表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/110

帰ってきた仲間

6月18日(土) 午後17時40分


「え~~と……とりあえず……ギンが無事にアメリカから帰って来た事と、

『星川町宇宙クイズ大会』が無事に成功した事を祝して……乾杯!」

ハヤトの呼びかけに対し、その場に居る者達が『乾杯!』と答える。

「……で、ハヤト君。どうして俺の家でパーティーを?」

呼びかけの直後、亜貴が苦笑いをしながら、ハヤトに尋ねた。


ここは、亜貴達の家の居間。

タタミ8畳分の広さで、中央に木製のテーブルとイスが置かれ、

部屋の南側には、地球の放送だけではなく、地球外の放送も受信する薄型TVと、

それを見る為に置かれたソファがある、普通の居間。

だが今は、ハヤト主催のパーティー会場と化していた。


亜貴の問いに対し、ハヤトもまた苦笑いを浮かべながら、

「すみません亜貴さん。パーティーをやるからには、大人の監督が必要だと思って……」

今、亜貴の家には、家の住人である亜貴、ランス、エイミーを除いて4人の人間が居た。

ハヤト、かなえ、カルマ、そしてギンいう、ギャル男みたいな髪型をした〝美〟少年。

ちなみにルナーラは、明日からの仕事の為に、先程、自分の家がある星へと帰って行った。

「……いや……別に謝んなくても……その通りだし。まぁ、ランス達も喜んでるみたいだし……さ」


そう言って亜貴は、ランスとエイミーの方を見る。

視線の先で、ランスはカルマと、エイミーはかなえと、満面の笑みでなにか会話をしている。

「それに……」

次に亜貴は、テーブルの上に並べられたあるモノを見つめ、

「今回のパーティーで食べられるのは、優勝の賞品である〝霜降レオルト肉〟の焼肉だしな」



【レオルト】

それは、無人惑星『シャオローン』に生息する生物。

以前、星川町に侵入した異星獣・バスターウォルフの餌でもある雑食異星獣。

その霜降肉は、宇宙の料理界の『食肉値段ランキング』の上位にランクインする程の高級食肉。

ちなみに食感、味は豚肉に近い。



乾杯の前に、まずはギンの紹介をすべきだったかな、

と思いつつ、ハヤトは、自分の右隣に立つギンを紹介した。

「じゃあ……早速紹介するよ、皆。コイツは俺の、この町に来た時からの親友で、

【星川町揉め事相談所】の()()()()()()()、ギンこと――――」

「白鳥銀一や。お初やで、皆さん。ハヤトと同じように、ワイの事はギンとでも呼んでくれ」

ギンは陽気に、関西弁で皆に自己紹介をした。


するとかなえ、カルマ、亜貴の3人が、同時に目を丸くし、驚きの声を上げた。

「「「なっ!? 副所長!?」」」

今の今まで3人は、副所長などという人が、【星川町揉め事相談所】には存在しないモノだと思っていた。

机こそ、所員数人分は相談所に置いてあるものの、ハヤト以外の人間が居た痕跡が、なぜか一切無いのだ。

勿論、〝ハルカ〟という、謎の人物の形跡も。

だから3人がそう思っても、仕方がなかった。


「……俺の名前は不動カルマ。ハヤトの、小学校の時からの親友だ」

ギンの自己紹介に応えるように、最初にカルマが、ギンに自己紹介をした。

「カルマ君か。これからよろしゅ~な!」

カルマの自己紹介が終わると、今度は亜貴が、自分と、ランスとエイミーを紹介した。

「俺の名前は椎名亜貴。この子達の保護者をやってる」

そう言って、亜貴はランスとエイミーに目配せした。


するとランスとエイミーも、ギンに対し、簡単に自己紹介をした。

「はじめまして! 惑星アルガーノから来たランスです!」

「妹のエイミーです!」

「へぇ。そ~なんや……ってアルガーノ星人!? 亜貴はん大丈夫なん!? いろいろ!」


アルガーノ星人は宇宙一身体能力が高い民である。

なのでギンが心配するのも、ムリもなかった。

とそんな質問に対し、亜貴は笑って、

「ハハッ! もう慣れたよ。心配してくれてありがと、ギン君」

「そ……そか。ならよかったで」


そして最後に、かなえは自己紹介をする対象であるギンを、相変わらず睨みながら、

「……天宮かなえよ。よろしく」

「ふ~~ん。かなえちゃんか……まぁ――――」

自分が喋っている途中、ギンはなぜか、()()()かなえの背後に回り込んだ。


「「「「「!!?」」」」」

ハヤト以外の、その場に居た全員が、ギンの超スピードに目を見張る。

「!!? ヤバッ!!」

ハヤトは、ギンがなにをしようとしているのかすぐに気付き、

かなえの背後に居るギンを突き飛ばそうと動いた。


だが、一瞬遅かった。

「――――これからもよろしゅ~~な~~!!」

そう言うと同時、ギンは両手でかなえの()()()()()

「「「「「!!!!!!?」」」」」

その場に居る全員(ハヤト以外)が、また目を見張った。

「う~~ん……惜しい! 惜しいで!? ギリギリAカップや!」

かなえの胸を揉みながら、ギンはさも自分の事のように悔しがる。


「な……なにすんのよこの……セクハラ男!!!!」

かなえは顔を赤らめながら、後ろ向きでギンに頭突きをくらわせようとした。

だが、かなえの反撃を予想していたのか、ギンはすぐにかなえから離れ、頭突きを回避する。

「ナハハ~~! ワイはそう簡単にはやられへんで~~!?」

かなえの頭突きをかわして調子に乗っているのか、

ギンは笑いながら、かなえからさらに離れようとした。


だがその時、ギンの左側からハヤトが迫り、

「おいギン。いい加減所員へのセクハラ行為はやめろって言ったよな?」

まるで鬼のような形相で、ギンを睨み付ける。

するとギンは、メチャムチャ慌てながら、

「……いや、ほんの挨拶やで、ハヤト? スキンシップってヤツや? 分かるやろ? なっ!?」

ハヤトに言い訳を始めた。

「……な……なんなのコイツ……?」

かなえは、コロコロ変わるギンのキャラを見て、思わず呟いた。



午後18時35分


「いやぁ~~この町は相変わらずおもろいな、ハヤト?」

帰り道。ギンは隣を歩くハヤトに、満面の笑みを浮かべながら言った。

数ヶ月ぶりに、自分の住む町『星川町』に戻ってこられて、ギンは嬉しくてテンションが上がっているのだ。

「新しい住人も増えて! ()()()()仲間もできて! 帰って来て、ホンマよかったで」

「……そうか。よかった」

それを聞いてハヤトは、ホッとした表情でそう呟く。


「ん? どないしたん、ハヤト?」

なぜか気になったので、ギンはハヤトに尋ねる。

するとハヤトは、ニッと笑いながら、

「いろいろ変わってて、戸惑うかと思った」

「ナハハッ! 戸惑う言うたらアメリカに渡った時の方が戸惑ったで!?」


「へぇ? 戸惑ったって、例えば?」

興味津々な目で、ハヤトはギンに尋ねた。

「アメリカのハンバーガーショップで出る飲み物のMサイズって、

日本でいうLサイズ並みの大きさなんやで!!?」

「……………ギン、それ一般常識だぞ?」

「な……なにぃ!? そーなん!?」

それからしばらく、そんな他愛もない会話を、2人は続けた。



数分後


話のネタがほとんど尽きた頃、ギンはハヤトに、真剣な面持ちで尋ねた。

「……そういや、まだ〝ハルカ〟ちゃんは見つからへんのか?」

するとハヤトは、なにも言わず、首を縦に振った。

「そうか。まぁ、宇宙は広いんや。半径137億光年……やったかな?

とにかくメチャクチャ広いんや! まだ未確認の有人惑星があるかもしれへんし、元気出しぃやハヤト!」

「……ありがとう。でも大丈夫だ、ギン。俺はハルカが、この宇宙のどこかで

()()()()()()って、なんとなく感じるんだ。だから……大丈夫だ」


「……そっか」

フッと笑いながら、ギンはホッとした表情でハヤトを見つめ……ある事を思い出した。

「そういや、もうすぐ()()()()()()()()()()

「……ああ。そういえばそうだな。町の事で忙しくて、行く暇が全然無かったから、今まで忘れてた」

「えっ!? ウソやろ!? 今まで墓参り行ってなかったんか!?」

ギンは、目を丸くしてハヤトに尋ねた。


するとハヤトは、ギンから目を逸らし、

「ああ。まぁ……な」

「アカンでハヤト! 今度はちゃんと行くんやで!? ええな!?」

今度はギンが鬼のような表情をして、ハヤトに顔を近付け、言った。

「……ああ。分かってるよ。ってか顔近いって」

ハヤトは自分の顔の前で両手を広げ、(うっ)(とう)しそうな顔で言葉を返した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ