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ワイルドワイルドワールド

 戦闘自体は短時間で決着したものの、居住区画とのアクセスドアの確認とロックの修理に時間を取られたため、アイリスは結局1時間強をこの配電室周りで過ごした。ドアの修理のついでに居住区画を覗いた印象は、まさに原生林、というもので、都市どころか住宅の痕跡すら周囲には見当たらず、ぽつん、と建っている配電室の四角い建屋がむしろ場違いに見えるくらいだった。

 「クオ、この中ってどこもこんな風なの?」

 訊ねた声は、独り言に近かっただろう。

 「おおむね。平地の都市部として用意されたエリアでも、基礎と道路は作られていますが建築物はほとんど残されていません。残っている建物は配電室のようにコロニーの機能維持のため必要な最小限の物のみです」

 かさり、と視界の隅で草むらが揺れて、犬に似た動物が顔をのぞかせる。視線を向けると一瞬だけぴくり、と身を震わせたが、初見のザラマンダ・プロトに対する興味が勝ったのか、逃げ出しもせずじっとしている。小汚くはあるが、愛らしくもある姿に少しだけ和み、スクリーンショットに保存した。

 「そう、ありがとう。いったん戻るよ」

 踵を返したザラマンダ・プロトの巨体に本格的に驚いて逃げ出した小動物に苦笑しつつ、アイリスはその場を立ち去った。

 「あぁ、あれはきっと狸だ」


 「お帰りなさいませ、姫様」

 バックヤードにポッドを停めてハッチを開けると、クオがまたも見事なお辞儀で出迎えてきた。

 「…」

 「なにか?」

 「や、もういいよ。ちょっとここで工作するから、食事を頼めるかな?」

 「はい。用意できましたらお呼びいたします」

 「ありがとう、おねがいね」

 アイリスはワークスーツに装備を変えて、帰還中に考え付いた作業に入ることにした。


 製作するのは、まず汎用の小型エネルギーパックだ。βで何度も製作したものだから、特にレシピが無くても手順は判る。軽合金素材と工業用樹脂、とそれぞれ一括りにされているものを工作機で加工して形にしていく。できあがるのは、500㎜ペットボトルサイズの乾電池、と言えば外見の印象は伝わるだろうか。これ一本でザラマンダ・プロトなら1時間通常出力で駆動できる。ザラマンダ・プロトの場合、4本組み込まれており、ポッドと接続している間はポッドの動力から充電するので不足はないのだが、この先戦闘機動を行うことが増えれば予備は用意していたほうが良いだろう。

 「次は」

 システムメニューからショップアイコンをタップ。ザラマンダ・プロトのロイヤリティーが振り込まれるくらいだから、アイテム自体は無理でも製作レシピとかデータに類するものなら購入できるのではないかと考えたのだ。

 「よし、思った通り」

 製作レシピ販売リストが無事に開いたので、目当ての物を探してリストをスクロールしていく。

 「確か、村田さんとかIDEさんがアップしてたと思うんだけど…あ、これだ」

 探し出したのは【テイザーガン・ムラタMTG3式】【テイザーガン・IDE・TGMk2】の二つ。テイザーガン、とは電極付の針を飛ばして電撃で目標をスタンさせる特殊な銃のことだ。

 「村田さんとこの方が射程と出力は勝ってて重量と燃費と本体価格はIDEさんのの方が優秀、か。相手の耐性も不明だから村田さんのをダウンロード…よし」

 「お食事の用意が出来ましたが、どちらでお召し上がりになりますか?」

 「あ、じゃあそっちに行くから案内を、と、手を洗うからちょっと待ってて」

 ライセンス料が引き落とされ、レシピがダウンロードされたところでクオの方も準備ができたようだ。

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