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名前は必要

 インナースーツとワークスーツにパンツァージャケット、といういでたちに着替える(というか、着用する)のはメニューを開いて装備指定するだけだから一瞬だ。ついでに公式掲示板の中にランダム初期装備のスレを見つけたので書き込んでおく。軽い現実逃避ともいう。さておき、いつまでも呆然としていても仕方がない。

 「えっと、名前は?」

 アイリスは目の前のロボっこメイドにといかけた。

 「いかようにもお呼びください。私は姫様の道具にございます」

 「いや姫様はよしてったら」

 「失礼しました、アイリス様の道具でございました」

 「会話ができる相手を道具扱いはしにくいわ」

 「使っていただけないのですか?」

 なぜか目しか作られてないはずの顔が悲しげに見える。

 「いや、きっと君は必要だと思うよ、ぜひ協力してほしい」

 「ではご利用いただけるのですね?」

 「なんでそう嬉しそうに見えるかな」

 「私はそのために作られました。このセサミシードの主たる方にお仕えし、関節ベアリングがすり減ってシャフトが抜けてごみ屑のように、いえ、まさにごみ屑として破棄されるその日までご奉仕するために」

 なぜかそこで頬を染める。というか、なぜそんな機能があるのかから不明だ。

 「いや、重い!重いよ⁉」

 「破棄していただけないのですか?」

 悲しげにうつむくロボメイド。

 「なんか悲しがるところがおかしいから!」

 「間違えました。お仕えさせていただけませんか?」

 今度は小首をかしげてみせる。

 「だから、協力してほしいったら」

 「よかった…破棄していただけるのですね…」

 「喜ぶところがおかしいったら!あと頬染めんな!」

 「失礼しました。また間違えたようです」

 「…なんだかものすごく疲れるよ…」

 「姫様のバイタルに異常はないようです。スタミナ値の減少も計測誤差内と思われます」

 「スタミナ値って、マスクデータだったはずだけど判るの?」

 「それが総合情報端末たる私のクオリティーです」

 控えめに造型された胸を張る。

 「どうも時々ポンコツに見えるけどね」

 「それもまた私のクオリティーです」

 更に胸を張りながら残念発言。

 「…じゃあ、君はこれからクオだ。クオリティーのクオだ」

 「はい。個体名称【クオ】を登録いたしました。只今より姫様の道具として…」

 「姫様じゃないって。それから道具でなく、そう、秘書として、メイドとして協力するように」

 「…失礼しました。アイリス様にお仕えします。よろしくお願いします」

 「…そこはかとなく不満そうに見えるのは気のせいか?」

 「気のせいでございます。」


 …絶対に気のせいではないだろう。そして、姫様と呼ぶのもきっと治らないのだろう。そんな確信のあるアイリスだった。それはともかく

 「何をするにしても、情報は必要ね。【セサミシード】のことを知りたい。そもそも個人で所有するようなことに、なんでなってるの?」

 

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