両瞼が少し赤く腫れ、ひりひりとする目元に指先でそっと触れる。
毎朝、あいつがまた来ないかと考えていたけれど、今日だけは来ないことを願いながら。
読んでいただきありがとうございます。
「報われない片想いの話」シリーズの入院中の話ですが、この手紙はどこかで出てきたんだろうかと思われたかも知れません。他の話には出てきてないです。執筆中です。
手紙を書いた話から拾う話の流れで投稿する予定でしたが、時間がかかりそうなので先に投稿しました。
宜しければ、シリーズの他の話にも目を通していただければと思います。そして、一言でも酷評でもなんでもいいので感想、評価等頂けたらと思います。
お時間いただきありがとうございました。