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正体不明の植物

揺れと言っても、地震の震度に換算すると震度2に値する程の小さい揺れだ。

しかも、揺れがたった一瞬で終わった為、家具などが倒れたりする事は無かった。

「……今の……地震?」

揺れが治まると同時、かなえがハヤトとギンに、おそるおそる声をかける。

「いや、今のは地震やないやろ?」

「ああ。一瞬で揺れが治まる地震なんて聞いた事が無い」


確かにそうである。地震による揺れは一瞬では終わらない。

地震による揺れは、短くても数秒は続くハズである。

なのに今回の揺れは一瞬。明らかに普通の揺れではない。

「という事は……まさかと思うが……」

「いや、そのまさかやろ?」

謎の揺れに対しなにを思ったのか、ハヤトとギンは目配せをして、()()()()()()()()()


「ちょっと! なに2人で納得してるのよ!?」

するとそれを見たかなえは、慌てて2人に疑問を投げかけた。

なんだか自分だけ蚊帳の外のような気がしたのである。

それに対し、なんで分かんないかな、とハヤトは一瞬思ったが、

教えなければ話は始まらないので、やれやれと思いつつも、かなえに説明してあげた。


「一瞬だけ地面が揺れるなんて事態が起こる原因で、考えられるモノは2つある」

言いながらハヤトは、最初に右手の人差し指だけを立てた。

「1つは、近くに飛行機か宇宙船が墜落、もしくは不時着した場合」

次にハヤトは、中指も立てた。

「もう1つは――――」

だが説明しようとしたその瞬間、タイミングが良いのか悪いのか、相談所の電話が鳴った。


ハヤトがかなえに『失礼』とだけ言って、受話器を取り、耳に当てる。

すると電話の向こうから、相談所の〝民間協力者の1人〟であるカルマの声が聞こえてきた。

やはりと言うかなんと言うか、カルマも、ハヤトの力になりたかったのである。

『ハヤト! 空から物凄く小さい……隕石のようなモノが降って来て、商店街の真ん中に落ちたぞ!?』

「……分かった。すぐに商店街に行く」


カルマは今起きた事柄に対して慌てながらも、一つ一つ言葉を選んで、ハヤトに報告をした。

それを聞いてハヤトは、とりあえずカルマを落ち着かせるべく、あくまで冷静な声でカルマに返答する。

そしてハヤトは、そのまま受話器を耳に当てながら、かなえとギンの方に向き直り、

「どうやら、〝後者〟のようだ」

真剣な表情で、そう告げた。



午後17時41分

星川町 商店街の入り口


「皆! こっちだ!」

現場である商店街の入り口に、携帯用なのか、小さいノートパソコンを左腕に抱えたカルマが待っていた。

よく見ると肩で息をしている。おそらく現場から離れた場所から、急いで駆けつけたのだろう。

「カルマ! どうだ、現場の様子は!?」

カルマと合流すると同時、ハヤトがカルマに尋ねた。

するとカルマは、呼吸を整えながらハヤトの質問に答えた。

「今のところは……対象に変化は無い。だから普通の隕石かもしれないと……思ったんだけど……」


「なんだ?」

「とにかくこれを見てくれ!」

言うと同時にカルマは、左腕に抱えたノートパソコンを開き、ハヤト達に画面を見せた。

ノートパソコンの画面には、現場である商店街の中心にある、

ナニかが落ちた事によってできた、直径2m、深さは5mくらいはあろう穴の映像が映っている。

そしてその穴の最深部には、灰色の正体不明の物体。


「なんだこれ?」

「ヤジウマをかき分けて、なんとか設置した小型カメラによる

リアルタイム映像なんだけど……この物体、少し拡大するぞ?」

カルマはノートパソコンを操作し、謎の物体を拡大した。


するとその瞬間、3人は顔を引きつった。

「んな……バカな!?」

「宇宙から降ってきたんやろ!?」

「えっ!? ちょ……なにこれ!? 〝種〟!?」


落ちて来たのは、謎の植物の種だった。

なぜ種だと分かったのかというと、カルマが拡大した映像の中の種がすでに〝発芽〟していたから。

植物の種が宇宙から降って来るなど、普通はありえない事である。

宇宙には、紫外線や宇宙線などと呼ばれる有害な放射線が飛び交っている。

そんな宇宙空間の中を漂っていたにもかかわらず、その成長に支障が無く、

その上、大気摩擦で燃え尽きなかったとなると、この植物はかなり異常な存在だ。


「俺が来た時には、もうすでに発芽してた」

「ついさっき落ちたのに、もう発芽してるって事は……」

「この植物の成長は恐ろしい程早いっちゅう事やな」

「じゃあ早くなんとかしないと……ヤバイの?」


かなえは正直、植物の存在がどう問題になるのか分からなかった。

そんなかなえにハヤトは、ノートパソコンの画面に視線を向けつつ、説明をする。

「ヤバイどころじゃない。どんな植物の種なのかは分からないけど、

とにかく急いでなんとかしないと、この星の生態系が狂うかもしれない」



その後、かなえとカルマはヤジウマを追い払い、商店街の皆に状況を説明。

ハヤトとギンは、商店街で買った除草剤を穴の中の植物にかける作業を、それぞれ開始した。

「はぁ~~あ……もしかしたら、美味い果物か、金になる植物の種かもしれへんのになぁ~~」

除草剤をかけている最中、ギンが溜め息混じりに呟く。

するとハヤトは、除草剤のノズルを片手に持ちながら、もう片方の手でギンの頭に軽くチョップした。


「バカ言うな。どっちにしろ地球には在っちゃいけない植物だぞ?」

「ジョーダンや! ジョーダン!」

そう言いながらギンは、さっさと除草剤を撒き終えるべく、除草剤の出力を全開にした。

「まったく。異星人が落ちて来るんならともかく、とんでもないモンが落ちてきおったなぁ」

「異星人が落ちて来るのも問題だと思うが……そうだな。ったく、七夕だってのに……人騒がせな種だ」



午後18時3分


その後、ハヤトとギンは、かなえとカルマを家に帰し、植物の種の監視を続けた。

「このまま、なにも無ければええな」

商店街の人が、差し入れでくれた缶ジュースをハヤトに手渡しながら、ギンは言う。

ハヤトはギンから缶ジュースを受け取ると、真剣な眼差しで穴の底を眺めた。

「まったくだ。だけど、嫌な予感がしてならない」

「??」


「おそらくあの植物の種は、俺達の宇宙側の敵である『イルデガルド』が送り込んだモノだ。

俺達の所属する〝団体〟の計画を白紙にするために、な。だからこのままなにも無いハズが無い」

『イルデガルド』に対し怒りを覚え、ハヤトの、缶を持っている方の手に力が入る。

まだ未開封であるからか、缶が潰れる事は無かったものの、

このままでは本気で缶を潰しかねないと思い、ギンは慌てて声をかける。

「ま……まぁ、十中八九そうやろな。でも、こんだけ除草剤を撒けば、大丈夫やろ?」

「……そうだといいが」



数十分後


双眼鏡と懐中電灯を使って、ハヤト達は穴の内部を観察した。

見たところ、種の様子に変化は無い。それはつまり、種の成長が止まったという事である。

「これならもう芽が出る事も無いやろ? あとは種を回収して、この道の穴を埋めるだけや」

「……ああ。そうだな」

種に変化が無かったにもかかわらず、ハヤトはまだ心配そうな目で、種を見つめていた。

ハヤトはギン以上に、『イルデガルド』を警戒しているようだ。


「……まぁとにかく、中に入って種を回収しまひょ? それでしまいや」

心配性すぎるハヤトを見かね、そこまで心配する必要は無いとでも言いたげに、

商店街の人から借りた縄を近くの電柱に縛り付け、ギンは自ら進んで穴の中に入ろうとする。

だがその直後、まるで金縛りにでもあったかのように、ギンは足をピタリと止めた。

「?? ギン?」


「……ハヤト、前言撤回や」

「?? どういう事d……まさか!?」

ハヤトはギンの言葉から、なにやらとても嫌な予感を覚えた。

そして確認のために再び穴を覗き込み――――案の定、目を見開くほど驚愕した。

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