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守り神人と呼ばれた一族  ~ついに世に出てS級探索者となる~  作者: おにまる
第一章 島を出る

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第八話 食べたい

 「とりあえず、この階層でソロで活動できるかが、次のDランクの基準にもなるので、しばらくはここを探索しようか。」


この時は《《まだ》》喜八郎の力の片鱗すら知らないC級探索者の田中さん。十年以上探索者をやって来てもC級。されど十年以上続けてる。普通の探索者の壁といってもいいB級。ほとんどのC級探索者は三年程で挫折し、辞めていくのだ。C級探索者は、普通のサラリーマンの年収と差ほど変わらない。それでもC級探索者は、一歩間違えれば命を落とすのだ。収入に差が無いのならどちらを取るかは、言わずもがな。


そうこうしていると大きな木の陰にコブリンが三匹程潜んでいると田中さんが小声で知らせて来た。


「大門君ゴブリン一体やってみる?」


「わかりました。」


「ところで、武器は何か持ってるの?」


「まぁあるんですけど、大丈夫っす。」


「これ貸しておこうか?」


田中さんはそう言って、腰に下げていた刃渡り60cm程のマチェットを出してきた。鉈の様に振り回せる使いやすい大型のナイフと言った所だ。


「はぁ、では、ありがたく。」


「危ないと思ったら、無理に攻撃しなくていいからね。」


そう言ってゴブリンが潜んでる辺りに拳ほどの大きさの投石を行うとギャギャと言う奇声と共に三匹のゴブリンが木の影から飛び出してきた。


一匹が田中さんに、二匹が喜八郎に向かって突進してきたのである。


まずいと思った田中さんは一匹の処理を急ぐために自ら前進し、襲い掛かってきたゴブリンの足を長槍で払う。体勢を崩し倒れたゴブリンの喉元を一刺しで鮮やかに仕留める。さすがは10年以上探索者をやっているわけで、その所作は無駄の無い見事なものだった。


直ぐにゴブリン2匹が向かっていった喜八郎の援護をしようと体勢を整え振り向いた所で田中さんは眼を疑った。


すでに頭部を切り離され、倒れる寸前のゴブリン二体が眼に入ったのだった。


「え!?」


静かに倒れていく二体のゴブリンの体の前には、ごく自然体で立っている喜八郎の姿があった。


信じられないと表情の顔した田中さんが、ゆっくり近づいてゴブリンの死体を確認すると、その切り口は鮮やかに一太刀で切り落とされたものの様だった。


「あ、これあざっす。」


そう言って渡されたマチェットには一滴の血の滲みも付いていなかった。


それもそのはず。田中さんの眼には映ってないが、襲い掛かってきたゴブリンに対して、一瞬で距離を詰め、首を手刀で切り落としたのであった。


その時初めて、田中さんは、喜八郎の底知れぬ力を垣間見た事であろう。

自分とは明らかに別格のその力の片りんを。


 探索者には《《よくある事》》だ。力の差を見せられる瞬間。田中さんは何度見てきた事だろうか。大抵の人はこの瞬間心が折れてダンジョンを後にするのだ。


 しかし十年以上探索者を続けている田中さんの良い所でもあるのが、切り替えの早さと妬まない事だ。自分の出来る事をコツコツと。が信条だった。すぐに笑顔に切り替わった田中さんが喜八郎に声を掛けた。


「凄いね、二体を一瞬で倒すとは、驚いたよ。」



「あ、どうも。」


ペコリと頭をさげる喜八郎に、これなら僕が心配することも無さそうだと感じた田中さんだった。しばらく話しながら喜八郎は、初めてみるこのダンジョンを探索することにした。


小一時間ほど探索し、田中さんも喜八郎の底知れぬ力を認め、もうここには用は無いだろうと引き上げようとしていた時だった。


喜八郎は遠くに魔物の気配を感じた。


「田中さん、あっちの方角から大きな魔物の気配感じません?」


田中さんがその喜八郎の指さす方角に振り向き、じっと睨みつける様に何かを探る。

田中さんが十年以上探索者を続けてられる要素の一つが危機管理能力であろう。それが警鐘を促す。


「これはまずいな、手に負えるレベルじゃないかも知れない《《俺では》》。」


「俺ちょっと探ってきますよ。」


「わかった。俺も行こう。ただし確認したら撤退して報告だ。」


「うっす。」


二人は出来るだけ慎重かつスピーディーにその魔物が確認できる距離まで移動することにした。そうしてようやく姿が確認できる位置まで移動してきたところで既に《《それ》》に対峙している探索者も確認した。


それは【オークジェネラル】だった。大きさは優に2mは超えており明らかに一般のゴブリンで無い事がわかった。本来こんな所に出現する魔物ではなく、もっと下層でB級のパーティかA級探索者で討伐する魔物だった。それに対峙してるのはC~E級と思われる3人組の探索者だった。


一瞬で二人は現在、対峙してる探索者三人の危機的状況を把握した。


そのとき明らかに田中さんにも聞こえる様にフェン丸が口を開く。


『喜八郎、あれ食べていいか?』


「え!?しゃ・・喋った!?」


「どうだろう・・・田中さん、あれ食べさせてもいいかな・・・?」


フェン丸は筋肉質な魔物が好物なのだ。


田中さんはこの危機的状況に加えて、今までペットの様に付いて来ていた犬がいきなり人語を喋った事によるパニックで思考が追い付かなかった。


「【オークジェネラル】だよね!?・・・_食べれるのなら?・・・__食べてもらってもいいけど・・・?」


半ば放心状態のようなぼーっと口を開けながら、田中さんは呟くようにそう言った。


その瞬間全長30mはあろうかと言う真のフェンリルの姿を現したフェン丸。


その気配を感じたのか、【オークジェネラル】がビクッとなって目が点になった様に見えた。生物としての格の違いに全てを悟ったかのように固まって動かなくなった。


時が止まったかのように三人の探索者と田中さんも目が点のまま動かなくなっていた・・・



 次の瞬間フェン丸は一瞬でオークジェネラルが居る所まで移動し、大口を開けてパクリと()()を咥え、天に向かって口を開き見上げる様に()()を飲み込んだ。


『食いたらぬ。』


大きな舌をペロリとしながら低く響き渡る声で、フェン丸がこちらを見ながらそう言った。


「「「ぎいゃあああああああああ!!!」」」


今まで絶望ともいえる状況に身を置かれていた探索者三人組は、さらなる絶望的存在の出現にダンジョン内に絶叫をこだまさせた。


その一部始終を見ていた田中さんも目が点になり完全に放心状態だった。一人落ち着いていた喜八郎も慌ててフェン丸に元に戻る様に言い。探索者三人に危険性は無い事を説明するのだった。()()やったなと言う目でフェン丸を睨む喜八郎。プイっと顔を背けるフェン丸。こうやって人間が驚く姿を楽しんでいるのだ。


それ以来フェン丸と目が合うたびに小さくヒィと声を上げそうになる田中さんだったとか。




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