視線
先生のサプライズパーティーから1ヶ月がたった。
今日は休日。
陽人くんと私は次の休みに行く遊園地について話していた。
私は足が動かず迷惑をかけるからと断ったけど
陽人くんは私を必ず楽しませると言って笑った。
多分陽人くんは分かっていた。
本当は私が行きたいと思っている事を…。
そして今。
遊園地に来ている。
迷惑をかけてしまう…。そう思ったけど
陽人くんはそんな事全く気にしていないみたいだった。
私は早速ジェットコースターを指さす。
「あれに乗ってみたい…!」
「うん!いいね!あれに乗ろう!」
陽人くんは乗り物の担当スタッフに私の事を伝えてくれた。
そのおかげでスムーズにジェットコースターに乗ることができた。
「はぁ〜 怖かった… でも楽しかった…!」
「次は何にする?」
私は
メリーゴーランド
コーヒーカップ
お化け屋敷
次々に色々なアトラクションで楽しんだ。
どのアトラクションでも陽人くんがスタッフに伝えてくれたおかげで私は遊園地を楽しむことができた。
最後にこの遊園地イチオシの観覧車に乗った。
夕焼けに沈む景色はとても幻想的で美しかった。
「陽人くん…今日はありがとう!
私 足がこうなってから人が沢山いるところに行くの嫌いだった…
だけど陽人くんが連れ出してくれた
凄く楽しかったよ…!
本当に今日はありがっ…」
私は最後まで言えなかった。
陽人くんの唇が私の唇にふれる…。
柔らかな感触。
呼吸が出来ない。
初めての経験に私は心臓が飛び出るほどドキドキしていた。
角度を変えてもう一度陽人くんの唇が私の唇に触れる。
啄むような優しいキス。
長い長いキスが終わると陽人くんは私をみて照れくさそうに微笑んだ。
「僕も楽しかったよ…未弥」
遊園地から帰っても頬の熱はさめなかった。
あんなに楽しかった遊園地。
だけど最近陽人くんの元気がない。
そう感じたのは遊園地から帰ってしばらくたってから …。
私が何かしてしまったのだろうか。
それとも私が車椅子だから…。
私は一瞬浮かんだ考えを振り払った。
「陽人くんに直接聞いてみよう」
私はそう呟くと陽人くんに電話をした。
短いコールのあと“もしもし?未弥?”と
陽人くんの声が聞こえてきた。
「陽人くん?今家?」
「うん…!!」
「今からちょっと会えないかな…」
「……いいよ!どこに行けばいいの?」
私は駅前のカフェに来て。というと電話を切った。
最近の陽人くんは変だ。
さっきの電話でもどこか明るくみせようとしている気がした。
きっと悩みを抱えている。
私はいつも助けられてばかりだ。
だから次は私の番。
絶対に陽人くんを助ける。
私はそう心の中で言うと陽人くんと待ち合わせをした駅前のカフェに向かった。
カフェについてしばらくすると陽人くんがやってきた。
私は陽人くんに手招きをした。
私たちは席に座り適当にコーヒーを頼んだ。
「あのさ…陽人くん…」
「なに?」
言えなかった。
だけど今日聞かなければいけない。
何故かそう感じた。
私は深呼吸をするともう一度陽人くんに話しかける。
「陽人くん 今日は聞きたいことがあって呼んだの…
なにか悩んでる事があるんじゃない?」
陽人くんは一瞬驚いた顔をしてから真剣な顔をした。
「最初に気づいたのは遊園地からの帰りだった
駅から家に歩いている時だったんだけど…
歩いていると誰かの視線を感じた
でも振り返ると誰もいない
そんなことがその日から何回かあって…
本当は未弥を巻き込みたくなかったけど
未弥に嘘はつきたくないからね…!」
「ストーカーなの?」
「分からない…
だけど今は未弥と一緒にはいられない
僕は未弥を守りたいんだ」
「でも私…いつも守られてばかり…
助けられてばかりだよ?
だから私も陽人くんを助けたい
力になりたいの…」
「今未弥に出来ることは僕に近づかない事だ」
陽人くんはそう言ってカフェから出ていった。
悲しい顔をしていた。
私は黙ることしかできなかった。
冷めたコーヒーが2つ。
今の私たちを表しているようで胸が締め付けられた。
「私は何も出来ない…」
私の頬には涙が流れていた。




