誘拐
陽人くんと駅前のカフェで話した日からしばらくたった。
本当に私に出来ることはないのか…。
あれから毎日考えている。
あの日から陽人くんは私に会ってくれなくなった。
大学でもあまり話してくれない。
陽人くんは私を守ってくれている。
分かってはいるけどとても辛く悲しかった。
そんな時
美穂が大事な話があるからと私を呼んだ。
「未弥…大事な話だから真剣に聞いてね…」
「分かった」
「あのね…神崎くんの事なんだけど」
陽人くんの…私は彼の名前を聞くだけで胸が痛んだ。
「陽人くんに何かあったの?」
私は震える声で言った。
「私は亮平から聞いたんだけど
陽人くんストーカー被害にあってるみたいなの」
「美穂…実は私 陽人くんのストーカーの話知ってた…
最近陽人くんに元気がないように感じたから悩みがあるの?って聞いたの
そしたらストーカー被害にあってるみたいって…
私たちが遊園地に行った帰りに気づいたっていってた…」
私は自分が知っている事を話した。
「そっか…未弥知ってるんだ…
辛いよね…陽人くんと未弥 最近変だったし
でも遊園地の時からって…もう1ヶ月前だよね…?
どうしてもっと早くに話してくれなかったの?」
私は美穂に言われて思った。
“悩みがあったらすぐに相談してね”
美穂はいつもそう言ってくれていたのに…。
私は馬鹿だ。
陽人くんに近づかない事が私に出来ることだと言われて…悲しんで。
「ごめんね…美穂
もっと早くに相談するべきだった…
1ヶ月前に陽人くんにストーカーのこと聞いたとき
私に出来ることはない?って言ったら
私に出来ることは近づかない事だって言われて…
私は自分の惨めさを悲しんでばかりいた
だけどやっぱり助けたい…
私に出来ることを探してた…この1ヶ月ずっと
でも私に出来ることなんて見つからなかった」
私は自分の気持ちを美穂に話した。
「未弥が1ヶ月も悩んでたのに…私 気づかなくてごめん
私も力になるよ…!
未弥と私
それに亮平も神崎くんを助けたいと思ってる!
だから1人で悩まないでみんなで考えようよ?」
私は美穂の優しい言葉に涙が止まらなかった。
「ありがとう…美穂」
美穂と友達になれて本当に良かった…。
私は心の中で泣きながらそう思った。
この日から私と美穂。
そして清水くんで陽人くんのストーカー被害について話すようになった。
清水くんは陽人くんから近況報告を聞き私たちに話してくれた。
もちろん陽人くんには秘密で。
みんなで協力するようになってからもう2週間がたった。
未だにいい解決策は浮かばない。
でももう逃げない。
私が…私たちが陽人くんを助ける…!
今日は休日だったので1人で陽人くんの事を考えていた。
そんな時陽人くんから連絡がはいった。
陽人くんからの連絡は久しぶりだった。
ドキドキしながらメールを開く。
“未弥…今家にいる?”
私はすぐに返信をする
“いるよ?なに?”
返信が返ってきた
“今すぐ家の戸締りを確認して!
本当に巻き込んでごめん…。
今日、家のポストに手紙が届いた
内容は写真を送ったから後でみて
詳細は未弥の家で話す
すぐに行くから待ってて”
私は分かったと返信すると急いで戸締りをする。
戸締りがおわり私は送られてきた手紙を読む。
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陽人くんへ
陽人くん、いつも貴方をみています。
コンビニで何を買ったのか。
朝ごはん何を食べたのか。
彼女が出来たことも知っています。
それに遊園地に行ったことも。
優しいキスだったね…私にして欲しかったなぁ。
見ているだけじゃもう満足できない。
そばにいて欲しい…。
そう思っていたのに。
許せない…こんなに愛しているのに。
だけど許してあげる…
そのかわり1つ条件があるの。
私は大切な物を失った。
だから陽人くんにも大切な物を失ってもらいたいの。
これが条件。簡単でしょ?
私の大切な物は陽人くん。
じゃあ陽人くんの大切な物は何かな?
「竹澤未弥」だよね?
陽人くんの大切な物だから消えてもらうよ。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す…。
陽人くんを1番愛している人より
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手紙を読み終わり身体中に鳥肌がたった。
狂っている…。
私は殺されるかもしれない…。
そう思うと一人でいるのが怖くなった。
そのときチャイムがなった。
良かった。陽人くんが来てくれた。
私はモニターも見ず、扉を開ける。
「陽人くん!怖いよ…!」
扉を開けてからの記憶はない。
「ここは…」
頭が痛い。
目隠しがされ手が縛られている。
記憶を辿る…
私は手紙を読んで怖くなって
陽人くんが来てくれたから扉を開けた。
あれ…?
陽人くん…だったっけ?
扉を開ける前にモニターを見なかった。
扉の向こうにいたのは陽人くんのストーカー…?
「もう目がさめたの?薬が弱かったのかな…?」
ボイスチェンジャーだろうか。
声が変えられていているが女性だということは分かった。
「助けて…くだ…さい」
私は震える声で助けを求める。
「助ける…?ふざけないで!
アナタを助けても…不幸になるだけ…
でも安心して…すぐには殺さないから
アナタを少しずつ壊していってあげる
いつまで精神をたもてるかな…?」
そう言って笑った。
「私のせいで陽人くんとはあまり話せてなかったよね
だから今日の連絡は嬉しかった…違う?」
私は自分の気持ちを言い当てられ黙ってしまう。
「図星かな…?まあいいや
でもねあの連絡私がしたんだよ?」
えっ…。陽人くんからの連絡じゃなかった…?
「でも…陽人くんの携帯…」
「確かに陽人くんの携帯を使ったよ?
だけど心配しないで…陽人くんに何かするはずないでしょ?大好きなんだから!
ちょっと今は眠ってもらってるけどね…」
「陽人くん…!陽人くんは今何処にいるの!?」
私は拘束されている手をばたつかせて叫ぶ。
「はぁ…うるさい。
うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!」
「陽人くんが今何処にいるかは教えない
さて…アナタをどうやって壊してあげようかな…?」
「いや…たすけて…死にたくない」
「最初に言ったでしょ…まだ殺さない
もっと精神的に壊して壊れたアナタをめちゃくちゃに殺すの
私が受けた悲しみ 苦しみ…全てを経験させてあげる…!
楽しみはこれからだよ!」
部屋から出ていく音が聞えた。
はやく逃げなきゃ。本能がそう感じる。
だけど逃げられない。
もし手の拘束が取れても足が動かない。
“未弥に出来ることは僕に近づかない事だ”
陽人くんを思い出す。
「本当だね…陽人くん 私は何にもできないや…
陽人くんの言う通りだった…」
一筋の涙が零れた。
でも私は陽人くんを助けたい…!
こんな所で死んでたまるか。
私は1度死にかけたんだ。
きっと今回も大丈夫。
自分を何とか励まし続けた。
あれからしばらくだった。
陽人くんのストーカー。
私は頭の中で考えた。
女性。
“アナタを助けても……不幸になるだけ…”
確かそう言っていた。
私を知っている…?
そして助けられている?
分からない。
でも私が知っている人の中に…必ずいる。




