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第34話 再降臨

 誰かが俺の名を読んでいる。

 俺の名はシコル・ギウス。転生者だ。

 異世界で死んでこの世界の神に請われてこの『衆神環視惑星』に降り立った。


 ジョブはソルジャー。

 ここは中世ヨーロッパな世界だったが多数の異世界転生者によって様々な改良が施されている。行ってしまえばゲームのような世界だ。俺には丁度いい。

 日本でVRゲームに慣れ親しんでいた俺にはこの体も世界も満点だ。

 この体。

 今は女性体。神に請われた俺達は神の使徒。普通の人間とは違う。

 その体は神の力Gによって形作られている。


 この世界はGによって全ての物事が解決する。

 衣食住は完備され、戦いによってGを得られる。

 それを自己強化に使うもよし、貨幣として使うもよし、街の強化に使ってもいい。

 戦う事さえ拒否しなければ、ここは正に天国だ。


 ただ一つ問題があるとすればこの世界は神に監視されている。

 相応の事をすれば天罰でBANだ。犯罪行為は勿論、女性体は淫行も厳しい。まろびでただけでBANだ。


 そしてこの体はGで出来ている。

 形態進化。

 聞こえはいいが魔物堕ちだ。この世界の使徒と住民は形態が変わる。

 悪に向かえば魔物に、正しく生きれば更なる力を。

 俺は運よくその正しい方向、短期形態進化としてヘカトンケイルを呼び出す事が出来る。各種センサー付きの人型の機械腕。取り合えず便利だ。


 また俺の名を呼ぶ声がする。

 どこだ?

 俺はよくわからない俺の感覚でその声の主を探そうとする。

 この声はゼロス。俺のダンナ様だ。

 TSの俺を受け入れてくれて、愛してくれた俺の夫。

 

 あいつが呼ぶって事は結構な厄介ごとが起きているんだろう。

 起きたいが起きれない。

 俺が意識をあちこちに向けているとようやく外との意識が繋がりだす。


 外?

 ここは何処だ?

 俺は記憶を呼び起こす。

 そうだ。俺は俺にそっくりなピンク髪ピンク目の女の子。白のつば広帽子に魔物球体を撃ちこまれた。

 それは使徒を魔物に変える。形態進化とは別の理屈だ。敵の呪いのような物だろう。

 俺は魔物球体を撃ちこまれた。そして魔物化しない様に自身の肉体をサイボーグ体のコールドスリープ棺へと変えた。


 ゼロスが呼ぶという事はもう起きても良いという事だろう。

 このコールドスリープの棺は中からは開けられない。

 こちらは準備オーケーだ。

 後はこの棺をゼロスの元に送れば開けられるだろう。

 

 棺に誰かが取り付いている。

 ゼロスのような、そうでないような。

 だが信用できる。俺は自分の体から力を抜くと抵抗しようとする機能を止める。


ーーー


「おふくろ!」

 俺が意識を取り戻した時にまず目と耳に入ってきたのは、金髪金目のゼロスに似た俺の息子だった。

「お前は誰だよアレシス。おふくろなんて呼ぶ奴は知らねーぞ」

「もうおふくろなんて呼ぶ年なんだよ! いつまで寝てんだよ母ちゃん!」

「・・・現実を知りたくない。もう一度寝る」

「寝かせるか! 親父も来てるんだぜ」


 アレシスが身をどけると外が見える。

 俺が直立したコールドスリープ棺から身をのり出すと戦闘の跡が見える。

 辺りも見覚えがないな。


「シコル! あんた起きたの?」

 その声はアリア。サイボーグアレグシオンのままだ。その胸部から覗く顔から黒髪ツインテールが見て取れる。

 アリアはまだ何かを、俺を警戒している?

「シコルさん!」

 この声はアレスだ。ショタじゃない。いつもの金髪碧眼の青年だ。

 こちらも剣を構えて戦闘態勢を崩していない。


 ギンガが居ないがどこだ?

 俺はヘカトンケイルを呼び出してセンサーを起動する。

 辺りには戦闘に協力していたらしき使徒の姿が見える。顔見知りは居ないな。地形にも見覚えはない。

 そして俺自身の体にもセンサーを走らせる。

 魔物球体はない。除去には成功したんだな。

 だが俺の服装に違和感が。

 いつもの緑の戦闘服ではなく、白い、なんだ? 神官衣のような物を着ている。


「重役出勤だなシコル・ギウス大先生は」

 ゼロスの姿が見える。

 俺は思わず足を踏み出そうとするが、まだ棺と体が繋がっているようだ。

 よろめく俺の体をゼロスが抱き留めてくれる。

「シコル。取り合えず棺を片付てくれるか?」

 ゼロスはまだ銃を手に持っている。左手で俺の体を支えている状態だ。

「・・・ここはもう安全なのか?」

「一番危険なのはお前だシコル。そいつがまた暴れ出したら手に負えねぇぞ」

 俺はゼロスの胸に顔を埋める。

 いつもの、安心できる。いつものゼロスだ。

「まずは浄化してくれ。もう魔物球体は良いんだよな?」

「魔物球体は問題ない。それよりもその棺だな。その浄化神ネタはいつまで続くんだ?」

「俺にとっちゃ数日前だ。まだ足りない。・・・ゼロス。俺は目覚めているんだよな?」

 俺はゼロスの体をきつく握りしめる。ゼロスの浄化作用が俺を安心させてくれるはずだ。きっとそうだ。この不安は俺が作り出しているただの幻想だ。

「目覚めているぞ。全て終わった。これが終わったら072に帰るぞ。そしてまたいつもの静かで何もない幸せな日常が続く。何か足りないのか?」

「ゼロスはここに居るよな? ずっとここに居るよな?」

 そうだこの感触はゼロスだ間違いない。ここにゼロスは居る。

「いるぜ。逃げたら追いかけるって言っただろう?」

「俺は追いかけなくても良いんだよな? 俺はもう追いかけたくねぇぞ」

「俺が追い付いたんだ。俺に合わせろよシコル・ギウス。もう先に行くな」

 俺は追いかけなくていいのか? 追いかけないと無くなっちまう。

「でも先に行かねぇと。皆が俺を置いて行っちまう。急がねぇと。誰もいなくなっちまう」

「だから俺が居るんだろ。072の静かな生活。お前がそれを守ってくれるんだろシコル? あれは嘘だったのか?」

「俺は、お前の、俺は、確かに言った。俺がお前の静かな日常を守ってやるって。それが妻の役目だって。俺はお前の何なんだ?」

 ゼロスは、お俺のぜろうすなのか。

「俺はお前のダンナ様だ。そしてお前は俺の女だ。あの夜を忘れたのか? 俺がどんなに攻めても俺は逃げないってお前は言ったよなシコル。俺から逃げるな。俺のモノでいろ。逃げてもどこまでも追いかけるからな」

「おい、けなくて、いい?」

「追いついてるぜシコル。ゴールテープが必要か? それとも俺様の目覚めのキスが先の様だな」

 ゼロスの唇が俺の、歯に当たる。

 ゼロス。泣いているのか? 

 泣きながら笑てる。

 おまえもかよ

 ならおれもわらってやるよ

 

「おれはも、にがさないから、な。おれの、だんなさま・・・」

「ああ。お前のその笑顔は俺のトラウマものだぞ。どうしてくれる。責任とれよシコル・ギウス」


 ゼロスがここに居るなら。もういいか。

 俺は棺に別れを告げる。

 ありがとうな。俺を守ってくれて。


 俺の体がサイボーグ体から元に戻る。

 今まで血液のような何かが駆け巡っていた体が元に戻り始める。

 これは、キツイ。

 使徒じゃなかったら脳の中身が吹っ飛んでいただろう。

 戻ってきた体内に合わせて腐りかけていた生身部分が正常化していく。

 これは、キツイ。

 というか俺臭くないか?


 俺の体が正常化していく。

 今までの俺が消えていく。棺に居た俺の意識が消えていく。

 そうか。これを棺が持って行ってくれているのか。

 ここに眠っていたシコル・ギウス。

 その記憶が残っていては、俺は正常ではいられないだろう。


 棺とのサイボーグのリンクが切れる。

 俺はシコル・ギウス。

 あの時眠りについた、あの時の俺だ。


「待たせたな俺のダンナ様♡。俺の笑顔のトラウマなんて塗り替えてやるぜ♡」


 とびっきりの笑顔をゼロスに向ける。

 手足は震え、体は強張っていたが、俺は懸命に笑顔を作る。

 俺だけじゃなく、ここに居た俺の為にも、情けない姿は見せられねぇからな!


 俺とゼロスは震え合う体で抱きしめ合う。

 俺の方は抱きしめるまではいかねぇけどな。


「無理に笑うんじゃぇぞシコル。泣きたきゃ泣け。泣きながら笑うのはもうやめろ」


 お前も泣いてんじゃねぇか。

 ゼロスの言葉に俺は堰を切った様に泣きじゃくる。

 やっぱりゼロスに嘘は通用しねぇな。


ーーー


 一兆G。

 それが今回のイベントの特別報酬だった。

「おいおいシコル・ギウス大富豪。お前は一体何と何をやらかした」

「いや知らねぇよ。それと俺のジョブが聖母になってるんだが?」

「シコル。お前あの中で何があった?」

「いや、その時の記憶は棺が持っていっちまった。多分安全装置だろうな。思い出すのは出来なくはねぇと思うが・・・」

「やるなよ。それと俺以外に口外するな」

「いやしねぇよ。こんなヤバい話誰に出来るんだよ」

「ならいいがな。お前といると退屈が恋しくなりそうだ」

「・・・」

「どうしたシコル?」

「何でもないぜ! 俺のダンナ様!」

「お前な。その我慢をするなと何度言わせる」

「うっ、情けない言葉が出ちまいそう」

「出せ。俺が優しい内に全部出せ」

「俺の事嫌いになっちまってないかなってな。ハハ・・・」

「おいシコル。それはベッドで全部回収するからな。俺を嫌っても逃げるなよ」

「逃げねぇよ。もう俺は俺のダンナ様のものだからな」

「それがわかっていればそれでいい。俺を退屈させるなよシコル・ギウス」

「わかったぜ俺のダンナ様。それにしてもゼロスと一緒にスローライフか。なんだか楽しみになってきたな」

「だろ? 忙しくなるぜ相棒。逃げたいと『言う』のだけは許してやるよ」

「スローなライフじゃねぇのかよ!」

「俺とお前でスローライフなんてありえるか」

 それもそうだな。

 俺達のスローライフはこれからだ!

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