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ポップコーン

 ディズニーランドではアトラクションを目当てにせず、まったりと世界を楽しむならともかく、要領よく遊ぶというのは、コツがいる。

 清水は、入場したらすぐに僕らの入場パスを回収し、人気のアトラクションのファストパスの予約を取りに走っていった。そして薫は限定の味のポップコーンをゲットすると別方向に走っていった為、僕と月ちゃんは二番目に楽しみたいアトラクションの行列に先に並んでおくことにした。


 僕らが並ぶことになったアトラクションは、開演と共に走ったものの、何故かもうかなりの行列だった。多少迷ったことも敗因かもしれない。 

「二人とも、ディズニーランドへの意気込みが違いますよね~」

 列に入ることでき、一息ついた月ちゃんは僕に話しかけてきた。とりあえず、清水と薫に無事並んだ事をメールしておく。

「だよね、あの行動力にチョット驚くよね。薫はともかく清水があんなにフットワーク軽いなんて」

 思い出したのか、月ちゃんがクスクス笑う。

「今日は天気も良いし、最強のメンバーでディズニーランド来れて、最高に楽しい一日になるの確定って感じですよね」

 僕はその言葉に笑いながら頷いてしまう。確かに一緒にいくにはコレ以上頼りがいのあるガイドはいなかったのかもしれない。

「そうだね、だから思いっきり楽しまないと」

 青い細かいストライプのタンクトップに、白い胸の広くあいた胸の所に錨のイラストの入った白い薄手のTシャツに、ショートパンツと今日はかなり開放的な格好である。

 長い髪って暑いものなのか、夏休みの月ちゃんは髪の毛をアップにしている事が多い。器用なもので毎回違った感じにまとめられている髪が面白い。今日は頭の上の方でお団子のような形でまとめている。薫に、『おっ今日は背伸びた?』とからかわれて怒っていたのを思い出す。

 僕の視線が変だったのか、不思議そうに月ちゃんが首をかしげ僕を見上げてくる。 

「いや月ちゃんの髪型いつも面白いよね。今日も雰囲気違ってて、なんか可愛いなと」

 月ちゃんはビックリしたように目を見開き、そして顔を赤くしてうつむく。言った後に、僕も自分が言った言葉に赤くなる。

「星野先輩に、そう言っていただいて嬉しいです」

 月ちゃんはすぐに顔を上げ、今日の日差しに負けないくらい明るい笑顔を僕に向けた

「それに、パンツって珍しいよね」

 とにかく話題を続けないと、ますます気恥ずかしくなりそうなので、僕は言葉を続ける。

「そりゃ~遊園地といったら、パンツの方がいいですから。ライドに乗ったり降りたりするときラクですから」

 なるほど、女の子は、そういう時も何気に面倒なんだと改めて気がつく。そして視線を下にすると、月ちゃんのスラリと伸びた白い足にドキっとする。どちらかというと健康的で行動的な格好なはずなのに、いつも以上に多くみえる足に動揺してしまうのは、僕がイケナイのだろうか?

「なるほどね~女の子っていろいろ考える事多くて大変だね」

 なるべく視線を下げないように月ちゃんの顔を見て返事をする。

「暑いからっていうのもあるのですが、夏はワンピースか、こういう格好の方が楽なんですよね」

 行列に並んでいる事もあり、いつも以上に近い距離で話すことになる。月ちゃんの髪から香ってくるシャンプーの匂い、距離が近い分、よく見える柔らかい頬や肌の質感。ほんのり赤い唇。そういった部分に月ちゃんが女の子だという事を僕に強く訴える。今まで、意識したことのな性というモノを彼女に意識してしまう。

 視線を思わず月ちゃんからそらし、ディズニーランド内の方に視線を流す。すると、薫の姿を見つける。その隣には清水もいる。二人は何故かニヤニヤしながらコチラをみている。

 月ちゃんも気づいて、二人に手をふる。二人はなんかイヤラシイ笑いをしながらコチラへと近づいてくる。

「ご苦労様でした」

「無事チケットとってきたよ! 十一時四十五分だから、コチラともう一個何かアトラクション楽しんでちょうどいいかもな」

 笑顔で迎える月ちゃんに、清水はそういってチケットをピラピラ見せる。

「お前ら、どうしてあそこで立ってたの? さっさと来れば良いのに」

 清水は薫と顔を見合わせ、肩をすくめる。

「いやココに来たときに、まず鈴木が目に入ったからまずソコで合流してただけ?」

 そして、『なぁ~』と頷きあう。

「それに、なんかココってギュウギュウで暑そうだから、もうしばらくあっちにいてもいいかなと」 

 『そうそう』と清水はニコニコと頷く。この二人が笑顔だけでテンポよくやりとりするというのがなんか気持ち悪い。

「ポップコーンゲットしてきたよ、食べる?」

 薫がニコニコとケースのふたを開け僕と月ちゃんに差し出す。

 今回の限定はサイダー味ならしく、開けると確かにサイダーっぽい香りがする。口にいれてみるとまだ出来たての為暖かいソレは確かに後味にサイダーの味がするのがまた不思議である。

「しかし、お前ってそういう限定味とかそこを狙いにいくって、意外だよね」

 清水のからかう声に薫が口をとがらせる。

「そんな事言うなら、お前に喰わせないぞ」

「ソレ旨いの?」

 清水が僕達にきいてくる。

「面白い味です。でも意外と悪くはないかもしれません」

「面白い味だね、でもなくはないかな」

 同時に言葉を発してしまった僕と月ちゃんに対して、二人が笑い出す。

「たしかに、面白い味だな、()()()()意味で」 

 一粒、口にいれた清水は、何とも意地の悪い顔でニヤリと笑う。


ポップコーン (POPCORN)

1991年 アメリカ 91分 

監督:マーク・ヘリアー

キャスト:ジル・ショーレン

トム・ビラード

ディー・ウォーレス・ストーン

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