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プロローグ

★プロローグ★


いやぁ。さすがに年齢的に厳しいんですかねぇ?」


「それは本人のヤル気次第じゃないかしら?ヤル気になればなんでも出来るって誰かも言ってたじゃない。」


「それは元気があればの間違いですよ・・」


ここは都内某ハローワーク。昔風に言えば職安である。そしてする事と言えば決まっている。



そう



仕事を探しているんです。



この昨今吹き荒れる不況の波に飲み込まれ、連日ハロワは大賑わいである。その例に漏れず、俺も毎週足しげく通っているわけでして・・・・


普通「顔なじみ」と言うのは結構喜ばしい事だが、ここでの顔なじみは少ない方がいい。顔なじみが多ければ多いほど悲しい時間が増えていくのはココくらいなものではないだろうか?

ともあれ、コーディネーターさんとは知った仲になり、色々とお仕事を紹介してもらうのだが、結果は「サクラチル」が殆どである。もっとも俺の年齢がすで大概なものである事が一番の原因かも知れない。


「でね。世田くん。前に履歴書見せてもらった時に経験のある職業の中から、ちょっとピックアップしてみたんだけど、これなんかいいんじゃない?」


「あれ?これって新しいやつですか?見たときは無かったような・・・・」


「ふふふ。ちょっと知り合いのところが求人出すって言うから、先行でいただいちゃったの。」


それは何かに抵触しないのだろうか?果てしなく不安である。ともあれ求人用紙に目を通すと、意外な事に待遇面や勤務地も全然問題が無いところは非常に興味をそそられる。


「うううむ・・。これはとてもいいですね。正直、すごい興味あります」


「でしょ?面接日程決めてみる?」


「でも年齢制限アリってありますけど?39才じゃ無理なんじゃないですか?」



「そんな求人を世田くんに見せると思う?逆よ逆。」


「逆?なんの事ですか?」



ー日報1ー



「こんにちわー。本日14時に面接のお約束をした世田と申しますが、面接担当の方いらっしゃいますか?」


「はーい!少々お待くださいねっ!」


ハキハキと応えたアルバイトらしき女の子の態度に好感が持てた。むむ・・・ここの接客の女の子はレベル高いな。俺の接客業反応メーターが上がった。どこの店に行ってもついつい接客のレベルを見てしまう。それが俺のヘンな癖その1である。にこやかな笑顔でハキハキした返答は、それだけでも他の悪い部分を隠す。


「こんにちわー!面接ですか?頑張ってくださいね!」


また違う子に声を掛けられた。おおう・・・。なんと出来た子ばかりの店なのだろうか。これはよっぽど気を引き締めてかからないと恥ずかしいぜ。正直、大田さんの知り合いって話だったからアレな感じかと思ったが・・。


「ではこちら事務所になりますね。すぐオーナー来ますのでちょっと待っててください!」


「恐れ入ります。」


「あ、あのっ!」


「はい?」


「この店、実は女の子しかいないから・・・男の人が入ってくれると心強いですっ!」


ああ、それでさっきの子もそんな意味合いで言ったのか・・。なるほどね。


「精一杯頑張りますよ。あとはオーナーさんに熱意が伝わればいいんですけどね。」


「あ、オーナーきました。それでは失礼しますね!」


その子は「ファイト」的なポーズをしてくれて去っていった。ふむふむ。そんな裏事情もあるのか。


「あー、待たせたね~。ごめんごめん。私がオーナー兼店長の・・・・ってあれ?谷次郎?」


「ん?あ・・・・お前、静流か!?」


二人同時に「えーーーー!」と叫び合ってしまった。何を隠そう、この静流こと荒川静流は小中学校と同じで親友だったのだ。どのように親しかったはまた話す機会でもあればという事で。


「久しぶりじゃんかー、ヤジ!中学卒業以来だねぇ!いやぁ、びっくりびっくり!」


「驚いたのはコッチだよ。まさか静流がオーナーとはねぇ。何重にもびっくりしたよ。」


「まぁ、色々あってね~。ソコソコ稼げてる程度のオーナーだよ。人がいないから、お決まりの店長オーナーって肩書きで、結構知れちゃう経営だろ?」


静流は肩をすくめて苦笑いをした。そんなところは昔から変わっていなくて、なんとなく時間が巻き戻ったような錯覚に陥った。


「で?ウチの店でやりたいんだっけ?エミリから連絡も来たけどね。」


「大田さんとはどこで知り合ったの?」


「短大でね~。同じ授業で仲良くなってそれ以来ずっとかな。いまでもしょっちゅう遊ぶ仲だよ。」


と、知らない間の事も色々話してひとしきりしたところで、静流は言い出した。


「じゃ明日からとかやる?ヤジが来てくれれば私としても安心できるよ。物覚えは悪いけど、責任感は人一倍だ。そんなヤジの来歴を知ってるからこそ即採用って事で」


あっけらかんと言いやがった!・・・いや、静流は昔から竹を割ったような性格だったし、決めたら人の話などお構いなしのヤツだって事は知ってた。変わらないなぁ。しかしそれでも即採用って。


「つか履歴書と経歴書くらい見ろよ!いいのか?そんなどんぶり勘定的なアレで!俺だってあれから変わってるかも知れないんだぞ?」


静流はタバコをに火を点けながら、かかかっと笑った。


「ヤジが?変わる?ほっほうー。それなら変わったトコロを見せてもらいたいもんだ。」


といってまたかかかっと笑った。・・・ぐうう。この女には昔からこんなやりとりでいつも騒動になっていたもんだ。しかも最終的にはやり込められてるってのがパターンだったよな。ここは、この俺のリベンジを受けさずにいられようか?否!


「じゃあ見せてやろうじゃんか!変わった俺を見て愕然とするなよ!」


「はい。じゃーけってーい!」


どこから持ち出したのかは知らんが、大判の「採用」と刻印されたゴム印が履歴書に押印された。うわ!安い挑発に簡単に乗ったバカな俺・・・・。静流は目を細めてくくくっとほくそ笑んだ。


こうして、俺のコンビニ人生は幕を明けた。なんか色々ありすぎ&急転直下過ぎて記憶も朧気なのだが、とにかく就職も決まった。肩書きは「店長補佐(見習い中)」である。

[chapter:章タイトル]

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