第七話 富と名声を求めて挑む者達
すみません、投稿の順番がぐちゃぐちゃになってました。
「大門君は、ダンジョンの経験はあるんだってね?」
「はい、島ではほぼ毎日の様に入ってましたから。」
ダンジョンの入口に来た田中さんは、そう言いながらここにIDカードを当てるんだよと喜八郎に見せるようにゲートに設置してあるIDチェッカーを指し示しやって見せてくれた。同じように続く喜八郎。フェン丸とピーちゃんも理解してるのでペットの見た目のままで、そのまま続く。今ここで真の姿を晒そうものなら大変な騒ぎとなるであろう。
「ここからは、基本自己責任の世界だ。でも今日は僕が案内するから、安心していいよ。」
「お願いします。」
受付の前田さんは、C級探索者の田中さんには、喜八郎が熟練の探索者をも凌ぐ存在だとは伝えてない。少しだけ田舎のダンジョンに入った事がある程度だと思っている。
日本にはダンジョンが今や無数にあり、田舎の小さなダンジョン等、ギルドでもまだ管理しきれていないダンジョンもちらほらあるのだ。
そこは、喜八郎が毎日通ってたダンジョンとは大違いだった。近代技術と魔術が融合された仕組みがふんだんに組み込まれていた。IDカードで開くゲート。ダンジョン内を明るく照らす照明。
「ダンジョンとは不思議なもので、入るダンジョンによって中の様子や出て来るモンスターも全然違うんだよ?。」
田中さんの話に頷きながらも、ダンジョン内の照明を不思議そうに眺めてる喜八郎を見て、その仕組みをわかりやすく説明してくれた。
「このダンジョン内の魔素は魔力の源でもあるんだ。」
これは幼き頃よりダンジョンでの戦いの英才教育を受けてきた、喜八郎も知ってる事だった。喜八郎の居た奈落とは比べようが無いほど薄い魔素だが、その流れを喜八郎も感じ取っていた。
照明には術式が組み込まれてあり、その魔素をエネルギーにして発光しているのだと。これも先駆者達により編み出された有難い技術だよ。っとわかりやすく説明してくれた。
しばらく話を聞きながら進むと半透明のプルプル蠢く物体が、床や壁に張り付いていた。
「あれはスライムと言って、ダンジョン内の掃除屋さんの様な存在なんだよ。」
探索者が捨てたゴミや虫、コケ等を食べているらしく手のひらサイズのものは人を襲う事無いから無視するようにとの事。ただし縄張り意識が強く同種と争い相手を組み込み大きくなると言う。ある程度になると人を襲う事もあるので、サイズを見て倒すか見極めると田中さんは説明してくれた。喜八郎は、初めて見る陸に打ち上げられたクラゲのような生物にも興味深々だった。
それからしばらく進むと次に猫程のまるまる太った大きさのネズミがひょっこり出てきた。
「あれはスライムの天敵の大ネズミだよ。単体ではまず襲ってこないけど群れると人を襲う事もある。」
食肉にもなるし毛皮も売れるとの事で、小遣い稼ぎになるという。今回はそのまま無視して進み続けることにした。時折顔を出す大ネズミだが警戒心が強いのか近づこうとするとすぐに逃げていく。
喜八郎は、本土のダンジョンとは随分平和なものだと思った事だろう。原初のダンジョンとは大違いだった。喜八郎の知るダンジョンとは、大きな洞窟で明かりも無く、絶えず噴き出る高濃度の魔素の流れで、ヒュ~と言う音が響き渡る不気味なものだった。幼いころの喜八郎はそれが怖くてダンジョンに入るのを嫌がった。その一本道の奥に奈落の大穴があり、そこから途轍もない強い魔物が這い出て来る恐ろしい所であった。
「まぁ1層はこんなものだね。ここはふれあい広場みたいなもんだし2層行こうか。次からは大牙やゴブリンが出て来るから、気を引き締めてな。」
「2層!?」
何の事か分からず言われるがままに、後を追って足を踏み入れた2層の入口で喜八郎は驚きで目を丸くして言葉を失った。
そこには爛々と照り付ける太陽の日差しとサバンナを思わせる広大な草原が広がっていた。
「こ・・・ここは・・・一体・・・・」
「アハハ!そうなるよね。俺も最初に来た時はそうなったよ。ダンジョンとは本当に不思議だよね。」
とてもダンジョンの中とは思えない光景が喜八郎の見渡す限りに広がっていたのだ。喜八郎の頭の中でダンジョンに対する既成概念がガラガラと音を立ててぶち壊されて行くのであった。
一見ピクニックにでも来たかのようなのどかな光景が広がるが、その一歩先には危険が潜んでおり、虎視眈々と命を狙う魔物が待ち受けているのだ。
「背の高い草むらや大きな木の陰には魔物が潜んでるので、注意して行こう。」
「わかりました。」
喜八郎のこれまで知る世界とは、全く違う世界に戸惑いながら素直に返事するしかなかった。
「よく視てね。気配を探る様に、感じ取るんだ。」
言われるがままに喜八郎も魔物の気配を探ってみるが、命を脅かしそうな気配は全く感じられなかった。
「ほらあそこの茂みに大牙が潜んでいる。俺がおびき出すから見ててね。」
そう言ってナイフを茂みに向かって投げるとブフォフォという唸り声と共に牙が大きなイノシシを一回り大きくしたような魔物が田中さんに向かって突進してきた。
「大丈夫だから動かないで。」
そう言ってC級探索者の田中さんは。大牙の突進を寸前で華麗に躱しながら後ろ首に槍を突き刺した。すると大量の血を噴き出しながら大牙はフラフラと進みながらも倒れた。
「単体なら落ち着けば、このようにすんなり倒せるんだけどね。ゴブリンとかと交戦中に背後から来られたりすると厄介だから気配を読むことを覚えないとね。」
「はぁ・・」
気配を読めと言われても喜八郎にとっては、脅威とも思えない、魔物と捉えるかどうかも怪しいレベルだった。普通の探索者が虫にまで気を払わない如く、喜八郎ソナーには、小物は引っかからないのであった。強いて言えばフェン丸が食べたそうに舌をペロリとしていたので小声で注意した。
「食べちゃダメだぞ。」
「ん。大門君何か言ったかい?」
「あ、いえ独り言です。それよりも田中さんは何で探索者になったんですか?」
喜八郎には疑問に思っていることがあった。皆は自ら危険を冒してダンジョンに挑むと言うが、そうでない人もこの街には大勢暮らしてる様だった。
「ダンジョンには富と名声が詰まっているんだ。だから探索者は自ら望んでダンジョンに入るんだ。それらを掴むために!。」
田中さんはそう言って今の世の中のダンジョンと探索者の事情を少し話してくれた。
喜八郎は、田中さんのその言葉を聞いて衝撃を受けた。世の中のダンジョンとはそういう価値観なのかと。希望と夢を追ってダンジョンに自ら入るという事。
眼からうろこどころでは無かった。何故だか目頭が熱くなる思いだった。今まで考えもしなかった。ダンジョンに夢や希望を抱くことなど。
眼には涙を貯めながらもその顔は笑っていた。
喜八郎には、他の道なんて無かった。いや大門の一族は皆それを己の使命と捉えてただひたすらにそれの使命をこなす事だけに全てを捧げていた。
_守り神人と呼ばれ、原初のダンジョンの見張り役。昔のサムライが主君に代々仕える事を疑問に思わないように。約200年。ただひたすらに懐疑の余地なく全てを懸けてきた一族。
その涙は、他にもダンジョンに挑む者たちが居る事の安堵感だろうか?。
それとも他の生き方を知らなかった一族の儚さを憂いたものなのか?。
お付き合いいただきありがとうございます。




