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ふたりの男とひとりの女

「ねえねえ、月ちゃん、コレつけてみて」

 薫がニヤニヤしながら、アクセサリーコーナの前で月ちゃんを呼ぶ。手には花がついたカチューシャというのだったっけ? ヘアアクセサリーを持っている。チケットを無事とった僕達は、同じビルの店を覗きながらブラブラしていた。といっても殆どが女性向けのショップで僕には面白くない所だったが、何故か薫が一番ニコニコしてそういったショップに月ちゃんを連れて入っていき、楽しそうだ。

「えっ、ソレつけるんですか? 私にはチョット似合わないですよ」

「大丈夫! 大丈夫! 月ちゃん可愛いから似合うって」

 そう言いながら、月ちゃんの髪にカチューシャを嵌める。確かに可愛いけれど、花が並んでいてかなり乙女チックなデザインで今日の洋服には似合ってないような気がした。

「可愛い~やっぱいいな~女の子は」

 完全に月ちゃんを使って色々なアクセサリーとか帽子を試し遊んでいる薫。月ちゃんは戸惑い、チラっと僕に助けを求めるようにみる。

「あのさ、薫。月ちゃん困ってるよ」

「え、ヒデも面白くない? 女の子がいる時しか、こういう店入れないだろ?」

 そもそも、ブティックとかに入りたいとも思った事がないので、同意できず首を傾げてしまう。薫ってデートとかする時、いつもこんな事をしているのだろうか?

「薫先輩って、デートの時とか女性と出かけるときっていつもそんな感じなんですか?」

 月ちゃんも同じ事思ったようだ。薫はウーンとチョット困った顔をする。

「最初そうしたら、思いっきりひかれたから、それ以後はやってない。けどこういう店でブラブラするのは好きなんだ。だから今日は付き合ってよ!」

 月ちゃんはブブっと笑い頷く。

「分かりました! お付き合いしますよ! 楽しいですし」

「ありがと~やっぱ月ちゃん最高!」

 月ちゃんの言葉に薫は顔をパッと輝かせる。そして月ちゃんを抱きしめる。薫は元々スキンシップが激しくて、僕も最初戸惑うことはあった。でも異性である月ちゃんは戸惑うというレベルではなくビックリして身体を強張らせている。すぐ離れて、気になる洋服がそちらにあったのか、そちらへ行ってしまう。

「薫先輩って、いつもあんな感じなんですか」

 月ちゃんは動揺した様子でそっと、僕に声をかけてくる。僕は首を傾げるしかない。正直言うとここまではしゃいでいる薫って見たことがない。

「うーん。夏だから?」

「じゃあさ、このワンピース着てみて~」

 薫はハンガーをもって、コチラに手をふってくる。

 レースをいっぱいにつかったかなり女の子らしいその洋服に、月ちゃんも目を丸くする。お嬢様っぽい雰囲気だ。

「完全に、私おもちゃにされていますね……」

 月ちゃんの言葉に、思わず笑ってしまった。

「でも、ああいう洋服きている月ちゃんも面白いかも」

「星野先輩までも、完全に楽しんでいます?」

 月ちゃんは、大袈裟に溜息をつくふりをして、『分かりました! 着てきますよ!』そう言って離れていく。

 正直、今日薫も来てくれて良かったと僕は心底思っていた。それだけ三人での時間は楽しかったし。二人の思わぬ部分や姿を見られたことも面白かった。

「かわいい~すごくラインも綺麗だし」

「可愛いけれど。月ちゃんにはチョット違う気も」

「そりゃそうですよ~! こんなフリフリした洋服、似合うわけないですよ」

「いやいや、この帽子もつけてみて……ホラピッタリ」

「コーディネート的にはバッチリかもしれませんが、私には着こなせません!」

 考えてみたら、男二人と女の子一人の三人組がこういったお店に入って、盛り上がっているオカシナ遊びだったかもしれない。店員さんも三人がどういう関係なのかも悩んでいたようだ。


 お昼はファーストフードで簡単に食べることにした。思いの他、ウィンドウショッピングに時間をとられたこともある……。結局、散々楽しんだものの、買い物はしなかった。

「あの~もしかして、薫先輩って」

 上機嫌でポテトを摘んでいた薫は、『ん?』と月ちゃんをみる。

「ディズニーランドで、キャラクターのカチューシャ付けて楽しんだりする方なんですか?」

 薫は『ウーン』と首を傾げる。そして俺をチラリとみる。

「いや、たしかジッと見ていたけど、買ってはいないよ」

 俺は去年の秋、遊びにいった時の事を思い出しながら、答える。

「やりたいんだけど、コイツとかノリ悪いでしょ? だとやりにくくて、一人であの格好すると虚しいし」

 そんな事したがっていたとは知らなかった。俺の所為なのか? 僕は心の中で突っ込む。

「逆に、お二人が、キャラクターの帽子やカチューシャつけて、はしゃいでいる姿見てみたいような気もします」

 月ちゃんはクスクスと嬉しそうに笑いながらとんでもない事を言ってくる。僕はああいう格好は恥ずかしくて出来ない。でも薫の目がキラリと光る。

「そう?! なら三人で行って、思いっきりハジケない?」

「いいですね!」

 ディズニーランド三人で行くのはすごく楽しそうだけど、なんかこの流れだと三人で恥ずかしい格好で歩くことになりそうで、僕は顔を引き攣らせる。

 二人で盛り上がり、気が付いたときには日程まで決定していた。

「楽しみですね!」

 僕の方を見て、嬉しそうに笑う月ちゃんに僕は曖昧な笑みを返すことしかできない。

 薫はそんな僕らを、何故かやけに嬉しそうにニヤニヤみていた。

 映画がもうすぐ始まる時間なので、僕らは劇場に向かうことにした。僕だけがなんとも複雑な気持ちを抱えたまま。三人でディズニーランドいくのは楽しみなのは本当だけど、自分のテンポではない世界に嫌をなしに引き込まれることに戸惑いを覚えていた。


ふたりの男とひとりの女

ME,MYSELF & IRENE

2000年 アメリカ

製作・監督・脚本:ボビー・ファレリー

ピーター・ファレリー

キャスト:ジム・キャリー

レニー・ゼルウィガー

アンソニー・アンダーソン


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