会議はダンシン
「では、そろそろ本題のお話をしましょう」
皆が食事を終えて一息ついたところでメイフェアが切り出した。
「私とアイリスさんは、協力し合えると思います。私たちの抱える問題がよく似ていて、かつ、一部では足りないものを補えるからです」
すっ、とアイリスは目を細める。βでの短い付き合いしかないが、その中での印象には交渉相手としてはかなりタフで、うかつに言質を取られるのはまずい、という側面もあるからだ。
「どんなふうに似ていて、補えると?」
故に、こちらからは手札を切らない。友人として協力するのはやぶさかでないが、なればこそ対等であるべきだろう。
「まず、似ているのは私たち双方が人手、しかもNPCの部下を多数必要としていることです」
にこにこと穏やかな笑みを浮かべたままメイフェアが答える。
「プレイヤーの仲間、ではなくて?」
内心でうなづきながらもあえて逆を問う。
「はい。常時、いつでもログインすればそこにいてもらわねば不具合があります。プレイヤーの皆さんに、常に私たちの都合に合わせろ、とは申しあげかねますから」
セサミシードの職員が最終的にどの程度の人数になるにせよ、ここを拠点にする者が増えた後で職員のログイン状況が悪いから機能不全、という訳にはさすがにいかない。メイフェアも、艦のクルーがなかなか集合できないようでは運用の足かせが重すぎる。
「そうだね。でも、NPCがポップしてくるわけじゃない」
「まあ、具体的な方策は後で。まずは前提の合意を持った方がよろしいかと思います」
アイリスは軽くうなづきメイフェアの話の続きを促す。
「話が変わるようですが、軍艦、というのは基本的にとてつもなく非生産的にできています。目的通りに使えば、敵対者を破壊するだけでなく自らも弾薬やエネルギーを食いつぶし、全く損害を受けないことはまれでしょう」
「つまり、メイは補給、修理が行える母港が欲しい、と?」
「ただで、とは申しませんわ。そして、今ここにいるのが第一歩、です」
メイフェアはセサミシードに当座の足と武力を提供する。アイリスはプリンセスメイフェアに停泊する港と補給物資を提供する。人集め、資金集めは互いのリソースを持ち寄って協力する。
「いいよ。その方向で進めよう」
アイリスが手を差し出し、メイフェアもそれを取る。
「では、次はわしの番じゃ。と言ってもわしはそれほど難しい話にする気はないがの?」
次に交渉の口火を切ったのは村田だ。こちらは真面目な顔をしているが、アイリスにとってはメイフェアほど注意深く交渉せねばならない相手ではない。というか、βテスト中から孫か何かのように色々と甘やかされていた気がする。
「だいたいわかるよ。村田さん。拠点と資材の提供の代わりにコロニーの整備保全に協力するって辺りでしょう?」
先回りするアイリスの言葉に、うむうむと満足げに村田はうなづいた。
「とにかく、建築を実行して経験を稼ぎたい。他ではまだ建築依頼が発生するような状況ではないから俺にとってはここは都合がいい。もちろんそのためにコロニーの手入れを手伝え、と言うなら協力する」
宣誓するように右手を上げて手札をさらすドーユーはずいぶんさっぱりした性格のようだった。
「当分は食事と資材しか出せないかもしれないよ?ドーユーさん」
「あとは、こちらもNPCの従業員は欲しいな。一人でも一軒くらい作れるとは言ったが、当然十分な人数でかかった方が仕事は早い」
「まぁ、そうよね」
「すっ、すみましぇっ、すみませんっ、わりこむようですが、よ、よろしいでしょうか?」
順番的にはバダー、バズー兄弟の番か、と思いきや、かみかみで発言を求めたのは、意外にもプルナだった。




