顔合わせ
「このたびはわざわざ遠方までのご足労、本当にありがとう。コロニー【セサミシード】オーナーのアイリスです。βプレイヤーでしたからご存知の方もおいでですが、見た目も多少変わっていますから改めて。こちらはクオ。【セサミシード】の情報端末だそうです」
「ご紹介にあずかりました。情報端末のクオと申します。オーナーであられるところのアイリス姫様にお仕えしております」
クオの案内で15畳くらいの広さの会議室に移動したところで、改めて自己紹介とあいさつを交わす。
「ではこちらも改めて。私はメイフェア、エルフィンで高速巡洋艦【プリンセス・メイフェア】オーナー兼艦長を務めます。クオさんもよろしく」
「恐れ入ります。メイフェア様」
「…メイちゃん、様づけって抵抗感ない?」
「?使用人というのはそういうものですよ?むしろクオさんにとってはその方が自然でしょうから、好きに呼ばせてあげた方がいろいろスムーズに運びます」
「そういうものなの?」
「「はい」」
全くそれが当たり前、という顔のメイフェアに、これが本物のお嬢様か、とアイリスは軽く戦慄した。
「ではここからは年長者から、という事にしとくかの。村田じゃ。テックドワーフで、主に銃器の製作を手掛けとる。アイリス嬢ちゃん、テーザーの調子はどうかの?」
「村田さん、ようこそ。問題なく使えてるよ。あ、そうだ、後でいいから護身用に使える拳銃とか有ったら買いたいんだけど」
「今はまだそれほど高度なのはできとらんが、それでよければいくらかは持って来とるぞ」
テーザーはそこそこ重たいし、バワーパックも必要なので現状では居住区に入るならザラマンダ・プロトを着用が前提だが、日ごろからそれでは色々な意味で重すぎる。
「じゃあ、次は俺、かな?ドーユーだ。建築関連にスキルを取ってるが、今のところ使いどころがなくて困っていた。どうやら渡りに船、だな」
「建築ですか⁉すばらしいです!」
「資材を用意してくれれば家一軒くらい作れるぜ?」
「あてにしてます!」
「俺はムラ。素材研究が主だが、修理やなんかもひととおりはできる。まぁ知った顔ばかりだが、よろしく頼む」
「ムラさん!ちょっと持て余してるものがあったからお願いしたいと思ってたんだよ!」
「ほう?興味あるな」
「姫様の耳に、ですか?ムラ様」
確かに、ムラの目線はずっとアイリスの猫耳に向けられている。そして、クオの視線の温度が低い。
「う、いやいや、ちょっと、こう、時々ぴこっ、とうごくのが、な?」
「お気持ちはわからなくもないですが、お控えください」
「わかるのかよ」
「ところでクオちゃん、だっけ?なんか中の人が居るんじゃないかって思うほどだ。こんな自然にふるまうロボは初めて見るな」
「恐れ入ります。思いますに、私のAIは【セサミシード】のメインフレームに本体がありますので、今までご覧になったものよりも容量が大きいのではないか、と」
「ほう、なるほど」
「そうなの?初耳だけど」
「お尋ねになりませんでしたから」
「こう生産者ばかりだと、なんかアウェー感があるな。バダーだ。操縦士系と格闘系の技能を取ってる」
「バズーだ。軽業と格闘が得意だ」
「ええと、ちょっと暗い緑のがバダーさんで黄緑っぽいのがバズーさんで合ってる?」
「「それでいい」」
「ごめん、なんかそっくりなキャラメイクで」
「いや、わざとだから気にしなくていい。俺たちはリアルで兄弟でな。始める前に相談して決めといたんだ」
「でも、いいの?多分地上攻略のモンスの方が歯ごたえあるよ?」
「それも気にするな。新しいフィールドはそれだけで楽しいもんだ」
「そういってもらえるとありがたいけど。できるだけ見返りが出せるよう考えとくよ」
ちゃっ、と軽く手を上げたバダーの仕草が、返事代わりのようだった。
「え、ええと、プルナ、です」
「へ?プルナさん、なんでそんな硬いの?」
「なんといいますか、その、アイリスさんからの、い、威圧感?迫力?が、すごくって」
「姫様、仲間、と強く認識してみてください」
「ん?よくわからないけど、仲間…仲間…こう?」
「あ、ちょっと楽になりました。すみません。」
「いや、こちらこそ?で、何が?」
「姫様はゾアンロードでいらっしゃいますから、ゾアン種の上位にあたられるのです。それで…」
「なにそのいらないオーラ」
「ふう、すみません、あらためて。プルナです。生産や戦闘は得意ではありませんが、交渉や商取引は得意です」
「こちらには長逗留できる?いてくれると助かるけど」
「はい。なんだか大きな取引の気配がします!ぜひ関わらせてください!」
「お、元気出てきた?」
「はい!」
的確に必要そうな人材の予想をし、集めてきたメイフェアがやはり一番すごいかもしれない、とアイリスは思った。




