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恋愛の法則

 今日は一時間目から体育があるというなんともハードな日である。朝から運動というのも面倒なのだが、夏は身体がますますベタベタした感じになりなんとも不快である。


 体調がイマイチだったという薫にとっては、余計に辛かったのだろう。体育が終わった段階で、気分が悪いと、薫はまた保健室に行ってしまった。

「アイツって、体力ないよな。なんか体育のある日に体調くずしてないか?」

 清水は、三時間目の休みに主のいない薫の机をみてそうつぶやく。たしかにそうかもしれない。最近体育の時間前後に、彼は保健室のお世話になることが多い気がする。

「胃腸が弱いとかいっていたかな」

 僕のそんな言葉に、清水は『ふーん』とつぶやく

「気侭に見えて、ストレスとか溜めてるのかもな~。そうそう、こんど月ちゃんと映画行く日ちゃんと決めたか?」

 清水はニヤニヤして聞いてくる。

「ん? まだだけど、近いうちに三人の予定を照らし合わせて決めようかなと」

 清水は『あれ?』って顔をする。

「三人って? もう一人誰?」

「ああ、薫も行く事になって。なんか二人っきりというのも恥ずかしいし」

 僕の言葉に何故か清水は、『アチャー』と頭を抱える。

「お前、馬鹿だろ!」

 大きい溜息を大袈裟についた後に清水がそんな言葉を僕に投げかけてくる。清水が呆れている意味が分からない。

「なんでだよ!」

「そういう事だったら、俺を頼れよ! よりにもよって鈴木みたいなヤツを呼ぶか?」

 頼ったのに、断ってきたのは清水ではないかと思う。

「女の子をデートに誘い、やっちゃマズイって事知ってる? 明かに相手が目移りするようなイケメンつれていくこと!」

 清水があの時、逆に気を遣って断ってきたというのはよく分かったけれど。やはり人からデートに誘ったというふうにとられていたことに恥ずかしくなる。

「いや、デートじゃないし、二人っきりだと彼女が気を遣うかなと思って、顔見知りの薫も誘ったんだ」

「なんで、鈴木と月ちゃんが、知り合いなの?」

 僕は、清水が休んでいた時の学食での事や、保健室での出来事を聞かせると清水は何故か難しい顔をする。

「いろんな意味で、マズイよ、それ」

 この時は、清水が言っている意味がまったく分かってなかった。

「何がマズイの?」

 後ろから声がする。振り向くと顔色がよくなった薫がニヤニヤ笑っている。清水はギョッとした様子で薫の顔を見返す。

「いや、別に、戻って来たんだ! 身体大丈夫か?」

「ん! 寝てすっかり治った」

 薫はニカッ笑った。

「良かった」

 僕も元気そうな薫の姿をみて、ひとまず安心する。

「ところで、何の話していたの?」

 人の悪い顔で僕らの顔を交互に薫は見つめてくる。

「いや、そろそろ彼女とか欲しいな~とかいう話?」

 清水はそんな事を言って誤魔化す。なんか違う気もするけど頷いておいた。

「ふーん、清水好きなヤツいるんだ」

 薫の言葉に清水はむくれたような顔をする。

「いや、好きなヤツが欲しいんじゃなくて、彼女が欲しいの」

 薫は意味分からないという感じで首を傾げる。

「好きなヤツがいるから、恋人になりたいと思うものなのでは?」

 清水はムッとした感じで薫を睨み付ける。

「お前みたいに、向こうから自然に寄ってくるなら、そういう事も出来るけど、俺達のような場合は、付き合えそうな人を彼女にするものなの!」

「俺たちって……」

 ついもらした僕の言葉に、清水はますますむくれ、薫は笑い出す。

「まっ、頑張って!」

 意地の悪い薫の笑みに、清水は頬を膨らませる。そんな二人を見ていて、ふと思い浮かんだ事を深く考えることもしないで口にしていた。

「ちなみに薫って、いつもどうやって恋愛スタートさせるの?」

 その言葉で清水のふくれ面が消えその瞳が好奇心で光る。そして逆に薫の表情がさっと曇る。その薫の表情にマズイこと聞いてしまった事に気がつく。薫って時々、ふとした会話の最中にこういった反応を示してくる。そうなると、それ以上踏み込んではいけない時。

「………………どうでもいいだろ、そんなの……」

 薫はプイっと顔を背け、離れようようとする。僕は明かに拒絶した態度に呼び止めるのを止めたが、清水はニヤニヤとした笑顔を取り戻し、薫を詰め寄る。

「そういうなよ! モテモテの男の女の落とし方是非聞かせろよ!」

 薫はその言葉に、酷く傷付いた顔になる。

「別に何も」

「そんなの、自然になんとなくって感じだろ? そういえば、薫、今日のノートコピーいる?……」

 僕は二人の話題を止めようと、とりあえず纏めて別の話題をふろうと思いそんな言葉を言ってみた。でもその言葉に薫は不快そうに顔を歪め、キッと僕を何故か睨み付けてくる。

「青春に浮かれて脳天気なヤツはいいよな」

 そして、僕を押しのけて席の方に行ってしまった。追いかけようとしたが、まだチャイムもなってないのに先生が入ってきて気まずさを残したまま皆それぞれの席に戻ることになってしまった。

 その時間、まったく授業が頭に入らなかった。一見真面目に授業を受けているように見える薫の後ろ姿を見続けてしまう。何故あんなに薫が怒ったのがまったく分からない。

 そういえば恋愛系の話題を極力避けたがる。彼女がいた時すらも、恋愛の話ってしたがらない。他のクラスメイトはのろけてみせたり、彼女がいるという事を威張ってみせたりするものだけど、薫は清水があの調子で話を聞こうとしても、困ったような顔をして黙り込むか、不機嫌になる。


 まだ恋愛というものをしたことないけれど、恋って楽しいものであろうと僕は思う。でも薫は照れとかでなくそういった話題を嫌がる意味が僕には分からなかった。

 昼休み声をかけようかと思ったけれど、薫は弁当の入ったサイドバックをもってそのまま何処かに行ってしまった。

「あら、薫ってまだむくれているのかよ」

 清水はその様子を見送りながら、困ったようつぶやく。

「ああなると薫って、どうしようもなくなるからな」

 時間をおくと元通りになるものの、しばらくは『触ると危険』状態となる。

『大丈夫? 何処で食べる?』

 一応、メールを打っておく。

「まあ、放課後あたりには、何でもなかったかのように接してくるから、二人で喰うか」

 僕は溜息をつきながら机を動かし、弁当を食べる用意していると、携帯が震える。

『悪い、一人で食べる、頭冷やす』

 僕はそのメールに清水に見せる。清水はヤレヤレと肩をすくめる。


恋愛の法則

BODIES,REST & MOTION

1993年 アメリカ映画

監督:マイケル・ステインバーグ

キャスト:ブリジット・フォンダ

フィービー・ケイツ

ティム・ロス

エリック・ストルツ

アリシア・ウィット

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