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ロスト・イン・トランスレーション

 同じようにテスト明けの高校生が多いのか、映画館は制服姿の人で賑わっていた。

 その時の流れで井上、山本さん、月ちゃん、僕、清水の並びで座ることになった。月ちゃんはパンフレットを早速出し嬉しそうに眺めている。

「それにしても、吹き替えしか無いのは残念でしたよね」

 月ちゃんは不満そうに、山本さんにそう話かける。 

「まあね、昼の時間は特に吹き替え中心になるからね。月ちゃんは字幕派なんだ」

 月ちゃんは力強く頷いた。

「断然、字幕ですよ! 先輩は違うんですか?」

「まあ、アニメの場合は拘らないかな?」

 そして隣の井上の方を見る。

「俺は、吹き替え派かな? だって画面に集中できるから」

 月ちゃんはビックリした顔をする。

「え! そうなんですか? だって台詞も演技の一部だからやはりオリジナルで楽しみたくないですか?」

「そうだよね。あと、話題作りだけのキャスティングで酷いのもあるからね」

 僕も字幕派なので、会話に加わってしまう。

「ですよね、時にはその演技が最悪で、作品を台無しにしているとありますものね」

「ま、今日はディズニー作品だから、そういう意味では心配はないかもね。オリジナルに近い人という選ばれ方しているから」

 月ちゃんは、それでも納得いってない顔をする。

「月ちゃん、ということは英語得意なの?」

 清水がニヤニヤと僕越しで月ちゃんに質問してくる。

「ぜんぜん! 日本人ですから! ところで、清水先輩は、字幕派なんですか?」

 月ちゃんは、キッパリと威張るように言う。

「どちらかというと字幕派だけど、吹き替えも広川太一郎と、時たま伝説呼ぶようなのも出てくるからな~。それはそれで捨てがたい」

 確かに刑事コロンボの声の小池朝夫のように、寧ろ俳優本人の声よりもそちらのほうがシックリしてしまう、そんな吹き替えが誕生するというのも、映画の面白さの一つである。

「たしかに、テレビで観ているせいか、マイケル・ホイの声って広川さんでしかないですものね」

 清水は月ちゃんの声に頷いた後、何か思いついたのか、皮肉っぽい笑みを浮かべる

「Mrビーンの広川太一郎は、コレは無茶だろ! というレベルだったけどね」

 俺は思わず、その言葉にビックリしてしまう。ローワン・アトキンソン演じるMrビーンって、殆ど台詞らしいもの無いはず。

「え? ローワン・アトキンソンって広川太一郎だっけ?」

 清水がよくぞ聞いて聞いてくれたと、嬉しそうに笑う。

「なんだよ! 映画版やDVDではそうなんだよ、BDだと江原正士なんだけどね」

「え、ビーンって殆ど喋るところないですよね?」

 月ちゃんが首を傾け、僕の後ろ横にいる清水をみる。

「それがね、口開いてようが、開いてなかろうがしゃべりまくるんだ」

 その言葉にみんな、驚きながらも、それはそれで声優の広川さんらしくて笑ってしまう。

「俺持っているけど、観る?」

 月ちゃんが、ヘラっと笑って、両手を合わせておねだりポーズをする。

「観たいです! 貸して下さい!」

「僕もそれ観たいな、次貸して」

「オッケー」


 山本さんは、そのやり取りをみて笑っていたが、ふと真顔になり月ちゃんに話しかける。

「月ちゃんそんなに、吹き替えが好きなら、好きな映画のDVDを買うといいよ。最初は字幕で見て。そのあとは字幕なし、もしくは英語字幕で楽しめば、かなりの英語の勉強になるよ。特にディズニー作品とかは文章も綺麗だしそういう意味ではいいかもしれない」

 流石、受験を前にしている山本さんの言葉は違う。そこにいた皆がその言葉にチョット感動し山本さんの顔を尊敬の目で見てしまった。そんな話をしている間に上映時間が来たようだ。予告編が始まり皆は映画に集中することにする。


Lost in Translation 

2003年アメリカ映画

監督・脚本:ソフィア・コッポラ

キャスト:ビル・マーレイ

スカーレット・ヨハンソン


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