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しるく

 「それじゃあ飛鳥君、大地君、ミケ君の待遇も確定したところで、俺の報告をしよう。預かっていたドロップの件なんだが」

 「何か進展があったんだ?でも、なんで後回し?」

 「当然だろ?アイリス君。俺の担当は素材だから、基本部外秘だ。たとえ君のリアルの友人や後輩でも仲間であることを確定しておかないとホイホイ洩らせないよ」

 アイリスの疑問にムラが答える。生産者集団というセサミオープナーの性格上秘匿すべき情報はある、という主張は確かに正当性はある。

 「ああ、なるほど。それは私がうかつだったね。では、3人ともここからは部外秘ってことで」

 ミケと飛鳥はリアルでの研究者の端くれだし、大地も調理師にとってオリジンのレシピがどういうものかは承知している。ムラの言う事はよくわかるので、ここは黙って首肯した。

 「頼むよ。で、まずスパイダーシルクなんだが、引っ張り強度は鉄の5倍程度、そのままでは800℃前後で発火するが、耐熱樹脂でコーティング処理して外気と遮断すると2000℃くらいまでは劣化はするが発火しなくなる。推奨用途はFRPの強化繊維、衣類に用いて耐弾・耐刃化する、ってあたりかな?今までの俺たちにはあまり使い道が多いとはいえなかったが、飛鳥君には面白い素材だろう。ただ、今のここの設備では人工的に複製することができないから、例のジャイアントスパイダーの巣かドロップでしか調達できない。バダー君とバズー君が採集してストックは増えているが、30kgってとこかな?」

 「ふむ、あれを狩りつくさないほうが良さそうだね」

 ムラの報告を受けてアイリスも思案顔になる。

 「いいか?何か無人機を造って貼り付けるとかしてあの蜘蛛の生態調査をする、とかはどうだろう」

 バダーが提案してきたのは、蜘蛛がどの程度のペースで増えるのか、どの程度のスピードで成長するのか、あるいはモンスターとしてポップするのかを調べてはどうか、ということだ。生息域に関しては、標高の高い低重力帯に限られることが当初から予測されていたし、ここまでの調査で確定している。

 「そうだね、バダーさん。だけどすぐには無理かな?私もこっちに戻ってきたからにはセサミシードの機能回復に時間を使わなきゃだし、メイちゃんも調査ドローンの設計に時間が使えるかどうか怪しいし」

 「ま、それは追い追いでいいだろう。で、すでにあるスパイダーシルクの扱いだが」

 話をムラが引き戻した。

 「飛鳥ちゃんに預けよう。一番まともに使えそうだし」

 「妥当なとこだな。わかった。飛鳥君もそれでいいかい?」

 「願ってもないです。でも、いいんですか?貴重な新素材っぽいですが」

 「そこはそれ、適材適所?餅は餅屋?」

 トレードの操作を行い、スパイダーシルクが飛鳥に預けられることになった、

 「それから、バイオセラミックの方だが、表面硬度は超硬度ナノチューブ並、耐熱も優れるんだが、結晶構造の都合で厚さを持たせるといきなりもろくなる。大体3㎜位が境界だな。村田さんは銃器の内部部品とか、刃物とか、あまり厚みのいらないところに使うのがいいんじゃないかって意見だが」

 村田もムラの解説にうんうんと頷いている。

 「とりあえず4振り、刃にバイオセラミック。硬度や弾性の違うチタン系合金で心金と鎬、棟を合わせた日本刀に近い作りでやってみたんで、バダー君、バズー君、アイリス君、…あとはメイフェア君でいいかな?試しに使ってみてもらおうと思ってる。で、バイオセラミックは工業施設が使えるようになれば複製できそうだ。ただ、レアアースが要るんであまり生産量は伸ばせない」

 トレード画面に薙刀と太刀、刀二振りが表示されたので、アイリスは太刀を受け取っておくことにする。以前、メイフェアは薙刀を嗜むと聞いたことがあるから薙刀はメイフェアが取ることになるだろう。

 「あと、人工筋サンプルは?」

 もう一つ預けていた物件を思い出したので併せて聞いてみる。

 「あれはまだしばらくかかりそうだ。レベルが少し足りない。まあ、スパイダーシルクの分析とバイオセラミックをいじらせてもらったおかげでそれなりにレベルアップはできたんだがね」

 苦笑交じりに答えるムラだった。

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