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カルマの過去

約2年前

某小学校 校庭


不動カルマは孤独だった。

両親が手がけている事業の関係で、何度も転校を繰り返したせいで、友達ができないどころか、

その事業のせいで両親が多忙であるため、両親ともろくに、会話さえできないからだ。

どうせ……親とも会話さえできないなら……いっそ1人ぼっちで居た方がいい。

そのせいでカルマは、いつの間にか自身の中でそう結論づけ、自分の殻に閉じこもってしまった。


しかし、それでも友人が欲しいと思った彼は、プログラミングを独学で覚え、

そして両親の事業で使っている技術の1部を使い、擬似人格プログラムを創り出した。

もしかすると神様も……1人が嫌だったから、人間を創ったのかな?

擬似人格プログラム『ミコガミ』を創る際、ふとカルマはそんな事を思った。

しかし、すぐにカルマはその哲学的仮説をどうでもいいと思い、頭の中から閉め出した。



それからカルマは、周りに誰も居ない時だけ、『ミコガミ』と一緒に居る事が多くなった。

今現在使っているヤツの前に使っていた、カルマの両親が設計した超小型のノートパソコンを通じて、だ。

周りに誰かが居る時に『ミコガミ』と喋っていては、学校の同級生に、

今以上に(ほとんど1人で居るため)気持ち悪がられるからだ。

だがそんな暗いカルマの日常に、なんの前触れも無く〝アイツ〟は現れた。


「うおっ!!? お前スゲーな!!」

校庭の片隅にある木の下で『ミコガミ』と喋っているカルマの上方から、突然驚きの声が聞こえた。

カルマは心臓が飛び出すのではと思う程ビックリし、そのせいでノートパソコンを

地面に落としそうになるが、なんとか両腕で抱え込むようにして死守。

すぐさま木のそばから離れ、声がした方向に目を向け――――



――――両脚を太い木の枝に引っ掛け、逆さまの状態でカルマを見つめる1人の少年が、そこに居た。



「スゲーなお前!! お前のそれアレだよな!!? え~~……っと……あんどろいど……だっけ?」

名称が思い出せず、逆さまの状態で両腕を組み、その少年は考え込んだ。

それを見てカルマは、どうリアクションを取ればいいのか分かりかねたが、とりあえず思った事を言った。

「アンドロイドは人型のロボットだよ。それで……僕のコレは擬似人格プログラムだよ」

「おおっ!! それだそれ!! ぎじじんか……なんだって?」

「……思い出せないならいいよ」



これが、カルマとハヤトの第1次接触ファースト・コンタクトだった。




……………なんでハヤトは、僕を気持ち悪いって思わないんだ?

いや、もしかして心の中じゃ……思ってたり……するのか?

最初の出会いから数日経ち、いつの間にか2人は一緒に登下校するくらいまで仲良く(?)なった。

しかし、それでもカルマはハヤトを心の底から信頼できなかった。

自分に、初めて親友(当て嵌まるかどうか分からないが)ができた事に、戸惑っているのだ。


しかし、今日は次の学校へと転校する4日前。

今ハヤトの事をいろいろ知っておかないと、一生、今考えている事の答えが出ない。

だからカルマは、まずハヤトを自分の家へと招待する事にした。

まずは、ハヤトに自分がどういうヤツなのかを、できる限り明かすためだ。

そうしないとハヤトも、自分にいろいろ明かしてくれないような気がしたから。


「うっわぁ……す……凄い……」

ハヤトはカルマの家を見て、唖然とした。

なにせカルマの家は、俗にいう〝高層マンション〟だったのだから。

「カルマ、お前……金持ちだったのか?」

「あ~~……うん。まぁ」

「すっげぇ……あっ! もしかして羊とか居るのか!?」

「さすがにそこまで金持ってないよ。っていうかハヤト、羊じゃなくて執事だよ」



数分後

不動家 玄関


「まぁ、上がってよ」

「お……お邪魔します」

ハヤトは、ガチガチに緊張していた。

カルマが住んでいる部屋は、自分の家とはまるで違っていたため。

ハヤトから見て、カルマの住んでいる部屋は……まるで別世界。

自分のような平民が入っていいのかさえ、迷ってしまう程だ。



カルマの部屋には、ベッドと勉強机とパソコン、そして大画面のTVに

TVゲームがしまってある本棚といろいろあり、玄関以上のインパクトがあった。

ハヤトは、思わずその場で唖然としてしまう。

「ま……まぁハヤト、ゲームでも……するか?」

「お……おう」



それから数時間、ハヤトはカルマと共に格闘系のTVゲームをした。

おかげでいつの間にかハヤトの緊張は解け、途中から本気でカルマとゲームで戦い……結局負けた。

「つ……強いなカルマ」

「いや、ハヤトの戦い方が無謀すぎるんだよ。HPが少ない状態で特攻仕掛けるなんてさ。

普通はHP温存しながら相手の隙を見つけ出して、ソレを突いて、ちょっとずつ相手のHPをだな――――」

「――――んな時間がかかる戦い方は苦手なんだよ」



それからハヤトとカルマは、他愛も無い会話を数十分に(わた)って続けた。

ちなみにカルマの両親は、仕事の関係で夜遅くに帰って来るので、

ハヤトはいつもより少し遅い時間まで、同級生の家に居る事ができた。

「……………ハヤト、1つ聞きたい事があるんだけど……さ」

突然カルマが、話題を変えた。

本当に突然の事だったので、ハヤトは一瞬戸惑ったが、すぐに先を促した。


するとカルマは、1回深呼吸をしてから、率直に、ハヤトに尋ねた。

「ハヤトは……どうして僕の友達になってくれたんだ?」

「んん? なに言って――――」

「――――お前以外はさ……僕の事、気持ち悪いだとか、根暗だとか言ってるの……知ってるだろ?」

「……まぁ……な」

ハヤトは右手の人差し指で右頬をかきながら、右斜め上に視線を向け、答えた。


「……それでさ……お前は僕の事……どう思ってるんだ?

別に他のヤツと同じ事を思ってるんなら、それはそれでいいんだ。

でもお前は……僕をちゃんと友達だと思っているのか?

まさか誰かとのなにかの賭けで、わざと僕の友達を演じて――――」

「――――んなワケあるか。バーカ」

「……………へ?」

ハヤトから出た、ハヤトのモノとは思えない台詞に、カルマは一瞬キョトンとした。


「確かに俺は、お前を昔根暗なヤツだな~~とかって思ってたよ。

でも今は違う。お前は凄いヤツだとも思っている。頭いいし、金持ちだし……

あっ! 別に金の関係で友達になろうって思ったんじゃないぞ!? 一応言っておくが」

とここでハヤトは1回深呼吸をして、再び話を再開した。

「それに根暗だからって、お前を避けていい理由にはならないだろうが」



「……………え?」



「っつーかクラスの皆が少しズレてると俺は思うんだよな。なんでそれだけでお前を避けるんだか。

まぁ根暗でも、人はこれからも変わる事ができるしさ。だからクラスの皆の言う事なんか気にすんな」

そう言いながらハヤトは、カルマの肩を、ポンッと優しく叩いた。すると、

「ん? えっ……ちょ……おいおいおい」

ハヤトは、カルマを見た瞬間ギョッとした。

なんとカルマの両目から、大量の涙が溢れ、流れ落ちていたのだから。


『それに根暗だからって、お前を避けていい理由にはならないだろうが』

『まぁ根暗でも、人はこれからも変わる事ができるしさ』

ハヤトの口から出た、それらの言葉で、どれだけ心が救われただろう?

カルマは、今まで抑えていたモノ全てを、無意識的に、涙として出していた。



「なぁハヤト、今度はお前の家に……明日くらいに遊びに行ってもいいか?」

ハヤトの家の門限が近くなったので、マンションのエントランスまで

ハヤトを送っている最中、カルマはハヤトに、おそるおそるそう尋ねてみた。

もうすぐ自分は引っ越してしまう。だからそれまでに、初めてできた友達の家にも遊びに行ってみたい。

そう思った……のだが、


「すまんカルマ。昨日アメリカに住んでるじいちゃんが死んだ……らしくて。

それで明日……学校休んで、母さんと父さんと一緒にアメリカに行くんだ」

「え?」

ハヤトのおじいさん……アメリカに住んでたの?

一瞬驚いたが、葬式なら仕方ないと思い、カルマはハヤトの家に行くのを諦め、

とりあえずハヤトを、マンションのエントランスまで送り、別れた。



そして次の日の午後――――カルマは、ハヤト達を乗せた飛行機が接触事故を起こし、墜落した事を知った。




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