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アダプティッドチャイルドは荒野を目指す  作者: 白い黒猫
深まるごとに色移ろう秋
31/75

青春祭

 学校自体が進学校であるので、文化祭はそれなりに面白いものではあるものの、それはゆるい盛り上がりでしかない。文化祭に命をかけ寝食惜しんで、準備に全力をかけるという人も少ない。通常の生活にチョットだけ頑張って文化祭の準備をするというのが、この学校の丁度良い状態なのだ。各学年の催し物も、部活に参加していない生徒の中でクジがひかれ、文化祭実行員と補助員といったものになった人が、集まって喫茶店とかいったものをさせられるという状態である。帰宅部である薫は、今年見事に補助員のクジを引き当ててしまったようで、思いっきり渋い顔をしていた。そんな薫に『お前も今年、映画研究部に幽霊登録しときゃ逃げれたのにな。ま頑張って!』と冷やかされ、睨み付けていた。


 映画研究部もあえてチャレンジはせずに前回に倣った内容を踏襲していくような形で行うようだ。

 映画に纏わる展示物をして、視聴覚室で映画を一本上映するそれだけ。

 そして今、何を上映するかという問題で悩んでいる。皆困った顔で映画会社からもらった映画の一覧をジッとみている。

 いくらお金を取らないとはいえ、公共の場で映画を勝手に上映することは法律違反になる。なので、映画センターなどの会社から映画を上映権付きで借りてから行う必要があった。

「映画上映って、なかなか難しいんですね~しかもメジャーな映画は結構良いお値段……」

 月ちゃんがリストを見て溜息をつく。僕も分かっているもののそのリストをみて呆然としている。確かに三万円の映画もあるが、それは聞いた事もないようなタイトルで面白くもなさそうで、チョット名の知れた映画だとビックリするくらいの価格に跳ね上がる。しかも海外のモノは字幕使用権などよく分からない価格まで上乗せになってくるらしい。あと公開する人数によっても価格が変わってくる。マイナー映画で五十人以下という人数に絞るのがお安く借りるコツなようだ。ハッキリいって、何か実績をあげているわけでもない映画研究部に対して文化祭一日の為そんな予算を組まれているわけでもないし、たった一日の為にドカンとお金を使うよりも、その予算で通常の部活動を楽しく過ごせる事に予算を使ったほうが良いので、ここは出来る限り安く設定したいところである。まあ無理に映画を上映しなくて、喫茶とかする手もあるけれど、それはそれで今までやってきたことがないだけにノウハウもないし面倒くさいものがある。

「この会社、DVDだと三万円からとかいてあったから、リストみていたらそんな感じで」

 部長も苦笑しながら答える。

「予算からいって六万以下で選びたい。別に学校の人は誰も文化祭の映画なんて期待してないし」

 山本さんがそんな寂しい事を言ってくる。

「星野先輩は、どれがいいですか? その価格帯で」

 月ちゃんが、いきなり顔をあげそう話しかけてくる。僕は正直、昼休みの話が気になってそこまで真剣に会話に加わっていなかったので、ドキっとしてしまう。何故か清水は俺達をニヤニヤと見ている。清水も月ちゃんという後輩を結構気に入っているはずなのに、何故そこまでノンビリとしていられるのか?

「え! うーん」

「でも、折角上映するのに、面白くないものは嫌ですよね~私達も楽しみたいし」

 月ちゃんの言葉に、部長は苦笑する。気持ちは同じなのだが、安いの映画でどう面白くみせていけばいいのか。

「あっ、この辺りってどうですか?」

 月ちゃんが、意外にも、どちらかというと地味な時代劇を指さす。監督は有名であるものの、この映画の存在はあまり知られていない。

「いまさら時代劇、って人くるかな~」

 清水の言葉に、月ちゃんは何故か威張ったように頷く。

「だって、コレ夏にリメイクが公開されたばかりではないですか! 今風キャスティングでしたけど」

 確かに、人気男性アイドル主演で、此方とはかなり別モノになって公開された事で評判にはなっていたけれど、逆に過去作品ファンにはかなり不評だった作品である。

「今年の文化祭のテーマ温故知新には合っているのかもね」

 部長の言葉に、月ちゃんがヘラっと笑う。

「そうなんですよ! なので、あの映画の元になった作品というと興味もってもらえる方も多くないですか?」

 確かに、それだったら観たいと思う人もいるかもしれない。

「今回コレを上映して、展示物も様々なリメイクされた映画を中心に構成して紹介していけば、纏めやすいかな」

 僕がそう言うと、月ちゃんはコチラを観て顔を輝かせて笑い頷く。

「星野先輩、それいいですよ! 最高に面白そうです!」

 月ちゃんの、明るい肯定の声より、話しの流れは一気にリメイク映画をテーマにしていくことに決定する。最近は映画業界全体がリメイクブームになっていることで、ネタは豊富だし、誰もが入りやすい切り口で部の人もとっかかり易い。すぐに、どの映画を取り扱うかといった話し合いがされ、役割の分担も決まっていく。方向が決まったことで部の団結力も高まり一気に祭りムードへと突入することになった。なんだろうか? このいつもとチョット違う空気を纏わせる時間が僕をワクワクさせた。漠然と流れてしまう学校生活にちょっとした青春っぽい演出を入れてくれるのがこういうイベントで、僕もそういう空気に流され少し塞いでいた気分も上がってきた。


青春祭/SACRIFICED YOURTH

1985年 中国

監督・脚本:チャン・ヌアンシン

原作:チョウ・マンリン

キャスト:リー・フェンシュー

フェン・ユアンチェン

クォ・チァンクォ




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