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仮称【フィニッシャー】級 (前書きに挿絵有り)

挿絵(By みてみん)

 全長は100mくらい、大まかにはラグビーボールのような紡錘形で、後方1/4辺りからが機関部となり、中央に主推進機、4方向に姿勢制御モーターが先端に付いたフィンが伸びる。前半にはブリッジがあるがリトラクタブルで、通常運行時は突出するが戦闘時は装甲内に格納する仕様らしい。

 「仮称【ハリケーン】です」

 「サイズを別にするとどっかで見たようなフォルムだね」

 「…不思議爆弾?」

 「一応現時点でまとまっている仕様を取りまとめて、船体の製作は既に始めています」

 アイリスと飛鳥の正直な感想には答えずにメイフェアは手元のタブレットから投影した3DCGの説明を続ける。

 「今の所武装は保留中ですが、村田さんはミサイルを主武装にする案を強く推しています。ミサイルなら発射方向がどちらを向いていても投射後に誘導すれば良いので砲塔の類はつきません。あ、対空銃塔はつきますね。その他のタイプの火器を用いるなら射界確保のために回転砲塔を設けることになるでしょう」

 「ミサイルだと消耗品経費がかかりますね。チャンドリアンには負担が重たいのでは?」

 ロビンが懸念を示した。が、これはムラや村田が議論済みの事でもある。

 「海賊に拿捕された場合に転用を制限する方策です。ただ、実際に運用するのはチャンドリアンですからどうしても無理、となれば変更は可能な方向で船体を設計しています」

 「なるほど、海賊が船体を入手してもミサイルを調達できなければ使い物にならないのですね」

 さすがにユバ中佐はピンときたらしい。

 「よろしいのではないかと。特徴的な艦形ですし、この船は対艦ミサイルがある、と周知されれば実際に使う機会は意外に少ないと予測します」

 「あー、でも、用意しとくだけでも対艦にまで使えるミサイルは高価いよ?中佐」

 「あ、もちろん今のは私見です、閣下。宇宙軍はまだ正式発足していませんし、今回は装備調達権限も私にはありませんし」

 アイリスの言葉にユバはわたわたと手を振って応じた。

 「運用には最低で艦長1、操舵1、航法士1、砲術長1、砲手3、機関士1の8名が必要で、各航路の連絡時間を考慮するとそれぞれの交代要員を用意すべきだし、船医とかもいた方がいいからざっと30人くらいが1隻当たりの乗員として必要です。クラーク・スタンリーキューブリック航路の往復、緊急待機、修復入渠のローテーションで回すとして、最低4隻は用意すべきでしょう。また、クラーク港で運用支援をするスタッフも加えてざっと300人くらいは要るようになるでしょうね。後方支援は公団の援助を受けつつチャンドリアンスタッフ比率を暫時増やすしかないでしょうが、護衛艦の乗員はクラーク出身者で固めたほうがいいでしょう」

 メイフェアがざっくりと用意すべき人数をカウントした。なにしろSFゲームなので自動化は進んでおり、後方支援の人員はかなり省力化されている。それに港湾施設はクラーク港やスタンリーキューブリック港を間借りする前提なので、これでもかなり少人数での運用にできているはずだ。ちなみにプリンセスメイフェアが最初にセサミシードに来た時とアイリスを始めてキューブリックに送った時は戦闘を考慮せずにとりあえず移動できるだけで良しとしたので一ケタの乗員で回しただけで、今は交代要員を合わせて200名のNPCがメイフェアの指揮下にある。その指揮ぶりは堂に入ったもので、とても女子高生とは思えないのだが、当人に言わせれば実家では子供のころから使用人が付いていたとかで、さすが本物の貴族様は一味違うとセサミオープナー一同をうならせたものだ。

 「それで、ブリッジなんですが、これも複数のアイデアがあってまだ保留中なんですよ」

 「と言うと?」

 「まず、ひとつ。クラーク航路用、と割り切ってサイバーがリンクして使うタイプ」

 この利点は海賊にサイバーがいない場合使いようがないことだ。また、レーダーやセンサーの情報は感覚的にわかるようになり見落としなどが激減することも期待できるらしい。問題は乗員育成で、ユバのような子供サイバーは大人ボディーが使えないのと同じ理由で使用を許可できない。商業的にも問題がある。駆逐艦に近い性能とサイズの護衛艦は当然高価だ。プレイヤーや公団にも販売して量産効果でいくらかでも価格を下げたいところだが、サイバーでなければ操作できないとなれば顧客はサイバーに限られることになる。そう、金食い虫のサイバーに。どう考えても当分の間は売れない。利点がそのまま欠点でもあるのだ。

 「ひとつ。ザラマンダを用いたバーチャルコンソールの採用」

 この場合、ザラマンダ、ないしはザラマンダ・プロトを使用可能な状態で所持していなければならない。犯罪歴のあるユーザーは定期的に排除される見通しなのでセキュリティー上の利点はある。万一白兵戦になった場合にも強い。船自体の単価に加え、新規調達だとザラマンダもまとまった数用意しなければならないのでトータルコストが高いのが難点となる。ザラマンダはプレイヤー間ではそれなりに普及しており、サイバー専用よりは商品にはなるだろう。

 「もちろんひねりのない標準的なブリッジを使うこともできます。セキュリティー上は何のメリットもありませんが、安価ではあります」

 「転用対策を取るか価格を取るか、だね」

 「2番艦、仮称【ボンバー】と三番艦、仮称【ペンタ】も着工しています。早めに選んでいただければ竣工を早く出来ます」

 アイリスのまとめを受けてメイフェアはユバに資料を渡した。

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