死点葬環
死点葬環
「なんでいっつも追い出すの母さん、私が何か悪いことしたの?」
鍵のかかっている扉をどれだけ叩いても開かないことぐらい理解出来ているというのに、私を叩き続けた。
扉の向こうにもこっち側にも母さんは二人おりどちらに向かっても叩き叩かれる。
「嫌だ……嫌だよ」
そうやって泣き喚いている間は、やはり私は子供なんだと思い知らされてしまう。
「母さん、開けてよ」
疲れた頃にはいつもの声が耳に入ってきた。
「おいで、おいで」
我が家の屋外にはそんな風に私を呼ぶ子が沢山いる中で特に印象に残っているのがこの子だ。
見た目は左腕が折れ曲がり肉が裂け骨が見えている。
特に印象に残っているのは全身の皮膚が溶け落ち右眼が空洞になっている。
結構グロテスクな見た目なのだ。
ついていけばどうなるかぐらい理解出来ていても寂しさには勝てなかった。
「良い子、良い子」
ついて行った先に待っていたのは天国だった。
「優良、優良」
最初こそ意味は分からなかったが、暮らしているうちに理解出来た。
私の身体が優良物件ってことね。
家から追い出されてもみんなが集まってくれるから私はずっと一人じゃなかった。
その理由が私のことが狙いやすく喰らいやすいからなのだとしたら…………案外そういう身体に産まれて良かったのかも知れない。
もし狙われない身体だったら私は家の外で一人寂しく死んでいた。
そして朝昼晩の三食をとらせてもらえ、誰も私を追い出さない。
もう二度と飢えを凌ぐために自分を食べなくて済む。
誰も私を……私を傷つけない。
「こんな幸福な場所が存在してもいいのだろうか!」
思わずスキップしてしまうほど喜びに満ちている私は台風の影響で普段と様子を変え輝く夕焼け走るような心地よさを感じている。
そんな比喩が飛び出るほど愉快な心持ちなのだ。
だからこそあの子たちについて行った意味を持てた。
「ねえみんな……私に手を貸して」
みんなこの世に怨みや未練を抱えたまま死んでいる。
私の身体はみんなが住むにはちょうどいい優良物件なのだと教えてくれた。
ならばその身体を利用してみんなと一緒に永遠に復讐の旅をしようじゃないか!
私を傷つけた奴らだけじゃなく、その家族も鏖だ。
魂の共鳴により高められた音楽は新たな共鳴を生み出すのだ。
奴らの絶望の末に奏でる慟哭ほど心地の良い音楽はない。
今すぐ指揮者として奏でてあげたいのだよ!!
水面へ刹那に写った私の表情は狂気を孕んでいると視覚的にも判断出来るほどだった。
「賛成、賛成」
この連呼の子は積極的に関わってくれるのに名前を知らないのは、関係値的に好ましくない。
「君の名前ってなんていうの?」
「知らない、知らない」
知らない又は覚えていないのどちらかだろうけど、よく連呼してるからこれにしようかな。
「それなら君は今日から蓮子ね」
「感謝、感謝」
これが私の踏み出した復讐の一歩目であり、協奏曲の始まりなのだ。
見つけて読んでいただきありがとうございます!!
少女と霊の話を書きたくなったので書きました
少しだけ昔の体験も入れました




