第五話 オラ島を出る!
「ここが福岡かぁ、すげぇ人の数だなぁ祭りでもあるのかな?」
「ワォン」
「なんだフェン丸、ワンなんて犬みたいな吠え方して。」
『__喜八郎、普通犬は喋らないんもんだ。こんな人混みで犬が喋ったら注目を集めて大変な騒ぎになるぞ。お前は只でさえ目立つのに。』
フェン丸が念話で直接、喜八郎に語り掛ける。
「ふ~ん。たしかに、やたら見られちょる気はするけど。」
身長190cmはあろうかという白髪の凄い体格をした青年が、肩に赤いインコを乗っけてハスキー犬の様な大型犬を連れていれば街行く人々の注目を集めるのは当然である。
「まずは本土のダンジョンば、軽く見てみるたいー」
この男、大門喜八郎、遠く離れた島民1000人程の島で代々、原初のダンジョンの見張り番として、200年の歴史を持つ守り神人と言われる一族の、弱冠18歳にして、八代目当主でもある。訳あって、日本各地のダンジョンを見回る事にした。
~~~~~~・~~~~~
__1週間前
「_喜八郎さん~、佐々木様が見えられてありますよ~?」
「佐々木のじっちゃんが?なんも聞いてねぇけどな。」
いつもの佐々木副会長の様子と違って、なにやら真剣な様子の為、胸騒ぎを感じた喜八郎の世話役の麻耶は、慌てて喜八郎のいつもの釣り場に呼びに来た。屋敷に戻ると佐々木副会長とその秘書早乙女さんが、いつになく真剣な表情で座っていた。
「おぅ、佐々木のじっちゃんどうしたんだ?早乙女さんも揃って。」
「実はのぅ喜八郎。どこから話せばいいか・・・」
何か言葉に詰まり話しにくそうにしてるのを感じた秘書の早乙女さんが、口を開く。
「私から端的に説明させて頂きます。日本各地のダンジョンに異変が起きております。」
「「異変??」」
今回喜八郎の屋敷を訪ねてきた人こそ、日本全国のダンジョンを管理する大元の日本探索者協会副会長の佐々木虎之助と秘書の早乙女さんだ。
その早乙女さんの説明によると2週間程前から日本各地のダンジョンより、普段より魔物の数が多いとの報告や、同じ種類の魔物でもいつもより強い等の報告が時を同じくして、各ギルドへ探査者からの報告が上がってきており、前例の無い異様さにギルド職員達は、頭を悩ませていた。そこに思い当たる節のある佐々木副会長が動いたというのだ。
「断言はできませんが、これは原初のダンジョンの閉塞と関係があるのでは無いかと?。」
「・・・・・」
「勘違いするでないぞ、別に喜八郎を攻めている訳じゃなく、もしよかったら力を貸してくれんかと思うてのぅ。」
早乙女さんから出た確信めいた言葉を佐々木副会長がフォローする。
約200年に渡り、ここの島民たちや日本を脅かして、2度の百鬼夜行と呼ばれる魔物の大放出により日本の危機を発生させていた、《《奈落の大穴》》こと原初のダンジョンを閉塞したのは大門喜八郎、本人である。大門家とは五代目当主、大五郎より付合いがあり、喜八郎の生い立ちもよく知る佐々木副会長だからこそ、閉塞した喜八郎の気持ちをよく分かっていた。
「でも、何をすればいいんだ?」
「そこなんじゃよ、わしらもこれの解決法が分かっとらん。ダンジョンは今でも謎ばかりでな。」
日本各地にダンジョンが発生し始めて約100年。現在ではかなり腕の立つ探索者もおり、日々ダンジョンの謎を追い求めているのだという。
近いうちに一度本土のダンジョンでも見に来てくれという事で、この日はお開きとなった。
喜八郎も話を聞いて、もし他のダンジョンで百鬼夜行の様な事が起これば自分と同じような悲惨な体験をする者が出てくるかもしれないと、少なからずの責任を感じた。
今や原初のダンジョンの見張り番の任も解かれたこともあり、喜八郎は一度島を出ることを決意するのであった。
~~~~~~・~~~~~~~~・
_翌日
「大五郎じっちゃん、麻耶ネェ、オラ本土のダンジョンに行こうと思う。」
「_そうじゃな。ここはわしに任せておけ、世間を見分して己の眼で見定めてこい喜八郎。」
「喜八郎さん、体には十分気を付けるのですよ。フェンリル様どうかよろしくお願いします。」
祖父の大五郎と麻耶に見送られて、人生で初めて島を出ることを決意する大門喜八郎であった。
~~~~~~・~~~~~
_そして福岡の地へ
喜八郎は初めて直に見る、岩山のような大きなビルが立ち並ぶ光景に目をまわしながらも色々な人に道を聞き、ようやくダンジョンを管理してるギルドと呼ばれる所の施設にたどり着いた。
「やっとたどり着いたな。ここにダンジョンがあるのか?」
ギルドロビーには数人の探索者が居たが、見慣れない190cmの体格に銀髪、しかもただ者ではない雰囲気を放っている男に否が応でも注目が集まる。
喜八郎は、皆の視線を感じながらも受付嬢が座っているカウンターに行く。
「あのーすみません。ダンジョンに入りたいんですけど、ここで合ってますか?」
「はい、ダンジョンに入る申請はここで合ってますが、IDは持ってますか?」
「《《あいでぃ》》?何ですかそれは?ただちょっくらダンジョンの様子ば、見に来たとですけど。」
生まれて18年、島から出たことも無く、聞きなれない言葉に、見慣れない景色で、喜八郎の頭はパンク寸前だったが、優しい受付嬢の説明で、IDが無いとダンジョンに入れないとの事。まずは探索者登録からという事で、登録者用紙に記載を始めた。知人を記載するところで、ようやく佐々木のじっちゃんの事が頭に浮かびあがりその名を記載して提出した。
「ありがとうございます。今からデータ登録をしますが、身分を証明できる物はお持ちですか?」
「あー・・・いやー・・・何にも持ってないんだけど・・・」
「って、__知人の佐々木虎之助って、副会長の事ですか!?」
受付嬢は、その名前に目を大きく見開き二度見しながら、思わず大きな声で聴き返した。無理もない。ギルド職員なら、知らない者は居ないビッグネームが知人の欄に記載されていたのであるから。
「しってるんか?佐々木のじっちゃんの事。」
「じっちゃん?・・・・__一度本部へ確認させてもらってもよろしいですか?」
受付嬢がどこかに電話をかけていたが、その途中で電話に凄く姿勢正しくお辞儀しながら話始めたが、しばらくすると喜八郎に電話に出るようにとの事で受付嬢と電話を変わった。
「佐々木のじっちゃんか?」
『なんじゃい喜八郎。来るなら連絡よこさんか。手配してやったのに。』
喜八郎は、ごめんごめん忘れてたと電話で謝り、再度電話を変わると受付嬢はペコペコと電話にお辞儀しながら通話を終えた。
そして喜八郎の眼前へ勢いよく出て来て名刺を差し出すのであった。
「申し遅れました。私、福岡ギルドの受付の前田さゆりと申します。これからは奥の応接室で手続きさせて頂きますので、こちらへどうぞ。」
最初から親切な対応ではあったが、さらに礼儀正しくなった前田さんであった。




