表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/12

静かな夜と、家族の祈り

 神殿での「最悪の儀式」を終え、馬車に揺られてベルトラン伯爵邸に帰り着いたとき、私の心はもうボロボロだった。


(……呪いだ、なんて)


 耳の奥で、アルフレッド閣下の冷たい声が何度もリフレインする。

 運命の番。神様が定めた、世界でたった一人の半身。

 それなのに、彼にとって私は「不運な呪い」でしかなかった。


「お嬢様、おかえりなさいませ。……お顔色が優れませんね」


 老執事のセバスが心配そうに声をかけてくれるけれど、私は力なく微笑むことしかできない。


「ただいま、セバス。少し……疲れちゃっただけよ」


 ふらふらと自室へ向かおうとした時、リビングの扉が勢いよく開いた。


「リリア! おかえり!」

「お姉様、大丈夫!? 変な男に絡まれなかった!?」


 飛び出してきたのは、父様と妹のフィオナだった。

 父様は私の肩をがっしりと掴んで、上下左右から怪我がないか確認し、フィオナは私の手を握りしめて、今にも泣き出しそうな顔をしている。


「……父様、フィオナ。ただいま。……あの、結果は、聞いた?」


 私が消え入りそうな声で尋ねると、二人の表情が一瞬だけ曇った。

 でも、すぐに父様は、私の頭を大きな手で優しく撫でてくれた。


「ああ、聞いたよ。アスラン公爵閣下が番だったそうだな。……あの方は、確かに帝国最強の騎士だが、少しばかり気難しくて有名だ。リリア、お前が無理をすることはないんだぞ」

「そうだよ、お姉様! もしあいつが少しでもお姉様に冷たくしたら、私が聖女の魔力で丸焼きにしてあげるから!」

「フィオナ、物騒なこと言わないの……」


 私は苦笑いした。

 二人は、私が「無能」と呼ばれていることを誰よりも悲しんでくれている。

 世間がどれだけ私を「ハズレ」だと言っても、この家だけは私の味方だ。

 でも、だからこそ。

 家族の優しさが、今の私には少しだけ痛かった。


(……ごめんなさい。期待に応えられなくて。こんなに愛してくれる家族がいるのに、私は『番』にすら愛されない、不完全な聖女で……)


 その夜。

 私は自室のベッドで、鎖骨に刻まれた「銀の紋章」をそっと指でなぞった。

 本来なら、番と出会えば魔力は安定し、幸福感に包まれるはずなのに。

 触れた場所からは、彼が放った「拒絶の冷たさ」だけが伝わってくる気がした。


「……愛なんて、期待しない」


 自分に言い聞かせるように呟いて、私は枕に顔を埋めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ