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あの夏の子供たち

 去年の夏も、夏期講習などで薫と散々顔を合わせ、その帰り道に寄り道して買い物とかを楽しんだりとはしたものの、あまり二人で何処かに出かけ楽しむという事はしていなかった。時々映画を一緒に行くくらい。でも今年は、遊ぶという目的の為だけに、よく出かけることになった、僕と薫と月ちゃんの三人で。


 映画意外の予定は、薫と月ちゃんの会話で決まっていて、それに当然のようにメンバーとしてエントリーされていた。僕はそれに流されるままについていっている状態。

 僕らは映画や青春ドラマの主人公のように、無邪気その時間を楽しみ、純粋に友情で繋がった良い感じの三人だったと思う。 


 映画行ったり、花火大会に行ったり、動物園に行ったりと、この時は三人でいる事が楽しかったし。この二人とだったら、僕も自然に馬鹿な事も出来たし一緒にはしゃぐ事ができた。

「なんかディズニーランドって久しぶりだよな~春休み以来かな」

 ディズニーランドに向かう電車の中で清水が、しみじみとした口調でつぶやいた。

 ディズニーランドには、いつもの三人に加え清水も参加することになった。夏期講習の時、二人で話していたのを聞いた清水が参加を表明したのである。ディズニーランドとか遊園地は乗り物の関係で三人よりも四人の方が楽しめることもある。それに、清水はこのメンバーと唯一自然に合流できる人間だったこともあり、すんなりとこのイベントへの参加が決まった。

「春休みに来たなら、そんなにひさしぶりではないのでは? 僕なんて一年ぶりくらいだよ」

 意外な事に、清水が年に六回くらいきていて、一番ディズニーランドに詳しかった。次に薫が多く、デートとかで年に数回は来ていたようだ。電車の中でランドに入ってからの計画を綿密にたてる二人に、年に一回くらいしか行ってない僕と月ちゃんは二人に感心するばかりだった。

「なんか清水先輩とディズニーランドの組み合わせってなんか不思議ですよね」

 清水が「んっ」とつぶやき、眉をよせ月ちゃんを見る。たしかに、それは言えているかもしれない。細い狐のような目もあり神経質そうな感じで、モロにインドア派に見える。実際インドアな人間だし。

「どういうこと? 俺は若々しいディズニーランドが似合わないって事?」

「いえ、ああいうディズニーランドのノリを冷めた眼でみそうな感じで」

 月ちゃんの言葉に、清水は苦笑いする。薫はニヤニヤとその会話を聞いている。

「好きではないけど、ああいうノリ嫌いじゃないよ。まあ弟とか連れていくからそれで行っている所多いけれど。流石に俺はパレード見て一緒に躍らないし、ミッキー捕まえて記念撮影とかしないけどね~」 

 笑って聞いていた薫が最後の方で、不満そうに唇を突き出す。

「ディズニーランドの楽しみ方分かってないな~あそこでハジけて普段の鬱憤をはらすんだよ」

「俺は、普段から言いたい事いっているから、鬱憤なんてないし! 

しかしお前こそ、馬鹿騒ぎしている奴を冷めた目でみてすかしてる感じだぞ! それだけハジけたいほど何か溜め込んでるわけ?」

 清水は余計な事言って、また薫をムッとさせる。

「お前と違って、繊細なんでね」

 そのやりとりを、僕と月ちゃんはクスクス笑いながら聞いていた。

 ディズニーランド効果なのだろうか? ワクワクした気持ちが会話を険悪にすることがない。

 いつもすぐぶつかってしまう事が多い、薫と清水だけど、それだけ言い合えるということは、仲が良いというべきなのかもしれない。その証拠に喧嘩して、大抵一日やそこらで関係は修復する。逆に人とぶつかることができず喧嘩なんて出来ない僕には、二人がなんか羨ましい。

 そんな、他愛ない会話をしているうちに、舞浜に到着する。

 電車が止まり、僕ら四人は夢と魔法の王国に向かって走り出した。 


あの夏の子供たち (Le Pere de mes enfants)

2009年 フランス

監督・脚本:ミア・ハンセン=ラブ

キャスト:キアラ・カゼッリ

ルイ=ドー・ド・ランクザン

アリス・ド・ランクザン

アリス・ゴーティエ

マネル・ドリス

エリック・エルモスニーノ

サンドリーヌ・デュマ

ドミニク・フロ

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