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オクトーバー

 秋葉原。ここは電気街として有名な町であったが今やアニメやゲームで町はごった返している。

 そんな町を雑踏の中りさと愛梨は歩いている。

「愛梨お姉ちゃん。ナナのフィギアを探すんじゃなかったの?」

 雑踏の中歩き疲れているりさが言う。

「そんなのはいいの。愛梨ちゃんはりっちゃんとお買い物がしたかったから」

 アキバ系の愛梨はそう言う。

「だったら用件をすまして早く帰ろうよ。私疲れちゃったよ」

「分かった。じゃあアニメイトを物色したら喫茶店でお茶しよう」

 早速愛梨とりさはアニメイトに入ってアニメ雑誌やキャラクターフィギアやキャラクターグッツなどを物色する。

その間階段などを上り下りしてりさは体力の限界だ。外に出てりさはガードレールに腰を下ろしてへとへとであった。

「愛梨お姉ちゃんもう帰ろうよ」

「りっちゃん。約束覚えているよね。今日はりっちゃんは愛梨ちゃんの思うままにして良いって」

 りさに胡乱な瞳を投げかけ愛梨が言う。

「分かっているよ」

 嘆息混じりにりさ言う。

 りさは今日一日愛梨の買い物につき合うことになったのかは、それは三日前にさかのぼる。


 りさは愛梨の部屋のドアをノックする。

「愛梨お姉ちゃん。ナナのDVD借りてきたよ」

 ドアが開き愛梨が出てきて「ありがとりっちゃん。もしよかったらりっちゃんも一緒にナナを見ようよ」

 アニメには興味はあまりないりさはどうしようか考える。愛梨とはまだ和解して間もないし愛梨のことを知って親睦を深めようと決意して「いいよ」と了承する。

 愛梨の部屋の中に入ると相変わらずところ狭しといろいろなフィギアが飾ってある。

 そこで目に付いたのが美少女御子ナナが武器である大幣を構えているフィギアが目に付いた。これをみゆきにあげればすごく喜びそうだ。なのでナナのフィギアを手に取り、

「愛梨お姉ちゃん。このフィギア私にくれない?」

「それはダメ。それは愛梨ちゃんのお友達であって宝物でもあるんだから」

 りさが持っているナナのフィギアを取り上げられる。

「別に良いじゃん愛梨お姉ちゃん」

「ダメったらダメ」

 ナナを姉妹二人で鑑賞してりさは愛梨の部屋から出た。あのナナのフィギアをみゆきにあげたらさぞ喜ぶ姿を思い浮かべながらりさは論文の勉強に入る。保育師か教師そのほかにもいろいろとある夢を思い浮かべながら。

 りさは梓にいろいろなボランティアを経験させられ人生の視野が広がった。

 それは置いといて先ほどのナナのフィギアが気になった。あれをみゆきにあげ喜ぶ姿が思い浮かんでつい微笑みを人知れず部屋の中でこぼしていた。

 次の日英明塾で、

「姉さんに豊川先生おはよう」

 パソコン室でモニターに注目している二人に言いかける。

「「おはよう」」

 二人はにっこりと癒しの笑顔をりさに向け言いかける。「姉さん宿題の論文三枚書いてきたよ」

 三枚の論文を梓に渡す。受け取って、

「後で見ておくから今日も論文入学のために勉強するからね」

「うん」

 言ってパソコン室から出て勉強室に行くと、そこには相変わらずスケッチブックに手腕な芸術家が描いたようなデッサンを描いているみゆきの姿があった。 

 愛梨には悪いけどナナのフィギアを黙って持ってきたのだ。みゆきにプレゼントするために。このサプライズにみゆきはどのようなリアクションを取るのか楽しみなりさであった。

「だーれだ」

 りさはみゆきの目元を両手で覆い戯れている。

「りさお姉ちゃん」

 即答。

「あたり」

「りさお姉ちゃんおはよう」

「うんおはよう」

「今日はわり算の勉強でしょ」

「その前にみゆきちゃんにプレゼントがあるんだ」

「なになに?」

 ワクワクしているみゆき。

「じゃーん」

 りさが鞄から取り出したのは愛梨からパクってきた美少女御子ナナのフィギアだった。

「おわわわ。ナナだ」

 目を丸くして驚いているみたいだ。

「みゆきちゃんナナ好きだったよね。だからこれあげる」

「ホントに」

 りさはにっこり笑って頷く。

「ありがとうりさお姉ちゃん」

 みゆきの今まで見たことのない輝かしい笑顔を見てりさ自身も嬉しくなってしまう。そして幸せになってしまう。

 今日も梓から頼まれたみゆきちゃんに勉強を教えることにする。みゆきちゃんは今までいじめが原因で引きこもっていたので勉強が遅れている。みゆきちゃんのカリキュラムは今は小学校三年生だ。

 みゆきちゃんがわり算のテキストを進めているうちにりさは論文受験の勉強をしている。

 りさには数えきれない夢がある。その夢がりさを意欲的に論文受験に勤しませている。中央中央って言っていたときよりも熱が入っている。知的障害者の姉を持つだけでいじめられたりさはそんな奴らを誰よりも輝いて幸せになって見返してやると考え方が変わったのだった。

 そんな気持ちにしたのは、

「おはようございます」

 と今りさとみゆきが勉強している最中に現れた里中明だった。

「「おはよう」」

 りさとみゆきの挨拶がはもる。

「おっがんばっていますね二人とも」

「あんただけには負けていられないからね」

 ニヤリと笑ってりさが里中に言いかける。

「僕も負けていられませんよ」

 里中はいそいそと机に座りりさと同じ論文の勉強を始める。

「ていうかその敬語どうにかならないの?」

「実家がコンビニやっていますから一種の職業病と言う奴ですよ。とにかく気にしないでください」

「そうなんだ。うちの実家もコンビニやっているんだけど私はそうはならないよ」

「とにかく日頃から接客に携わっているものは常に敬語でなければならないのです」

「はあ、そうなの」

 姉の愛梨は実家のコンビニを手伝っているが別にそうではないことを思い浮かべている。今度愛梨の働きぶりを見てみるのも良いかもしれないと思うりさであった。

 そんなこんなで勉強室に飾られてあるファンタジックな時計が夢の世界に誘うようなメロディーを発して十二時になったことを知った。

 りさは立ち上がり両手をあげ軽くのびをする。

 そんなとき梓がお皿一杯にサンドイッチを乗せて勉強室に入ってきた。

「みんなお腹すいたでしょ。調理室でみんなでお昼ご飯に作ったの。みんな食べる?」

「姉さんいつも気がきくね」「いつもすいません梓先生」「みゆきサンドイッチ大好き」

 勉強していたりさ、里中、みゆきが順に言う。

 みゆきはよほどナナのフィギアが気に入ったのか、食事をしているときでも手放さずに持っている。

「みゆきちゃんはよほどナナが好きなんだね」

「これみゆきの宝物にするの」

「そうか」

 あげたかいがあったと思うりさはそれだけでも心は喜びを表す黄色に染まる。

 そこで口を挟むのが里中。

「そのナナって何ですか?」

「知らない?」

「いや知りませんけど」

「私もよく知らないけどこれ秋葉原で結構ブームになっているみたいなのよ」みゆきに振り向いて「ねー」と笑顔で言いかける。そこでりさから、

「みゆきちゃんみゆきちゃん。里中君にもホーリセッカンしたら」

 みゆきにウインクして言いかける。

 するとみゆきちゃんはニヤリと笑って鞄からおもちゃの大幣を取り出して、

「ホーリセッカン」

 と言って里中の頭上からおもちゃの大幣を降りおろした。

「ぎゃあ」と悲鳴して里中は「これマジで痛いですよ」

「これで里中君はみゆきによって清められました」

「清められたっていったいなんですか」

 里中は頭にできたこぶをなでながら言う。

「みゆきちゃんの洗礼だよ。里中君をお友達として迎えてくれたんだよ」

「その気持ちは嬉しいんですけど、マジ痛いです」


 午後はレクレーションのカラオケ大会だ。

『悪しき心を清めるその名は美少女御子ナナ。ナナにかかればすべての人が幸せになれる。神様に選ばれた御子ナナ・・・・・』

 みゆきが美少女ナナの主題歌をノリノリの感じで歌っている。そんなみゆきに対してりさたちは手拍子をして盛り上げている。

 右手にはマイク左手にはりさが先ほど上げたナナのフィギアだ。よほど気に入っているみたいだ。

 みゆきが歌い終わってりさたちはそんなみゆきに対して「プラボー」と盛り上げている。

「上手だねみゆきちゃん。もしその気があるなら歌手になってはどう?」

 冗談混じりでりさが言う。

「みゆきは将来絵描きになりたいから、歌手は無理」

「そっかって次誰?」

 テレビ画面を見ると『木枯らしに抱かれて』という題名だ。

「これ麻美だよ」

 麻美がマイクを持ち立ち上がって歌う。

『出会いは風の中。恋に落ちたあの日から。気づかぬうちに心はあなたを求めていた・・・・・・』

 麻美は切ないキョンキョンの歌を感情を込め歌う。哀愁漂うような歌詞と歌声に麻美は一度でも良いからこの歌のような恋をしてみたいというのが今の夢らしい。

 この歌結構古いので梓と麻美以外誰も知らないが歌詞を見てりさたちはうっとりとしながら手拍子をしている。

 歌い終わって、

「麻美上手」

 恵が拍手をしながら言いかける。

「いやいやそんなことないよ」

 照れながら謙遜している麻美だった。

「この曲誰が歌っているの?」

「キョンキョンだよ」

「ってあのキョンキョンが歌っているの?」

「そう」

「って次は私じゃん」

 テレビ画面を見ると『空も飛べるはず』というタイトルでスピッツの名曲だ。これならみんな知っていると思って恵は入れたみたいだ。

『君と出会った奇跡がこの胸にあふれている。きっと今も自由に空も飛べるはず。夢をぬらした涙が海原へ流れたらずっとそばで笑っていてほしい・・・・・・』

 ゆったりとした曲調に歌っている恵自信は心地が良い。聞いている側のりさたちも心地が良いと言った感じでゆったりと手拍子をしている。

 歌い終わって、

「いやーどうもどうも」

 何て照れている恵。

「これ私たちが幼稚園の時の歌だよね」

 りさは幼稚園のころ姉の愛梨の愛情に包まれていた頃を思い出す。

 メロディーとは聞く為に楽しむだけでなく、記憶の中の輝かしい思い出を思い起こさせてしまう不思議なものだとりさは思った。

「次誰?」

 とりさが言うと歌詞画面から『FOREVER LOVE』というタイトルが表示された。

「僕ですよ」

 と里中が申し出た。

 曲からしてあの小泉前首相のテーマだって言うことは分かるが誰が歌っているかはみんな知らないみたいだ。

『もう一人で歩けない。時の風が強すぎて。ああ傷つくことなんて慣れたはずだけど今は。ああこのまま抱きしめて・・・・・・』

 あまりにもキーの高い曲なのか。里中は声が裏がえってしまってみんな『里中君声が裏がえっているよ』なんて笑っている。

 里中が歌い終わって。

「X JAPANのFOREVER LOVEどうでしたか?僕のお気に入りの曲なんですけど」

「て言うか声が裏がえっているんだけど」

 りさが言うとみんな爆笑した。

「この曲キーが高いんですよ。だから歌えるように特訓します」

「がんばってね」

 何ておざなりにはき捨てるりさ。

 そしてりさが立ち上がり、

「次私の番です」

 歌詞画面を見ると『さくらんぼ』と表示されている。りさは場を盛り上げるならこの曲がうってつけだと思って選曲したみたいだ。もちろんみんな知っているみたいで麻美なんか「私この曲好き」と言うほどだ。

『愛し合う二人幸せの空となりどおしあなたと赤いさくらんぼ・・・・・・・』

 アップテンポな曲で歌っているりさ自身も気持ちが良い。聞いているみんなも気持ちよく手拍子をしている。

 りさはこの曲を歌っている大塚愛になったかのようにノリノリで歌っている

 歌い終わって。

「りさ最高」

 麻美が盛大な拍手を送り、挙ってみんなが拍手をする。

 次はと歌詞画面を見ると『ラジカルティーンエイジャー』と言うタイトルで梓の出番みたいだ。こんな歌誰も知らない。

「みんなに私からプレゼントがあるんだ。それはお金では買えない大切なものだと思って聞いてくれたら良いと思っています」

 梓が言う。

 すると曲が始まり古い時代を感じてしまうような曲調だった。

 透き通った美しい声で梓は歌う。

 この歌詞に勇気づけられるものを感じてしまうみんなだった。

 梓が歌い終わって。

「どうだった?」

 りさたちは梓を盛大な拍手で感謝するのであった。

 ちなみに歌っているのはアルフィーである。

 その後カラオケ大会は盛り上がった。

 りさは音楽は魔法といっても過言ではないと思った。科学的には証明されていないが、音楽とは心の健康を支える機能があるみたいだ。旧約聖書のサウル王がダビデのハーブによって、またスペインの王がカストラートであるファリネリの歌声を聞くことで鬱病が癒されたことは有名な話だと梓から習ったことだった。

 そう思うとりさはいっそ梓からギターを習ったことだしバンドでも組んでミュージシャンになって心が病んだ人たちの為にすてきな曲を演奏して癒して上げたいと思った。そしていろいろな人たちに愛されたい。

 りさには両手いっぱいになるほどの夢がある。それは梓や里中、それに麻美や恵、みゆきに出会ったからこそ持てたことであった。

 カラオケ屋からでたりさたちはもう空は夕暮れを気取っている。

 麻美たちと「バイバイまた明日」と言って別れて梓とりさは二人で英明塾に戻る途中だ。

「姉さん。私は今とっても幸せなんだけど」

 信号の前で立ち止まり、りさが何となく言う。

「私も幸せだよりさ。あんたみたいな生徒が持てて」

 信号が青になり二人は渡る。

「私カラオケで音楽のすばらしさにいっそミュージシャンになるのも良いかななんて思っちゃったよ。私にはたくさんの夢があるけどこの中のどれか一つしか出来ないなんてちょっと惜しいなんて思っちゃったりして」

「りさ。とにかく小さなところから始めるんだよ。そうすれば少しずつ広がって一つに限らずすべてに広がることだってあるんだよ。今私が英明塾でやっていることがそうなんだよ。今は小さいところだけどいつか太陽よりも大きくなると信じながらやっているんだから」

 太陽よりも大きくかと思ってりさは夕日に向かって拳を向ける。

 自宅に帰るときにはもう空はブラックに染まっている。

 ドアを開け「ただいま」と言って中に入ると玄関に愛梨が立ちふさがっていた。

「ど、どうしたの愛梨お姉ちゃん」

 フィギアのことがバレたのかと思いきや案の定。

「りっちゃん。愛梨ちゃんのナナのフィギアとったでしょ」

「何のこと?」

 目を泳がせながらとぼけるりさ。

「りっちゃん嘘は泥棒さんの始まりだよ。りっちゃんが嘘をつくときの仕草は愛梨ちゃんはわかるの。正直に言いなさい」

 りさは観念して「はい」と正直に認めた。

「それで愛梨ちゃんのナナのフィギアはどこにあるの?」

 りさは英明塾の同じ生徒のみゆきにあげて大いに喜んでもらえたことを話した。すると愛梨は。

「喜んで貰えたことは愛梨ちゃんも嬉しいけど、あのナナのフィギアまだナナが売れる前のものだから、もう廃盤になっているよ。どうしてくれるの?」

 胡乱な目つきで愛梨が訴えかける。

「じゃあどうしたら許してくれるの愛梨お姉ちゃん」

 みゆきのまねで心にキュンとくるような麗しい表情で愛梨に言う。

「りっちゃん愛梨ちゃんはそんなことしたって許さないよ」

「じゃあ分かったよ。そんなに私のこと憎いなら愛梨お姉ちゃんの言うことを何でも一つ聞いて上げるよ」


 と言うエピソードでりさは休日である日曜日に愛梨と一緒にナナのフィギアを探しに行くことになったのだ。

「もう疲れちゃったよ」

「愛梨ちゃんはいつもお母さんやお父さんと一緒に働いているから疲れないよ」

「私は疲れちゃったのよ。私のことも考えてよ」

「じゃあ喫茶店で少し休憩しようか」

 喫茶店に向かった先はそこはピンク色の看板にメイド喫茶と表示されているところだ。

 ここが噂のメイド喫茶と言うところだとりさは拒む。

「愛梨お姉ちゃん。なんかいかがわしいから、普通の喫茶店で良いじゃない」

「ダメです。秋葉原に行ったらここでいつも愛梨ちゃんはお茶するんです。それに今日りっちゃんは愛梨ちゃんの言うことを聞くと約束したんです」

 嘆息の吐息をこぼして「わかったよ」と覚悟を決める。

 中にはいるとお洒落なお店でメイド服を着た女性が「お帰りなさい愛梨お嬢様」とにこやかに迎えるメイドたち。

「久しぶりだねミレイさん」

 ミレイというメイドに気軽に話しかける姿を見てりさはお姉ちゃんは常連客だったのかよと嘆息してしまう。

「愛梨お嬢様そちらの連れの方はどちらのお嬢様でしょうか」

「この子は愛梨ちゃんの妹のりさです。通称愛梨ちゃんの中ではりっちゃんと呼んでいるの」

 ミレイが極上のスマイルでりさの方に視線を向け、

「私はミレイというメイドです。りさお嬢様以後お見知り置きを」

 りさに握手を求めるミレイ。

 りさはなんだか照れてしまう。

 握手を交わしカウンター席に案内される。

 とりあえずメニュー表を見てりさは、

「こういう特別なところって結構高いと思ったら案外普通の喫茶店と値段は変わらないんだね」

「でしょ。お茶くらい愛梨ちゃんがおごって上げるから、何でも好きなものを頼んで良いよ」

「じゃあこのオリジナルパフェでもいいの?」

 オリジナルパフェ値段は八百円。冗談混じりにりさは言う。

「良いよ。さっきから愛梨ちゃんりっちゃんを強引につれ回しているお詫びにおごって上げるよ。愛梨ちゃんりっちゃんとお買い物が出来るなんてそう滅多とはないからね。だから愛梨ちゃんつい昔のことを考えちゃって。あの頃は楽しかったなあなんて」

 感慨深そうに外の景色を眺める。

 りさは幼い頃二人乗りで愛梨が運転する自転車でよく遠くまで出かけたものだった。

 遠くの公園に行くことでいろいろな人たちと友達になりよく遊んだものだ。

 ホントにあの頃は楽しかった。でも愛梨が知的障害のことで・・・・りさはこれ以上考えるのはよしてこう言った。

「愛梨お姉ちゃん。あの頃は楽しかったじゃなくて、あの頃も楽しかったで良いんじゃないかな?」

「なるほど。愛梨ちゃんは今りっちゃんとこうしてお買い物に行けただけで楽しいからね」

「そうだよ私たちはこれからもっと楽しいことが待っているんだよ。だから良いことばかりじゃないし嫌なことばかりでもないけど、とにかく私たちは幸せになるために未来を切り開いていくんだよ」

「すごいねりっちゃんは哲学的なことを言うんだね。さすがはりさ先生だね」

 愛梨がにっこりと笑う。

「とにかく私たちは私たちの人生を楽しく生きて行ければいいと思うんだけどね」

 りさが何気なく言った言葉だった。

 そんな時ミレイが、

「お待たせいたしました愛梨お嬢様にりさお嬢様。それぞれオリジナルパフェです」

「あれ愛梨お姉ちゃんもオリジナルパフェ?」

「うん」

 オリジナルパフェには豪華に花火が閃光している。

「すごいね愛梨お姉ちゃん」

「とにかくりっちゃんの言うとおり楽しんでいこう」

 店の中にも構わず大声で張り上げる愛梨。

「ちょっとお姉ちゃん。しー」

「あっごめんなさい」

 パフェも食べ終わり外に出て秋葉原の町を歩き出す。

 りさはとにかく『今を楽しもう』と言う言葉が心に取り込まれ疲れなど吹き飛んでしまった。

 フィギアが並んでいるところに行ってりさはみゆきにあげたナナのフィギアを弁償しようと考えたが値段は高騰していて五万円だった。

「あーやっぱり愛梨ちゃんが持っていたナナのフィギアはプレミアがついちゃったみたい」

「ゴメン愛梨お姉ちゃん。これは私の予算外だよ」

「でもみゆきちゃんって言う女の子が喜んでくれたんでしょ。愛梨ちゃんはそれだけでもお金に換えられない嬉しい気持ちでいっぱいだよ」

 黙ってフィギアをパクってしまい、みゆきを喜ばせたいという気持ちであげてしまったことは悪いことだが、りさの中で愛梨との買い物でお金には換えないし言葉にも表せない何かを得た感じがした。だから結果オーライと言うことでナナの件は終わった。


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