マーチ2
りさは夜中部屋の中でギターを弾きながらオリジナル曲を考えている。
時計を見ると深夜一時を示していた。
「あー思いつかない」
両手を広げイスの背もたれに勢いよくもたれ掛かりお手上げモードだった。
ふと今日梓の涙を思い出した。
原因は梓の妹が悩みもだえているからだ。
そこでりさはひらめいた。
「よしテーマは涙に関することにしよう」
人知れず呟きノートを取りだして書き込むりさ。
気がつくと机に頭を伏せて眠っていたようだ。しかももう朝だ。
ノートを見ると夜遅くまで賢明に書いた歌の詩が書き記されていた。
それを目に通すと、
悲しみの涙は大切な人に対しての心のメッセージ。
あなたに伝わらないけど、信じている。
あなたは私が見る夜空の星に包まれている。
たとえどんなに離れていても私たちはつながっている。
この詩は数時間かけて書いた詩だ。
昨日、妹を心配する梓を見て考えたことだった。
改めてみると良いのか悪いのか微妙だと思うりさ。
居間に行くと愛梨が朝ご飯の支度をしてりさを待っていたようだ。
「おはようりっちゃん」
いつもの愛梨のりさに対してのはにかみスマイルだ。
「おはよう」
愛梨につれられ笑顔になるりさであった。
テーブルの上には朝ご飯が用意されていた。
メニューを見ると。
白いご飯に納豆とお味噌汁だった。
「ゴメンねりっちゃん。今日は材料がないから有り合わせのものしか用意できなかったの」
「良いよ。私は納豆好きだから」
「じゃあ食事したら愛梨ちゃんは仕事だから、また英明塾で夕方会おうね」
「うん」
りさは納豆に醤油をかけ箸で混ぜながら何となく愛梨に聞いてみる。
「愛梨お姉ちゃんの宝物って何?」
「りっちゃん」
にっこりと即答する愛梨であった。
それは嘘偽りのない言葉だと悟り、涙を流してしまうりさ。
「どうしたのりっちゃん」
りさの向かいに座っている愛梨が身を乗り出して心配そうに言う。
「うん。嬉しいの」
「何が?」
「愛梨お姉ちゃんに愛されて」
「愛梨ちゃんはりっちゃんを愛しています。愛梨ちゃんはたとえりっちゃんに嫌われていても愛梨ちゃんは愛しています」
「ゴメンね愛梨お姉ちゃんにはひどいことをしたよね」
ここでりさは過去に愛梨をないがしろにした自分が許せなくなった。
「何度でも言います。愛梨ちゃんはりっちゃんに嫌われても愛しています」
愛梨はどこで身につけたのか梓のような人を癒すような穏やかな笑顔でりさを見つめる。
ここでりさは決心する。
愛梨をバカにする奴がいたらすかさずにぶっ殺してやると。
愛梨がりさを愛するようにりさも愛梨を愛した瞬間だった。
それは何気ない朝の会話から始まったものだった。
人間生きていれば必ず良いことがあると誰かは言っていたが満更嘘ではないようだ。
『あなたが私を愛してくれるように私もあなたを愛してしまった。
あなたが私の為に生きているのだと言うように私もあなたのために生きたい。
ああ、涙が止まらない。
愛する喜びと愛される喜びに感極まって』
今日も英明塾に行ってパソコン室のドアを開き、
「おはよう」
と気分良く元気に挨拶すると、
「おはよう」
豊川先生は言った。
「あれ、姉さんは?」
「うん。今日はちょっと事情があって休んでいるよ」
「事情って何なんですか?」
「うん。僕にも教えてくれなかった」
「そうですか」
と廊下に立ち尽くして、昨日の梓の様子を思い返していた。
妹のことで何かあったのか?
分からないけど、りさは梓の携帯にかけた。
「あっもしもし姉さん」
『あありさか』
梓の声とともに雑音が鳴り響いている。
「どうしたの今日英明休んじゃって」
『大変なことが起こったんだよ』
「どうしたの?妹さんのことで何かあったの?」
『そうだよ』
と乱暴な口調でりさに罵る梓。
「妹さんがどうしたの?とにかく姉さん落ち着いて」
真摯にそう訴えかけるりさ。
『落ち着いていられるわけないでしょ』
今にも大泣きしそうな声で言う梓。そこでりさは、
「落ち着いてよ姉さん」
受話器の向こうの梓に大声で言いかける。続けて、
「今どこにいるの?」
『上野駅よ。あの子宛もなく北海道で一人でひっそりと暮らそうとしているの。日記に書いてあったし母さんも朝起きたらいないって言うし、新潟のフリースクールにも来ていないって言っているし、とにかく手がかりは北海道なの。だから私は今すぐに探しに行かないと』
「私も協力するよ。私も上野駅に行く。だからそこで少し待っていてよ」
『あんたに何が出来るって言うの?』
「こういう時こそ落ち着かないでどうするの姉さん。それに姉さんは私の姉さんだもん。姉さんには数え切れないほど借りがあるから返させてよ」
『分かったダッシュで上野駅まで来て』
通話を切りダッシュで外に出て原付に跨った。
向かい風を切り上野に繋がる国道を車をかき分け全速力で原付を走らせる。
(待っててね姉さん。今度は私が姉さんを助ける番だよ)
心の中で呟て、
「行っけー」
と叫んだ。
上野駅のロータリーに到着して梓がりさに目がつき、
「りさこっちだ」
りさに向かって手を振る梓。
「姉さん」
梓のもとへと走るりさ。
梓はりさの手を取り走り出した。
「どうしたんだよ姉さん」
走りながら梓に言いかける。
「とにかく一刻の猶予もない。話は電車の中で言うからとにかく北へ」
梓に手を取られながらりさは梓の後に続く。
二人は人でごった返す通勤中のサラリーマンや通学中の学生らをかき分けながら、北に続く列車に乗り込んだ。
中はがらがらで二人は座席に座る。そこでりさが、
「姉さん。とにかく落ち着こうよ」
「落ち着いていられる分けないでしょ。あの子にもしもの事があったら私は生きていけないよ」
ずっとこらえていたのか涙が勢いよく頬をつたう。
「・・・」
梓に何て言ったらいいのか分からずに黙り込むりさ。
「ほら」
りさに差し出してきたのが梓の妹の日記の内容だった。
りさは黙って受け取って読んでみた。
『私がいるだけで大切な友達たちを傷つけてしまった。
私はもうこの町にはいられない。北海道に向かって誰にも関わらないでひっそりと暮らそう。
母さんや姉さんに心配かけてしまうかもしれないが、その心配も時がたつごとに薄れていき、私のことを忘れるだろう。
さよなら姉さん。さよなら母さん。さよなら純さん。さよならマリリン。さよなら榊。
あなたたちの幸せを願わない日はない』
りさがこの日記の内容をまとめてみると、とにかく自分のしたことに責め続けていたあげく、このようなことになってしまったのだろう。
『だからこれ以上泣かないで、自分を傷つけることはかけがえのない人たちを傷つけることと一緒。
あなたは間違っている。人間は一人では生きていけない。
見えない糸で繋がった絆を引き裂くなんて死を意味すること。
だからかけがえのない私の胸に飛び込んでおいで、私はあなたのゆりかごになろう』
りさが梓を見つめると頭を伏せ手を絡ませ妹の無事を祈っているみたいに思えた。
気持ちは分かる。もしりさが大切な人が闇の中に消えていくところを想像すると無性に悲しくなってしまう。
そう梓の妹は今まさに闇の中に消えようとしているのだ。だから心許ない梓が無事を祈っているのだ。
でも探すっていってもただ北海道に行くだけ何ていくら何でも無謀なんじゃないかと思うりさは、
「姉さん。北海道は広いよ。ただ北海道に行くだけ何てちょっと無謀なんじゃない」
「確かにそうだね」
少し落ち着いたのか平静になった梓。
「姉さんの妹は何か北海道に思いででもあるの?」
「あの子はねえ新潟のフリースクールで鈍行で北海道に行ったのよ。そこで出会ったのがマリリンちゃんって言う友達だったの。途中駅の仙台で自由時間の時一緒に駅前でギターを弾いたって書いてあった」
そこで梓が顔を上げて、
「そうだ。あの子はきっと仙台に行く。りさとにかく仙台だ」
と閃く。
「姉さんがそういうなら私も妹さんを探すのに最後までつき合うよ。仙台でも北海道でも地球の裏側でもどこでも行ってあげるよ」
意気揚々に言うりさ。
少しの希望が見えてきて梓の涙は乾いたようだ。
北へと向かう列車を降り梓とりさは新幹線に乗り換えた。
「姉さん。私妹さんの顔知らないんだけど」
「そうだね探すのに顔を知らないとダメだね」
と言いながら財布をとりだして中にある写真をりさに見せた。
梓と妹とピースサインをして仲むつまじそうににっこりと笑った姿が映し出されている。
写真の背景は学校の卒業式だ。
妹を見てみると梓とはかなり似ているが格好的にインパクトのある姿だ。
セーラー服に今時三つ編みの女の子。
まるで大正時代の女子学生って感じで梓の言うとおり純粋そうな人だと思うりさであった。
そろそろ仙台に到着する。
梓は真剣な顔して流れる雪で真っ白な景色を眺めている。
時計を見ると十二時十分を示している。
りさは鞄から姉の愛梨に作ってもらったおにぎりを取り出した。
「姉さん。朝から妹さんのことでいっぱいで朝から何も食べていないんじゃない」
心配しながら四つのうちのおにぎりを二つ渡した。
「ありがとりさ」
二人はおにぎりを租借する。
新幹線はすさまじいスピードで走り続ける。
仙台に近づくにつれて梓は何やらそわそわしている。そんな梓にりさは、
「姉さん。とにかく落ち着こうよ」
「落ち着いていられる分けないじゃない。もし仙台にいなかったらどうしよう」
不安になり再び頭を伏せる梓。
「大丈夫。もしいなくても次の手がかりを探して一緒に私もさがしてあげるから」
「ありがと、りさ。あんたは私にとってかけがえのない私の妹だよ」
そして仙台に到着して二人は飛び出すように新幹線を降りた。
仙台の駅はさすが東北地方最大の町だけあってとてつもなく広い。
「じゃあ姉さん私は東側のロータリーを探すから姉さんは西側のロータリーを探してよ」
梓は首を縦に振り了解と言わんばかりに承知した。
駅を出て東のロータリーを出ると東京とあまり変わらないほどの発展した町だ。
人がごった返していてどこから探して良いのか分からない。
するとどこからともなくギターのメロディーにのせて歌が聞こえてくる。
どこかで聞いたような歌だ。
その発信源に目を向けると三つ編みに梓と似たかわいらしい顔の人が歌っている。
間違いない梓の妹だ。
その妹に間違いがないと思われる人のところに恐る恐る近づいて、
「何歌っているの?」
とりさがにっこり笑って聞いてみた。
「お、お、尾崎豊さんのシェリーですけど」
声をかけられて動揺しているようだ。
「どこかで聞いたような曲だからついあなたの歌う曲に引かれちゃった」
「あ、あ、あなたは誰ですか?」
「通りすがりの春には大学生の橘りさです」
「わ、わ、私は柴田盟です。新潟からきました」
相変わらずに動揺している梓の妹の盟。
「こんなところまで何をしに来たんですか?」
「・・・」
悩ましげに黙り込んでしまう盟。
「何か思い悩んでいるようですね」
りさは事情は梓から聞いていたとおり知っているけど、ここはあえて知らないふりをしてバカなまねはしないようにと言い聞かせることを決意した。
盟は俯いて黙り込んだままだ。
「盟さんでしたっけ、私でよければ話は聞きますよ」
すると盟はギターをギターケースにしまい込み立ち上がりりさから逃げるようにその場を離れようとしたところ、
「ちょっと待ってくださいよ盟さん」
盟の手を取り引き留めるりさ。すると盟はりさの手をふりほどいて、
「何ですかあなたはちょっと失礼なんじゃないんですか」
「失礼なことはお詫びしますけど、マリリンと榊さんでしたっけ・・・」
「!」
りさのセリフに目を丸くして驚愕の表情になる盟。続けて盟は、
「どうして初めてあったのに私の友達の名前を知っているの?」
(しまった。ついしゃべっちゃった)
両手で口元を押さえるりさ。
こうなったら仕方がない。
りさは盟の両手を掴んで、
「私はあなたのお姉さんと一緒にここまで来たの」
「お姉さんって梓お姉ちゃんのこと」
「そう。あなたの友達を傷つけてしまったショックで故郷を離れて一人で暮らそうとするあなたのバカげた行為をやめさせるためにね」
「離してよ。私はもう梓お姉ちゃんに面倒なんかかけたくない」
りさの掴む手をふりほどこうともがく盟。
「悪いけどこの手は死んでも離さない。私は梓姉さんに借りがあるから」
すると盟はりさに蹴りをいれりさは後ろにつんのめった。
「悪いけど私はもう誰にも迷惑をかけたくないの。だから行かせて」
と言い残して鞄とギターケースを背負って仙台の駅に向かって走り出す盟。
すかさず雑踏をかき分け追いかけるりさ。
「待ってよ盟さん。とにかく話し合おうよ」
「・・・」
逃げるのに夢中の盟。
駅の中に入って盟の足が止まった。
りさは何事かと思って盟の視線を追ってその先を見ると今まで見たこともない怒りのオーラをまとった正真正銘の梓だった。
「梓お姉ちゃん」
ふるふると怯えるように動揺する盟。
盟は後ろを振り向くとりさ、前方を見ると梓。挟み撃ちだ。
「どうして私の居場所が分かったの?」
「そんなことはどうでも良いでしょ」
鬼のような形相で盟に近づき、
「何やってんのよ」
思い切り盟にピンタをする。
倒れ込む盟。
「何で私の居場所が分かったの?」
「私はあんたのことなら何でも知っているのよ」
ハッキングしたことをごまかす梓。
「私はもう梓お姉ちゃんに迷惑はかけたくない。私が存在しているだけでいろいろな人に迷惑をかけちゃったんだもん。私なんかいなくなっちゃえばいいのよ。それで梓お姉ちゃんも私のことを忘れてしまえばいいのよ」
人目もはばからず嗚咽を漏らしながら盟は言う。
「私は盟がいて迷惑だなんて思ったことないよ。盟は私の大事な宝物だから。仮にもし盟がいなくなったら私それこそ悲しいよ」
梓も人目をはばからずに嗚咽を漏らす。
駅を行き交う人々が二人の嗚咽に足を止めて何事かと視線を向けている。
『あなたの心が悲しみに満ちたとき私をいつでも呼んで。
遠い空を超えて閃光よりも早くあなたのもとに行こう』
ひとまず梓と盟をりさが落ち着かせて仙台の喫茶店に入った。
そこは木工で作られた建物で壁にはラッセンの絵が飾られていてとてもお洒落な喫茶店だ。
コーヒーのほのかな香りが漂い落ち着いてしまう。
今の二人にはうってつけの場所だとりさは密かに思う。
まだ二人は涙が乾ききっていない。
そこで梓が涙を拭いながら、
「悪いなりさ。あんたにみっともないところを見せちゃったね」
「気にしなくても良いよ。姉さんには数え切れないほどの借りがあるからね」
「改めて紹介する。この子私の妹の盟」
涙目スマイルで梓が言う。この件が終えて落ち着いていつもの優しい梓に戻りつつあった。
「・・・」
妹の盟はまだ涙が乾ききっていないのでまともにしゃべれない状態だ。
「ほらいつまで泣いているんだ。泣いたって仕方がないだろ」
ハンカチを盟に差し出す梓。
「本当はすごく怖かったの」
涙声で盟は言った。続けて、
「遠くに行けば行くほど、これから一人になるのかと思って目の前が真っ暗になっちゃったの。でも私は親友の二人にあんな目にあわせちゃったから、今さら帰れないよ。純さんにも合わす顔がない」
「盟は間違ってないよ。だって人間は一人では生きていけないのよ。きっと心のどこかでかけがえのない人たちに助けを求めていたに違いない。だからピンチになった盟に私や初めてあったりさがいるのよ。それにあんたの友達はちょっとつまづいているだけだよ。また時がたてばまた笑顔で会えるよ。それはお姉ちゃんが保証する」
さっきまで狼狽えていた梓に対してりさは調子のいいことを言うと心の中で密かに笑っていた。
「でも戻ってこなかったら、どうしよう。そうしたら私は・・・」
せっかく乾いてきた涙が俯いてこぼれそうになる盟。
「大丈夫」
横から盟を胸に抱き寄せてなだめる梓。
「でも」
「大丈夫」
「私帰るのが怖い」
「大丈夫」
梓は盟を安心させるように包み込み、しばしそんなやりとりが繰り返された。
そんな光景を見てりさにも知的障害者の姉の愛梨にあんな風に慰められたことが幼い頃に何度かあったことを思い出してもらい泣き。
思えば英明塾に入ってからいろいろな喜びの涙やら悲しみの涙、それに憤りの涙やらそれ以外にもいろいろな不思議な感情がわき起こるようなことが何度かあった。
一年前の自分と今の自分を重ねてみるとだいぶ違うことが分かる。
それは単純に麻美やら恵、それにみゆきに里中に姉と慕う梓、そのほかにも数え切れないほどの出会いがあったからこそ、こんなにも成長した自分がいるのだ。それに今日初めてあった盟。この子からも教え教わることがあるんじゃないかと内心わくわくしている。
『悲しいとき大切な人の事を思うと私は私でいられる。ならば私はあなたのために生きたい』
「さっきからあんた何かいているの?」
梓がりさに尋ねる。
「いや、私たちがやっているガールズビーアンビシャスのオリジナルの曲の歌詞づくりだよ」
「そんなこと頼まれていたの?どうして私の話してくれなかったのよ」
「話したけど、そのとき姉さんは盟さんのことでいっぱいだったじゃない」
呆れて嘆息するりさ。
「そうだったけ」
舌を出しておどけてごまかす梓。
そんな二人のやりとりを見て盟が笑い出す。りさはそれを見逃さずに、
「あっ盟さんが笑った」
大げさに盟の方に指さして言った。
盟は小さなつぼみから開花した綺麗な花のような笑顔であった。
「私が笑っちゃおかしいですか?」
りさに注目されて困惑する盟。
「いいや、全然おかしくないよ。むしろ笑っていた方が盟さんはかわいいですよ」
何てりさに言われて顔を真っ赤にして照れている盟。
「それじゃあそろそろ帰りますか。盟の気持ちも落ち着いてきたようだし」
梓が立ち上がり二人の妹に活気よく言いかける。
「そうだね」
とりさが盟の顔を見ると怪訝な顔をしているので、
「盟さん。大丈夫ですよ。とにかくみんな心配しているから帰りましょうよ」
「りさの言うとおりだ。私もついていくから新潟に帰ろうよ」
「梓お姉ちゃんは東京のフリースクールがあるし大学だってあるじゃない。これ以上梓お姉ちゃんに迷惑はかけられないよ」
「何度でも言うよ私は迷惑だなんて微塵も思ってないよ」
そこでりさは、
「じゃあいっそのこと盟さんも東京に行くのはどう?」
「そんなあ、そんなことをしたらりささんにまで迷惑をかけちゃうじゃないですか」
「私も姉さんと同じように迷惑だなんて微塵も思っていませんよ」
「でも」
そこで梓が、
「そうだよ帰りたくないなら、しばらく心の整理がつくまで東京にいればいいよ」
「・・・」
口をつぐんで黙り込んでしまう盟。
「行こうよ」「さあ盟さん」
二人は笑顔で盟に言い聞かせる。
すると盟はにこりと笑って了承した。
りさはやっぱりどんな人でも笑顔が似合うもんだと思った。
『道に迷い明日を見失うのなら、かけがえのない人のために生きればきっと答えは見つかるはず』




