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魔法世界で剣を握れ  作者: Dk
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デビュー戦

 世界中の魔法使いが集まるこの学校では生徒数は計り知れない。それは入学者も然り。約、千五百人程、入れるというドームを十。用意しなければならぬというのだから驚きだ。

 その入学式の壇上。新月雫等がいるドームでは今さっき、祝辞の言葉が終わったところであった。


 『新入生の皆さんは十三時には再度、このドームにお集まり下さい。繰り返します。新入生の皆さんは再度、このドームにお集まり下さい。』


 ドームの上空に散らばる丸い球体。その一つ一つが以上の事を何度も何度も繰り返している。


 「一時に集まれってなんだろう?」


 「さ、さぁ。多分、クラスの発表とか教材の配布とかかと‥。」


 「あぁ。なるほど。」


 入学式は席の指定が無かった為、隣りには自然。ノエルがいた。


 「とにかく一時まであと一時間くらいはあるなぁ。よかったらノエル、僕と一緒にご飯でも食べに行かない?」


 「え?あ‥いいんですか?私なんかと一緒で?」


 「何、言ってんの?僕、ノエルくらいしか話せる人いないし。ここに戻って来られる自信もないし。むしろ、来て下さいだよ。」


 後ろの方が本音なのだが‥。


 「そ、そうですか?では、ふつつか者ですがよろしくお願いします。」


 「いや、それなんか違う。」


 たかが食事に誘っただけだ。本当にこの子は‥


 「それにしてもデビトの奴、さっきから静かだな?ノエルの魔力に萎縮してんのか?」


 ノエルと行動を共にするようになってから鞄の反応がない。今頃になってそれに気付くとは僕も鈍感だ。

 

 「あっ、そんな‥そんなことないですよ。私なんか全然です。弱弱です。」


 まぁ、確かにノエルにそんな強そうなモノは感じない。とにかく僕は鞄の中を開けてみる事に。


 「おーい。デビト。お前、どうしたんだ?」


 と、中を覗くと。


 「何だ。寝てるだけか?」


 中央。そこには猫のように丸まったデビトが寝息をたて、眠っていた。


「まぁ、ここまで来るのに色々、あったからな。寝かせておくか。」


 「そうなんですか?お二人は遠方から来られたのですか?」


 「ん。まぁね。」


 さすがに獣の森。魔獣の住処から来たとは言えない。まぁ、お陰で剣術もデビトとの連携技とかも上達したのだが‥。


 「まぁ、とにかくご飯にしようよ。殆どもういないし。」


 「あっ、そうですね。すみません。余計なお話を。」


 「いや、だからいいって。」


 全く、頭を下げるのが好きな子だなぁ。


 ***************


 午後一時。(しら)された通りの時刻、丁度。ドーム内には見知った顔が多くあった。


 「な、何が始まるんでしょうね‥。」


 またも席の指定はない。さっきとは違う席だが隣りにはやはりノエルがいる。


 「ノエル、自分で言ってただろ?クラス決めと教材等の配布って。」


 「いや、それはそうなんですが‥」


 ともあれ、それなら何で昼ご飯を挟んで行われるのか?人数が多いから時間が掛かる為だろうか?

 とか思っていると壇上にレインボーに光るアフロ頭が登場。これまた七色に光るマイクを握り、大声を響かせた。


 「はい、はい~。新入生の諸君、入学おめでとう!この私はこういった学校のイベントの中心役を一手に任されているイベンターのマイクス・ボークだっ!君達にはこれからクラス決めを行って貰うぜぇ。概要はこうだ!画面、ドーン。」


 格好だけでなく話口調。動作も一々、煩い。だが、クラス決めを行う?


 「はい、はい。まぁ、画面なんか出てもね。行われる事は単純なんだよね。とにかくはいっ!」


 七色アフロこと、マイクス先生?は、出てきた恐らくは光彩魔法で作り出された画面に向き直る。そして、そこに書かれてあった文字はこう書かれてあった。


 第三百八十八回 新入生クラス決め ガチンコトーナメント戦。と。


 「諸君等にはそうっ!魔法によるぅぅぅ。魔法によるぅぅぅ。トーナメント戦を行って貰うようっ!」


 前に立つマイクス先生がそう声を張り上げると同時、ドームの上空。それと側面が音をたて始めた。


 「ルールは簡単。相手が降参するか戦闘不可能と判断されれば終了。WinnerとLoserが決まるってわけさっ!なお、対戦者はこっちで勝手に決めてるからクジを引くとかの心配は無いよ!では、会場の準備も済んだことだし早速、いってみようか!これが君達の運命の対戦表だっ!!!」


 声が大きく響くと直ぐ、現れていた画面が変化する。

 ズラーッと並ぶ名前の数々。そこに僕の名前も勿論、あった。


 「はいはい。皆、見えたかなぁ~?まぁ、把握できなかった子もそうでない子もちゃんと出番がくれば名前を呼ぶから心配はなっし。試合開始時刻は今から十分後。心の準備とその他、準備は早々に済ませるんだぜっ!では、また会おうっ!」


 そう言うとマイクス先生は消えた。どうやらその姿も光による分身であったみたいだ。残っているのは対戦表だけ。


 「あっ、え‥どういう‥?」


 まぁ、気持ちは十分に分かる。事実、この場にいる皆も状況が分からないのか騒ぎ立てている。


 「やっぱ、クラス決めだったみたいだね。」


 僕は隣で絶賛、混乱中のノエルにそれとなく声を掛ける。無論、自分も混乱している。


 「やっぱじゃないですよぅ!こんなの全然、予想してませんよ。どうしよう。どうしよう。私、絶対最下位ですぅぅ‥。」


 早くも絶望の表情でオドオドしているノエル。そんな彼女の気持ちを紛らわそうと僕は声を掛けて上げる。


 「何、言ってんの?ノエルは魔法が使えるんだから大丈夫だって。」


 「魔法が使えるって‥。そんなの当たり前じゃないですか?魔法が使えない人間なんていない筈、ないじゃないですかぁぁ。」


 「あっ、うん。そうだね。」


 励ましたつもりが逆に傷付けられた感じがする。


 「まぁ、とにかく頑張ろうよ。お互い、同じクラスになれるように。」


 「一回戦で負ければ嫌でも私と同じになれますよ‥。」


 もう、どう言葉を掛けて上げればいいのか分からん。


 「まぁ、とにかく僕達も対戦表、見に行こうよ。ここからじゃ、あんまり見えないし。」


「あっ、はい‥そうですね。」


 のっそり立ち上がるノエル。始まる前から何をそんなネガティブになっているのだか?こっち達は早く戦いたくてウズウズしているというのに。


 「三回戦までいけばノエルと当たるのかぁ。」


 「どうせ、私は一回戦で敗けますよ。」


 対戦表を目にしてもノエルは相変わらず。まぁ、こればかりは本人の意思だからどうもできない。第一、ノエルの実力を知らない僕には何も言えない。


 『雫。早くも一番になるチャンスがきたね。頑張ろうね。』


 ノエルをどうしたもんかと見ていると鞄から囁き声が聞こえた。


 「あぁ。一年間、みっちりやったんだ。やってやろうぜ。」


 『うん。』


 かくしてこうして始まったトーナメント戦。僕の出番はなんと初っ端。一番始めだった。

 試合開始時刻まで残り五分。


 ー


 「さぁ、さぁ。選手の二人ぃぃ。準備は万端かなぁぁ。」


 すっかりコロシアム化した会場。そこで行われるのはこれまでの人生で体験する筈もないクラス決めである。


 「ルールのおさらいだ。相手が降参。気絶などぉぉ、戦闘不能となれば試合終了。そこで敗者は Z組 決定!Z組にならないようお前らぁ、頑張れようっ!」


 との声が止むと会場は静まり返る。それは当たり前とも思えたがどうもこの静けさは好きではない。


 「まだ皆、緊張しているのかぁぁ?お二人ぃぃ、会場を盛り上げてくれるような熱い戦い期待してるよぅ!では、試合ゴウッ!」


 いきなり始まった試合開始の合図。まず始めに仕掛けたのは相手の方だった。


 「アイスシャワー。」


 事前に魔力を溜めていたのだろう。彼の手から放たれた氷の礫が僕めがけて一直線に向かう。


 「デビト。」


 『うん。』


 始め鞄を下ろすよう、指示を受けたがこれは使わないと言ったら許してくれた。まぁ、鞄があって不利になるのは自分である。マイクス先生もしつこくは言ってこなかった。


 まぁ、そんなの嘘で使うんですけどね。


 「なっ、はやっ‥」


 高速による移動術。それを可能にし、相手の繰り広げた氷の礫を回避。瞬時に後ろに回り込み、首元に手刀を決める。

 

 「お、おぉ。Winner、シンズキ・シズクゥゥゥゥゥゥ!正に電光石火が如くの勝利!!!だが、もうちょっと盛り上げて欲しかったぞぉぉ。」


 倒れた相手は学校の関係者なのか教員だかに運ばれていた。それを見て僕は一人、静かにガッツポーズを手に刻む。


 『やったね、雫。』


 「あぁ。練習通りできてよかった。」


 本来ならショルダーバック無しで練習していたこの技。デビトの流星のような移動術を後ろから押されるように加速。その速度はショルダーバックからよりも背中から直の方が勿論、速い。だが、今は一回戦。その速さを使うような場面ではないと判断したのだ。


 『次はどうする?二回戦だけど?やっぱ、力はまだ温存しておく?』


 「あぁ、そうだな。」


 デビトの力は限られている。ゆえ、この多数行われる戦いでデビトの力を持たせるのには節約が必要。

 まぁ、デビトの力を借りずとも戦える方法はあるのだがこのトーナメント戦ではあまり使えるようなものではない。


 「じゃぁ、まだお前はショルダーバックに入っていてくれ。魔力回復剤はちゃんと飲んでるよな?」


 『うん。大丈夫。てか、雫よくこんなの買えたね?』


 「あ、あぁ。お陰でもうお金無いよ。」

 

 鞄の中で戦闘させる主な理由はソレである。デビトが魔法を使った後に魔力を回復させる為。少しズルだが鞄の中に入れた魔力回復剤を飲ませればこの戦法は長続きするのだ。


 『じゃぁ、この調子で次も頑張ろうっ!!』


 「あぁ。」


 「ちょっ、ちょっ‥雫さぁん。」


 「ん?あぁ、ノエル。」


 上の階へ上がると直ぐ、何故か涙を流しているノエルが僕の方へ駆けてきた。


 「し、雫さんがあんなに凄い魔法使いだとは‥すみません。すみません。先程は私なんかとランチを共にして頂き。すみません。」


 「あ、いや。僕は凄くないって‥。」


実際、さっきの戦闘でも僕はただ手刀を入れただけだ。特になにもしていない。


 「そんな謙遜しなくていいですよぉぉ。多分、私とは同じクラスにはなれませんが仲良くしてくれますか?」


 「あ、うん。それは勿論。」


 適当に返事を返し、ノエルに空いている席を訪ねる。もう少しで次の戦いが始まる。次、勝った方が僕の相手だ。観察はしっかりしておくべきだろう。


 「それにしてもあの魔法はなんなんですか?物凄い速い移動術でしたね?身体強化魔法でもあんなに速くは動けないかと?」


 席に座ると同時、ノエルが訊ねてくる。


 「あっ、うん。あれはそうだね。う~ん。」


 魔法のことなんかちっとも勉強していない僕は酷く焦る。デビトもあれは別に何かの系統魔法ではないと言っていたし。

 頭抱えて悩む僕。そこに。


 「貴方、珍しい事をするのね?」


 「え?」


 

 新たな声。そこに首を向けると金髪の長髪をサラリ。背中に流す美女が立っていた。


 「でも、次は簡単にはいかないわよ。黙ってあげるから全力を出しなさい。」


 「あっ、いや‥貴女は?」


 新たに現れた美女が何を言っているのか分からない。


 「私はアリアナ。フローラ。貴方の次の対戦相手よ。」


 「え?でも、まだ試合は‥」


 僕の言葉は完全に無視されて突如、現れたアリアナ・フローラさんは髪を片手で靡かせ、ここから去った。


 「ん?どうしたんだ?」


 ふ。と隣を見るとノエルが体をガタガタ。ブルブル震わせている。


 「あっ、いえ。あの‥雫さんはやっぱ、す、凄いです。」


 「はい?」


 今ので何が分かるのか?


 「ん?お前もか?どうしたデビト?」


 肩に掛けるショルダーバックが震えている。震えているのか。回復剤を食べているのか。

 どちらにしろ、今段階でこうも動いているのはおかしい。


 『あっ、いや‥雫。』


 「ん?どうした、本当に?」


 他の人に聞かれるのもまずいと思い、鞄を膝の上。顔を近付けてデビトとの会話を続行した。


 『雫。次の試合、僕は雫の背中で戦うよ。それと雫も覚悟しておいて。』


 「は?何を?」


 瞬間。


 「おぉっと。またも瞬殺だぁぁ!!今年の新入生は期待の世代かぁぁぁ。Winner、アリアナ・フローラァァァ!!!」


 「…わ、分かった。今度は全力でいこう。」


 階下のバトルフロアーから注がれる鋭い眼光。それは今まで見てきたどの生物のソレよりも鋭く光っていた。


 第二試合まで残り試合数、六百八十八戦。 

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