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ぱんぱかぱーん

 一同ビーチに出たのはコンテナコテージでは準備に手狭すぎたからだ。

 「きゅ?」

 「すぐにわかりますよ。カケヤ」

 ぞろぞろと全員連れだってビーチに降りてきたことに興味を引かれたのか、かなり浅いところまで入り込んできたカケヤにクオが短く声をかける。

 「それで、セサミオープナー流、というのは?」

 「それもすぐにわかりますよ」

 シンヤの質問にはメイフェアが答え、アイリス、クオ、飛鳥の三人が前に出た。

 「クオちゃん、私が出なくてもよかったんじゃ?」

 「【竜吼】をお持ちですので。飛鳥様」

 「ああ、これ?なんに使うの?」

 「きゅ、きゅっ?」

 飛鳥はクオの指摘通り、対顎竜戦以降所持したままの音撃砲【竜吼】を取り出した。水中目標に対しての絶大な効果を知るカケヤが動揺した声を上げる。

 「いや、今更あんたを撃ったりしないよ」

 「きゅぅぅ」

 飛鳥は恐々と海面に半ば顔を沈めてこちらを伺うカケヤにあきれ顔で応じた。

 クオは飛鳥の取り出した【竜吼】に自身をケーブルで接続する。

 「では、始めましょう。姫様」

 「ん」

 クオに促され、アイリスはメニューからギルドバックヤードを開き目的のものを探し出す。

 「じゃ、ぽちっと」

 アイリスが数量を指定、タップすると同時に【竜吼】からスネアドラムの音、さらに続いてファンファーレが流れた。短いファンファーレをB.G.M.にバックヤードからアイテムが出現することを示すエフェクトが砂浜に広がり、やがていくつもの塊に収束していく。

「ずいぶん用意してたんですね」

「いや、急造だよ?」

 感心するコノミだが、アイリスの返答の通りでそれはメイフェアの提案を受けてから急遽増産したものだ。エフェクトの光が収束した後に現れたのは、5列縦隊で計50機、円盤状にとぐろを巻き並んだ【那須】だ。

「えー、クオちゃん?私の役目って」

「あ、申し訳ありません、【竜吼】をお預かりさせていただければあとは皆様と見ていていただいても結構でした。飛鳥様」

 飛鳥の突っ込みにクオはさらりと答える。

 「で、クオ?この手順の意味は?」

 「こういうのが様式美だとアーカイブにありました。姫様」

 「……どこで拾ってきたやら」

 さらにアイリスの突っ込みに対する答えからほぼ無意味であることが知れる。

 「ふむ、40点、てとこかな?」

 「辛いね、ムラさん」

 愕然とする飛鳥を放置してムラの下した評価は厳しいものだった。

 「今後の参考までに減点ポイントを伺ってもよろしいでしょうか、ムラ様」

 「まずいきなり整列してるのがダメだな。こう、たとえばWIGの中で取り出しておいて、一列縦隊でタラップから降りさせてからビーチで整列するのがいい。あとは名前を連呼しながら行進すると完璧だな」

 「なるほど、色々と作法があるものなのですね。勉強になります。ムラ様」

 「なんの様式だかわかんないけど、あんまりクオに怪しげなことを覚えさせないで?ムラさん」

 何やら手順をレクチャーし始めたムラにアイリスはこめかみを押さえながら苦言を呈した。

 「まあ、様式美とかはわからないが、セサミオープナー流、ていうのはこの【那須】の群れか?」

 「様式は大事ですよ?ホルベインさん」

 「いや、それはいいから」

 ホルベインの質問に答えるメイフェアには「様式美」とやらは通じているようだった。が、それでは話が進まない、とアイリスは続きを促す。

 「失礼しました。【那須】の事でしたね。セサミオープナーの得意と言えば、やはり技術力と物量でのごり押しではあるまいかと思うのです」

 「自分でごり押しって言っちゃうのもどうかと思いますが」

 「ま、言ってることに間違いはないと思うがね」

 胸を張って堂々と微妙なことを宣言するメイフェアに飛鳥とバダーからの突っ込みが入るが、メイフェアはさして気に留めてはいない様だった。

 「じゃあ、ここからは私から探査作戦を説明するよ。まずセサミオープナーは侵入経路が判明したらすぐ動けるように待機。【那須】50体は既知の通気口5か所から10体ずつ侵攻。ホルベインさん、シンヤさん、ロビンさんは空中監視」

 「監視の主役はロビンさんのシーカーになるな。俺たちはバックアップか」

 「そうなるな。どうしても通信能力も感知性能も専門のシーカーには及ばないから」

 それぞれの所持する機体の性格・性能上探査任務だとホルベインは護衛しかする事が無い。探査範囲が海中でなければシンヤのダイバーもシーカーには及ばなくなる。

 「それじゃ俺とコノミさんは?」

 「ソガさんはシンヤさんにくっついていってほしいんだ。ダイバーと接続してればタンクとダイバーのシステムがリンクして情報処理が向上する可能性があるのよ」

 これはソガを迎えに出向き、ストライカータンクを預かっている間に調べたことだ。ダイバーは専用のドッキングラッチでドリルないしはタンクどちらかを接続、空輸できるのだが、このラッチには動力と電子装備のコネクタがあり、空輸中の出力を向上させるほか相互にデータ処理を共有できる可能性が高い、というのがアイリスの見立てだった。

 「コネクタの規格、機能からの推測だけどね。本来情報収集がシーカー、解析がダイバーとタンク、もしくはドリル、護衛と指揮をファイターってフォーメーションなんじゃないかな?で、コノミさんはビーチから出来る範囲で地殻ソナーでの地中探査を。レンジはどのくらいあるのかな?」

 「潜らずに、だと2㎞くらいですかね?」

 「じゃあ、それで。はじめていいかな?」

 アイリスの説明にストライカーチームが了解を示す。

 「よし。【那須】起動」

 するするととぐろをほどいた50機の【那須】は隊列を組み指定された通気口へと向かった。

 「那須、那須、那須、那ー須ー」

 「なにそれ飛鳥ちゃん」

 「こういうモノである、らしいですよ?先輩」


 




 

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