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異世界骨董店  作者: 椎名乃奈
第二章 ラジカセ
5/7

 それは開店前のことだった。

 まだ、店を開いていないと言うのにも関わらず、店内には電話が鳴り響いていた。

 その音に、慌てて御堂は電話に駆け寄る。


「はい、もしもし御堂骨董店です」

「もしもし、あのう実は修理して欲しい物があるんですが、大丈夫でしょうか?」


 受話器からは、年配の女性の声が聞こえて来る。


「はい、構いませんよ。どういった物でしょうか?」

「実は、随分と古いラジカセなんですけど」

「ラジカセですか、分かりました。こちらにある部品で間に合いそうなので大丈夫です。何時頃にお見えになりますか?」

「いや、私は行くことが出来ないので、代わりにそちらへ郵送させて頂きました。どうか宜しくお願いします」

「分かりました、では丁重に預らせて頂きます」


 年配の女生徒の通話が切れると同時位だろうか、御堂骨董店へと宅配便がやって来た。届けられたダンボールを開けて見たところ、カセットテープとラジオの再生、録音しか出来ないタイプの古いラジカセであった。


 ラジカセと言う音響機器は、遥か昔に廃れてしまった所謂ロストテクノロジーだった。未だに使っている人は、愛好家を除けばほとんどいないだろう。時代と共に、新しい物へと人が流れてしまうのは、仕方の無いことなのだ。


「これは、一体なんですか?」

「これは、ラジカセと言ってラジオを聞いたり、カセットテープを入れて音楽や声を録音や再世することの出来る機械だよ。好きな人にとっては、堪らない一品だろうね」


 色々とボタンを押して確認してみると、どうやらスピーカーが壊れているようで音が出ないらしい。音の出ないというのは、ラジカセにとって致命的であると言えた。


 全てのボタンの動作確認をする為に、カセットの取り出しボタンを押すと、そこにはカセットテープが入れられっぱなしになっていた。


「聞いちゃいましょうよ、先生」


 御堂が止めるよりも早く、暁は再生ボタンへと手を伸ばしていた。


「だから、音が出ないんだって」

「ああ、そっか」


 暁は、舌を出す仕草を見せている。

 取り敢えず、カセットテープは置いておき、ラジカセを直すことから始めた。


 しかし、これは中々骨の折れそうな作業であった。まず、このラジカセがどういった物なのかを調べる為に、電子回路や空気圧機器、油圧機器といった回路図を書く必要があった。


 そして、電圧や電流測定用のテスターと呼ばれる計器や、電気信号の波形をオシロスコープを使って計測する必要などもある。そうすることで、必要な性能や部品が分かるからだ。思っていた以上に古い型だった性か、部品も足らず、予想以上に時間が掛かる物だった。


 恐らく、何件かこのラジカセの修理を依頼したのだろうけれど、どこも引き受けてくれなかったのだろう。それは、古いラジカセを直せる職人が、今では激減しているからだ。


 例え、専門職であっても、若い人だと実際に触ったことのある人は、ほとんどいないと言うのが現状だった。



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