暴走
「いらっしゃい!あら、もう戻ったの?」
時生は麻美の店に来ていた。
「あぁ」
「それで、美咲ちゃん、どうだったの?」
「…元気だったよ」
「それならよかったじゃない!」
「…」
時生はグラスに注がれたお酒をグイッと飲み干した。
「ほら、起きて」
麻美に起こされている。
「買出しに行くから付き合ってよ。」
時生は仕方なく起き上がり、麻美を連れて港へやってきた。クルマを停めて、タバコに火をつける…。
「元気出しなさいよ。あんたには、私がいるじゃない」
「…そうだな」
強引な麻美に圧倒されながらも、時生には心地よく感じていた。
「ねぇ、結婚してくれる?」
「えっ?」
「嘘よ。ビックリした?」
そう言うと、麻美は朝市へと消えて行った…。麻美と一緒に、この波の彼方を目指して舵を取るのも悪くない。時生はフッと笑って、麻美の後を追いかけた―。
休日の午後。美咲は公園のベンチに座り、ひとり読書を楽しんでいた。しばらくして、本から目を離しぼんやりしていると、ひとりの男が目に入った。なぜか、様子がおかしい。目は虚ろで、身震いしている…。美咲はその場を離れようと、本を閉じ立ち上がると、その男と目が合ってしまった。すると、男は震える手で、隠し持っていた拳銃を取り出した―。
美咲は立ちすくみ、動けずにいた。そのとき、スッと目の前に男の人が現れた。―康之。
男は急に発狂し、大声をあげながら自分のこめかみに銃口をあてた。一瞬にして緊迫状態となる。しかし、背後にいた刑事がすばやく男の腕をつかんで、自殺を阻止しようとする。そのとき、
バンッ!
「キャーーー!」
銃声が鳴り響いて周囲は騒然となった。しかし、弾は地面に当たり、大事には至らずに済んだのだった…。
男は連行され、公園内も落ち着きを取り戻しつつあった。しかし、美咲は放心状態となっている。そんな美咲に、康之は優しく声をかけた。
「大丈夫か?」
美咲は、小さくうなずくだけだった。
「無事でよかった…。あいつは麻薬の常習者で、売人と接触する現場を取り押さえたくて泳がせてたんだ」
「…」
「美咲?」
美咲は身構えてしまい、康之にうまく気持ちを伝えられずにいた…。
「とにかく送るよ」
そう言うと、康之は美咲をクルマに乗せた。
「………私、何も思い出せなくて」
「仕方ないよ」
「だけど…」
「…そんな暗い顔するなよ」
康之が美咲の頭に手をやろうとすると、美咲はその手を振り払い、クルマから飛び出して走り去ってしまった―。




