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第37話 竜の吐息

「シコル! 彼女は悪くないの!」

 それはギンガの悲痛な叫びで始まった。

 ここは7thパレスの最深部。

 なぜこんなことになったのかを俺は思い出していた。


ーーー


 俺達は072の北にある7thパレスに来た。

 どうもギンガがここに居るらしい。

 ギンガの不在で特に心配もしてなかったのだが、思った以上に根が深い様だ。


 今わかっているのは、

 ギンガは自身の意思でここに来た事。

 色々な引継ぎも済ませて誰も連れてこなかった事。

 そして俺達に別れを告げる手紙。

 

 ・・・んでなんで魔物の拠点の7thパレスなんだよ。


 俺達は7thパレスを攻略する。

 勇者と聖母とギルドフォネティック。いつものダンジョン組だ。ゼロスは072に残っている。

 だが今回は楽だ。

 勇者アレスの剣は敵を薙ぎ払い、聖母の俺はヒーラー兼ソルジャー、それに聖母のストレージにはMP回復系が揃っている。神々との戦いでは長期戦で必要になるのだろう。このダンジョンではオーバーパワーだ。

 7thパレスはその名の通り、荘厳な白を基調とした巨大柱の多いダンジョンだ。まさしくパレス。そこにいつものファンタジー魔物の亜種のような連中が屯している。

 ここはそもそもゴッドゴーギャンの定期砲撃を受けて敵はそれほど多くない。

 なにより広くて視界が確保できているのが大きい。地下ダンジョンと比べて銃火器のソルジャーの活躍の機会も多い。

 

「やっぱ勇者は強ぇな」

 この世界の勇者はヒーラーの上位種。回復は勿論、敵を止めるバリアー、自身の周りに円周の守りを張るドーム、ドームが追従して移動でき敵を吹き飛ばすサンクチュアリ。敵味方の障害物になるウォール。その上位種キャッスル。

 この辺と絡めて剣から光波が出る事で短距離ながら障壁越しに遠距離攻撃もできる。

 タンク兼ヒーラーにそこそこ短距離DPS。利便性は俺達中距離DPSのソルジャーに劣るが、安定性が比じゃない。

「シコルさんの聖母も良い感じじゃないですか」

 アレスの言う通り聖母は先のヒーラーに加えて銃器だ。弱いわけがない。それに加えて貴重なMP回復系がある。

 だがやはり攻撃面でソルジャーは即効性に劣る。敵の殲滅力が足りない。

 短時間で敵を片付ける力が低いな。銃は屋外では最強だが室内では敵の数が減らせない。アレスの光波の方が有効だ。そのぶん数で並んで火力は出せる。

 俺の後ろのギルドフォネティックの援護は有効だが、この陣形が維持できればの話だ。

「浮かねぇな聖母様。何か不満か?」

 そんな俺にフォネティックのギルドマスター黒光りするゴルフが声をかけてくる。

「屋内戦の銃だな。この殲滅力じゃ引き撃ちは出来ても押し返す事が出来ねぇ。ドームやバリヤーで止められるがいつか火力が頭打ちだな」

「こいつでか? ストッピングパワーはあってもノックバックはねぇだろうな。爆発物は自爆しちまう」

 ゴルフは自身のライフルを俺に振って見せる。

 その通りだ。敵が銃を持った人間であれば押し返せるが、ここの敵は全て近接系だ。それもタフな魔物。楽勝のように見えるのは陣形が維持できているからだ。窮地に陥った時に巻き返す手段がソルジャーにねぇ。

「だよな。貫通すれば敵が止まらねぇ。衝撃力を高めれば威力が落ちる。付与だけじゃなくて構造的な強化が必要になるかもな」

「銀の弾丸とかか?」

「そういう系統だな。鉛球が効いている間はいいけどよ。それこそ銀の弾丸しか効かねぇ狼男が出てきたら悲惨だぜ」

「だったら炎の弾丸付与か? 雷、氷、も出来るが出来ても威力は鉛球のおまけ程度だろうよ。シコルよ。それは俺達ソルジャーの領分を超えてねぇか? ジョブ外の事までカバーしようってのは無理があるぜ」

「・・・だな。一朝一夕で出来れば誰かが作ってるだろうしな。火薬と鉛球、威力ならレーザー、可能性はENか」

「おいおいサイボーグを広めるなよ。あれで帰って来ない奴が居るからな」

「悪ぃ。確かにあれはソルジャーの分類じゃねぇな」

 と言ったものの。サイボーグ系がソルジャーのストレージにあるという事は俺と同じように火力不足を嘆いた奴が居たんだろうな。


ーーー


 ほどなくして俺達は最深部に辿り着いた。

 デカイホールに王座に囚われのギンガ。

 玉座に座っているのは俺だ。俺の似姿だ。

 首輪をつけられたギンガは何かに繋がれている。


「シコル! 彼女は悪くないの!」

 ギンガの悲痛な叫び声。

「なぜ、君がここに・・・」

 アレスの驚いた声が聞こえる。

「レディ・・・」

 ゴルフの驚いた声が聞こえる。


「もう偽物確定じゃねぇか!!!」

 俺の怒号が轟く。


 そういや聖母のストレージにも状態異常回復系がなかったな。

 使徒は状態異常にならないのか、それとも状態異常が存在しないのか、はたまた状態異常は固有スキルみたいなもんで魔法関連では対処不可能という事か。

 まあどれでもいいか。

 俺の目にはシコル・ギウスが写っている。俺の姿でギンガを穢すんじゃねぇよ。


 俺は右腕のサイボーグ。多連装ホーミングレーザーの猟犬芋虫を呼び出す。

 そしてその進化系、左右のレーザー発振器を挟み込むカバーの開放を行う。

 バシュッと音がしてカバーが上下にズレ、正面の砲口が咆哮を上げる。

 それは正に咆哮だった。左右の多数あるレーザー発振器は目だ。そして今、口が開いた。芋虫のように感じていたイメージが、ドラゴンヘッドに変わる。そしてそのアギトが解放された。

 ENファングレーザー。そう形容すべきものが正面の銃口に集まる。そして発射。俺が敵と認識した物体に食らいつく。

 それは敵を貫通しなかった。いや、仕様として貫通しない。その光のアギトが敵に食らいつき、離さない。そして当たっている場所だけじゃなく、その周囲にも影響が出ている。食らいついた胴体以外の手足も損傷を受けているようだ。

 貫通せず、効率よく、敵を食らい尽くす。

 これがENファングレーザー。

 この前段階の多連装ホーミングレーザーはただの視線だ。

 あれだけ頼もしかった猟犬芋虫はただの視線だった。

 それが今、食らいつくという攻撃の意思を持った牙になった。

 桁違いの威力だ。これならボスとタイマンが張れる。


 俺は消費されていくMPを補填させるために聖母ストレージのMP強化塔を三種全て立てて俺に収束強化を掛ける。

 消費されていたMPの器が増大し、効率化し、回復することで撃ちながらMPが回復していく。

 この腕も凄いが、聖母のストレージも凄まじいな。


 そんな中第三段階の提示がされる。

 この状態なら次の段階に行っても問題ないだろう。敵はまだ生きている。

 ENという半現存した存在だからこそダメージを与えながら拘束もできている。このまま圧しきるのが正解だろう。


 俺は更に解放する。

 カバーが展開しパラボラ状になる。そしてそいつの本性が現れた。

 ドラゴンヘッドがニヤッと笑ったかと思うと、いままで口だと思っていた部分は唇の先端、首だと思っていた場所がガバァッと開いていく。そこから現れた喉元から高濃度のENの塊がせりあがってくる。

 マズイ。

 俺はMP最大値強化と回復を強制的に活性化させる。コイツが撃つ前にMPを全開にしておかないとヤバイ。

 多分だが、MPが切れた時、その代わりに何かを消費する。

 つまりMPが切れときは死を意味する。何故だか俺にはそれが分かった。

 このサイボーグ腕が段階を経て解放されていく理由がわかる。扱えない状態まで解放して使えば即死。このカバー。この拘束具がなければとてもではないが使えたものではなかったのだろう。

 そしてその先、

 カバーが展開した今が第三段階。

 カバーをパージした状態が第四段階。

 砲身が変形した状態が第五段階。

 まだ先がある。


 一体何と戦う兵装だ?

 一ソルジャーの武装が神々と戦えるほどの威力を必要としたのか?

 

 俺の戸惑いは他所に、こみ上げたEN塊が放出される。

 その光の本流はENファングレーザーの比ではない。

 例えるならゴッドゴーギャンのフルヘルスキャノンに匹敵する。

 第三段階でこの威力だと? 次は一体どうなる?


 クソッ。MPコンバータ塔が火を噴きそうだ。

 これをオーバーパワーで強化する必要がないとか誰が言った?

 俺だよ!

 神々と戦う上級職の聖母でも扱えない武装だ。本来なら胴体にMPコンバータ系のサイボーグ兵装があるんだろうな。そうでもないとこのMP消費は説明がつかない。


 というか視界が見えないがどうなっている? 敵はまだ居る。ゴッドゴーギャンフルヘルスキャノン級の攻撃を食らっても貫通しない敵が居る。

 クソッ。流石にこいつと視界共有は出来ねぇぞ。意識が持っていかれて自滅しちまう。


 -シコル・ギウス オンライン-


 そんな俺に何かが繋がる。サイボーグ系統の何かだ。

 光で見えなかった視界にガイドが表示される。

 ズレているから直せ、とさ。

 俺をそれを頼りに照準をずらしていく。

 確かに当たりが良くなった。

 そしてMPコンバータ塔の警告と停止限界が表示される。

 その数字は、俺の感覚と相関関係だ。これも信用できそうだ。

 

 だが、駄目だな。今回も殺しきれない。

 ・・・そこのフォローはねぇのかよ。


 俺は解放した右腕を封印していく。

 パラボラ状になったカバーが元の位置に戻り銃身を覆い隠す。

 コイツで安全だな。

 俺はサイボーグ化を解いてMP強化塔を通常状態に戻す。


 ヤレヤレ。まだ形が残っているぜ。

 正直俺の形をした敵を甚振るのは気が乗らないが、コイツはギンガに何をしたのか。

 それを考えるだけでこの手を止める理由は無くなるな。


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