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セプテンバー3美少女巫女ナナ

「コロン。私は正義の味方として頑張っているから、それに代償するご褒美はないの?」

 私を美少女御子にした白猫のコロンに言いかける。

「何不純めいたことを言っているんやナナ。お前は神様に選ばれた御子としての自覚が足りなすぎるや。もっと自覚をもつんや」

 なぜか関西弁のコロン。

「でも私それに命を懸けているんだよ。せめてこの勇士を私の大好きな祐二君に見てもらうことは出来ないの?」

「もうええナナ。はよう学校に行かないと遅刻するぞ」

「ああんまた遅刻」

 急いでセーラー服に着替えて等身大の鏡を見て服そうが乱れてないかチェックする。よし乱れてない。台所に向かい新聞を広げている父さんと目玉焼きを焼いている母さんにおはようの挨拶をしてトーストを口にくわえて「行ってきます」って言って玄関でスニーカーを履いて外にでる。

 私は柊ナナ高校二年生。ある日深夜零時に参拝すると恋が実るという伝説の神社に私は参拝した。すると私は天から光に包まれ御子姿に変身してしまったのだ。そこで現れたのが自称神の化身のコロンであった。コロンは私に使命をくだした。それは悪の人間に染まった人たちの心の正常化であった。そこから私の人生は大きく変わった。

 学校に到着して全速力で教室に向かいセーフ。まだ担任の熱血教師の若林は来ていない。

 席を座ると後ろから親友の加奈子が私に言いかける。

「おはようナナ。今日もギリギリだね」

「うん。おはよう加奈子」

「それより朗報だよナナ」

 にやりと笑って私に言いかける。

「何よ朗報って?」

「あんたの好きな祐二君は彼女いないって。マジでチャンスだよ」

「マジで」

 大声で張り上げ周りの生徒達は私に注目した。しかももうホームルームの時間だった。熱血教師の若林に私は両手にバケツを持たされ廊下にたたされた。重いし恥ずかしいし最悪だ。こんな姿祐二君に見られたら私生きていけない。今日の星占い絶好調間違いなしって言っていたけど全然当たらないじゃん。

 そんなこんなでお昼休み。

 私と加奈子はいつものように屋上に設置されているベンチに座り、お昼ご飯を一緒にとった。

「ナナ、私も応援しているから勇気を出して祐二君に告っちゃいなよ」

 突拍子のないことを言う加奈子。

「そんなこと出来るはずないでしょ。何言っているのよ加奈子は」

「じゃあラブレターとか彼のげた箱に入れるとか」

「出来ないよそんなの」

「何よナナの根性なし。とにかく当たって砕けなきゃ他の人に取られちゃうよ」

「そんなの絶対にあり得ない」

「ほらだったらラブレターを祐二君のげた箱に入れなさいよ」  

「でも私ラブレターなんて書いたことがないから私の気持ちをうまく表現できないよ」

「その点は私に任せなさいよ。ラブレター私が書いてあげるよ」

「加奈子が書いてどうするのよ」

「こう見えても私作文には自信があるのよ。これでも私小学校の頃様々な賞を取ったことがあるのよ」

 任せなさいと言わんばかりに胸を張って言う加奈子。

「でも・・・」

 私は不安だ。

「もう意気地がないね。そんな悠長なことをしていたら他の子に祐二君取られちゃうよ。いーいナナ、恋愛は押しが肝心なんだから」

 真摯に訴えかける加奈子。

「そんなの絶対にあり得ない」

「だったら私に任せなさいよ」

 放課後。

 加奈子が陰で見守る中、私は加奈子に書いてもらったラブレターを祐二君のげた箱に入れた。何だろう、ただげた箱に入れただけでも私の心は張り裂けそうだ。

 陰で見守る加奈子のところに戻って、

「入れてきたよ」

「グッジョブナナ」

 ウインクして親指を突き立てる加奈子。

「あーこれで伝わるかな私の気持ち」

 私の心は伝わるかどうか不安になっている。

「大丈夫だって。あんたの気持ちは私なりにうまくまとめて書き上げたから、絶対に実るって」

 何て言っているけど、加奈子は私の恋路を面白がっているようにしか思えないのは私だけだろうか?だったらラブレターぐらいは自分で書けばよかったと後悔する私であった。

 今日が終わろうとする中、私は机に座って日記帳に今日の出来事と自分の気持ちを書き記す。

「さっきからそわそわしているけど、どうしたんやナナ」

 コロンが私に言いかける。

「別に」

 コロンに私の今の気持ちを話しても分からないだろうし、仮に話したら『神様に選ばれた御子としての自覚が足りない』と罵られそうなので伏せておく。

「はよう寝ろ。神様に選ばれた御子は睡眠は必要不可欠やで」

 顔を洗いながら白猫のコロンが言う。明日は雨だ。

 次の日。

 私は張り裂けそうな気持ちの中眠ることさえ出来なかった。加奈子に書いてもらった私のラブレターきっと祐二君は見ているだろう。考えているだけで心が何かに圧迫されている感じで苦しい。これが恋わずらいという一種の精神病の病なのかもしれない。

 傘をさし、私はいつものように学校へと向かう。

 何だろう学校に向かうにつれて私の心臓は破裂しそうなほどバックンバックン鳴り響いている。

 げた箱から上履きを手に取ると中に私宛の手紙が入っていた。手紙の裏面を見てみると相川祐二とかかれていることに私の心拍数がオーバーヒートしそうなほど高鳴った。

 背後から私の背中をたたいて「おはようナナ」と言うのは親友の加奈子。

「加奈子これ、もしかしてラブレター?」

 加奈子に見せつける私。

「やったじゃないナナ。何て書いてあるの?」

「まだ見ていないから分からない」

「開けてみなさいよ」

 と言った直後始業ベルが鳴り出し私はラブレターを鞄にしまい加奈子とともに教室まで走った。

 お昼休み今日は雨で屋上は使えないので教室で食事をとることにする私と加奈子。

「ねえねえ開けてみてよナナ。何て書いてあるのか教えてよ」

 興奮する加奈子。

「加奈子には関係ないでしょ」

「何よラブレター私が書いてあげたんじゃない。私にだって見る権利あるでしょ」

「加奈子には関係ないよ」

 私は鞄から祐二君の手紙を取り出すと加奈子は取り上げて、

「けちけちしないで見せるのよ」

「ちょっと返してよ」

 私は加奈子から手紙を取り上げようとすると逃げ出して、

「別に減るものじゃないから私に見せたって良いじゃない」

「ちょっと加奈子」

 私は加奈子を追いかける。

 廊下を走り加奈子は走りながら私のラブレターを見ている。すると加奈子は立ち止まり手紙を読み上げる。

「僕も柊とそうだったら良いなと思っていた。今日の放課後体育館の裏で待っているよ・・・だってナナ。これって超ラブレターじゃん」

 私は加奈子にげんこつをお見舞いして私宛の祐二君のラブレターと判明した手紙を取り返す。

「いったーい。殴ることないじゃん」

 放課後私は体育館裏で相変わらず胸の鼓動を激しくさせながら待っていた。

 そして祐二君はやって来た。

「よお。柊待った?」

「祐二君」

 私の鼓動は破裂しそうで祐二君の顔さえまともに見れないほどだった。

「おーい先輩達。良いカモがこっちからやってきたよ」

 誰に声かけているのか祐二君はそういいかける。

「よくやった祐二」「こいつは金になるぜ」「上玉じゃん」

 いかにも素行の悪そうな三人組がやってきて私は疑問に思った。

「祐二君。これはどういうこと?」

「ゴメン柊。俺実は先輩達に目を付けられててさあ」 

 のんきに頭をかきながらニヤリと笑って言いかける祐二君。

「私を騙したの?」

 とてつもない怒りと悲しみが私の心に翻弄され私はプルプルと小刻みに震えながら涙を流していた。

「たまらないね。その涙」「売り飛ばす前に俺たちでナナちゃんをいたずらしちゃおう」「良いねえ」

 素行の悪そうな三人組が涙している私にジリジリ近づいてくる。

 その時私の前にたちふさがるように現れたのが白猫のコロン。

「コロン」

 私がその名を呼ぶ。コロンは、

「ナナ泣いている場合じゃないやろ。今こそ変身や」

 私は涙を拭い強く頷く。

 右手を挙げ私は変身の呪文を唱える。

「メタモルフォーゼ。天よ我に力を」

 私の体から強い閃光が迸り私は袴姿の御子に変身した。ここで武器とする大幣を構え決め台詞。

「悪の心を浄化する御子ナナただいま参上」

「何だこいつ。いきなりコスプレしやがったぞ」「まあ良い。俺は御子フェチでもあるから」「ああその格好欲情をそそる」

 と素行の悪い三人組が言った。

「あなた達に一つ忠告しておきます。痛い目に会いたくなったら悪しき心を捨て心を入れ替えなさい」

 大幣を素行の悪い三人組に向ける。

「なめてんじゃねえよ」

 素行の悪い三人組の一人の頭が金髪リーゼントが私に襲いかかる。

「口で言っても分からないなら少々痛い目にあってもらおうかしら」

 緒突猛進に拳を構え襲いかかってくる金髪リーゼント。その勢いを利用して顔面に肘鉄してカウンター。金髪リーゼントは言葉も発せないまま気絶。

 残りの二人を鋭い視線で睨みつけ私は。

「観念するなら今よ」

 長い髪をかきあげながら平常心を保つ。

「なめやがって」「ふざけんなよ」

 顔面ピアスだらけのスキンヘッドとドレットヘヤーが同時に私に襲いかかろうとする身の程を知らない二人。

 スキンヘッドに顔面横面に回し蹴りを決め、ドレットの方には人体急所の鳩尾に軽く拳をいれ二人とも気絶した。

「今やナナ。ホーリーセッカンや。三人の悪しき心を清めるや」

 コロンに振り返り私は強く頷く。

「悪しき心よ。今こそ善良なる心にホーリーセッカン」

 大幣を降り辺り一面が光り出す。

 すると素行の悪い三人組は光に包まれ立ち上がる。

「俺は何をやっているんだ女の子に暴力を振るおうなんて」「お母ちゃん。明日から真面目に社会に順応するために一生懸命勉強するよ」「俺自分が許せねえよ」

 素行の悪かった三人組はそう言いながら去っていった。

 残るは私をはめようとした祐二君だけだ。

 祐二君は私の正体におののいたのか?腰を抜かして尻餅をついている。

 私はうろんな瞳を祐二君に投げつけながら近づく。

「あなたはどうしてくれようか?」

「た、頼む。俺は先輩達に目を付けられただけで。だから許してくれ」

 泣いて懇願する祐二君。

 そんな祐二君を見て私はため息とともに涙が溢れだした。

「よくやったなナナ。お前も神様に選ばれた御子としての自覚が芽生えてきよった」

 コロンはそう言うけど今の私にはそんなことはどうでもよく、コロンを抱き上げ号泣する。

「まあ、さっきから見ておったが裏切られて泣きたい気持ちも分かる。だから今は思い切り泣け。その涙はこの先ナナに出会う人たちに対して優しくできる。それはわいが保証する」

「メタモルフォーゼ」

 と呟いて私は元の姿に戻る。

 コロンを抱きながら私は近くの河川敷に行って夕日に照らされ胸の痛みが少しいえた感じがした。でも涙はまだ流れてくる。そんな私にコロンは。

「こんなすさんだ世の中だからな、お前のような神様に選ばれた御子が必要なんや」

 私は立ち上がり、

「私は神様に選ばれた御子なんだ。この世に悪しき心があるから私は戦う」

 拳を握りしめ夕日に向かってそう叫んだ。


「はい終わり」

 梓が美少女御子ナナのDYDをプレーヤーから取り出してケースにしまいこみながら言う。

「やっぱりナナは良いよ」

 感極まって涙しているみゆき。

「やっぱりアニメは夢があっていいね」

 りさの美少女御子を見ていた感想であった。

「じゃあみゆきちゃん。これ期限が今日までだからダッシュでビデオショップに返してきて」

 梓が美少女御子ナナのDVDを渡しながら言う。

「アイヤイサー」

 と言ってゲーム室から出ていった。

「さてりさ。鑑賞中に私に話があるって言ってたけど何」

「私自分が中央中央って言っていた自分が恥ずかしくなっちゃって」

 恥ずかしさのあまり梓から顔を背けてしまうりさ。

「で、りさはどうしたいんだ」

 梓は背けたりさの視線を追うように首を傾けのぞき込む。

「これから・・・」

「これから?」

「これから姉さんがやっているボランティアに参加してその答えを探そうと思って・・・その・・・」

 梓は微笑んでりさを抱きしめる。


 その後りさは東大を目指す型破りな高齢者の徳川さんに勉強を教えることを梓に任される。

「じゃありさ。徳川さんのカリキュラムは中学校まで上がったから英語でも教えてあげて」

 梓は言う。

 りさはいきなり難題なことを任されて不安に思ったが難なくこなしているようだ。

「じゃあ徳川さん英語を始めますけど、まず最初にAからZまでを歌ってみましょう」

 ABCの歌を徳川と合唱した。

 歌い終わり、りさは。

「できたじゃないですか徳川さん」

 そんな徳川を見てなんだかうれしくてたまらなくなるりさ。

「これでも俺は若い奴らには負けないぞ」

 ニヤリと笑って拳を突き上げる徳川。

「その調子です」

「ところでりささんは受験勉強はしなくていいのか?そろそろ積極的にやらないとまずいんじゃないか?」

「その件ですが私は何で大学に行くのかわからなくなっちゃって」

 苦笑いをして悩ましげにうつむくりさであった。

「まあ人生いろいろあるよ。俺はもう隠居して後はお迎えがくるまで待つ身になったが俺はそんなんじゃ終わりたくなくてなあ、死ぬ前に天下の赤門をくぐりてえんだよ」

「徳川さんは東大に限らずにどこの大学でも良いんじゃないんですか?」

「まあその台詞は梓さんにさんざん言われてきたけどよ。俺はどうしても東大じゃなきゃ嫌なんだよ。東大は昔からの俺のあこがれだからよ」

 りさは徳川さんの気持ちは分からなくないが、やる気があるなら協力しようと決心するりさであった。

「頑張りましょう」

 さっきまでの悩ましげな気持ちを吹き飛ばすようにニカッと笑顔になったりさだった。

 時間は時事刻々とたって時計は午後九時三十分を示している。

 りさは時間を忘れ徳川に勉強を真摯に教える。

 そんなときに梓が勉強室にお皿一杯におにぎりを乗せ来た。

「りさに徳川さんお腹すいたでしょ」

「おー姉さん気がきく。丁度お腹減っていたところだったんだよ」

「いつも悪いな梓さんよお」

 二人はおにぎりを手に取りおいしくいただいているみたいだ。

「ところで姉さんは今まで何をしていたの?」

 行儀悪くもりさは口にものを入れながらしゃべり出す。

「ほら口にものを入れながらしゃべらないのりさ」

 りさは飲み込んで、

「ゴメンゴメン」

「まあちょっと豊川先生の手伝いをね」

「手伝いって何をしていたの?」

「それは秘密」

 にっこりと笑っておどける梓。梓は話題を変え、

「それよりりさ、徳川さんの勉強は進んだ?」

 そこで徳川が口を挟み、

「おう。りささんは賢明に教えてくれるよ。分かりやすくて感謝しているよ」

 そんなとき英明塾の呼び鈴が鳴り出し梓が「はーい」と言って玄関に駆けつける。

「じゃあ徳川さん。これ食べたら勉強を始めましょうか」

「良いのかいりささんよ。お家の人は心配しないか?」

「うちの両親は共働きで忙しいから夜遅くまで帰ってきません。だから始めましょう」

 と言ったときに梓が勉強室に戻ってきて、

「りさ。お姉さんが迎えに来たよ」

 お姉さんって愛梨お姉ちゃん?と心の中でりさが呟く。

「りっちゃん。遅くなるなら電話してよ。愛梨ちゃん超心配する」

 と言って入ってきたのがりさの実の姉の愛梨だった。

「何愛梨お姉ちゃん。別にこんなところまで来なくても良いんじゃない」

 突然愛梨が英明塾に来られて何故か戸惑った。

「りさせっかくあんたを心配して来てくれたのにそんな言い方ないんじゃない」

 梓の忠告がモットーだと思って「ごめんなさい」と素直に謝るりさであった。

「ところでりっちゃんはこんな時間まで何をしているの」

 何て愛梨に聞かれて勉強を徳川に教えているというりさにとって大それたことを言うのはなんだか照れくさくて黙り込むりさであった。

 そこで梓が、

「照れてないでお姉さんに教えてあげなさいよ」

 とりさの肩を小突く。

「・・・」

 照れているりさ。

 そんなりさを見ていて梓は仕方なく、

「勉強をこの徳川さんって言う人にりさは教えてあげているんですよ」

 すると愛梨は表情を綻ばせて笑顔で、

「りっちゃんすごい、先生なんて超かっこいい。今日からりっちゃんはりさ先生だね」

 りさに抱きついて頬ずりをする愛梨。

「ちょっと愛梨お姉ちゃん恥ずかしいからやめて」

 傍らで見ている徳川と梓はそんな様子を見て笑っている。

 そんなこんなでりさの人生の旅が始まるのだった。


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