第一話 守り神人
これは短編守り神人と呼ばれた一族の続編になります。
守り神人と呼ばれた一族
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「ダリィーなぁ・・・何体倒したら終わるのかなぁ。こいつ変わってくれないフェン丸?」
「フン、牛鬼か、まずそうだ。食うに値しない。」
原初のダンジョンと呼ばれる最奥にて一体の巨大なボスと対峙するのは、190cmはあろうかという巨躯な体に無数の傷を持ち、精悍な顔つきの青年と体長30mはあろうかという神獣フェンリル。その後方には不死鳥フェニックスが優雅に見守る様に羽ばたいて居た。
「ピーちゃんは攻撃は苦手だし。オラがやるしかないかぁー。ダリィーなぁー。」
この青年こそ、九州の小さな島にあると言われる。原初のダンジョンの八代目守り神人。大門喜八郎だ。嘘か誠か鬼の血を引き継ぐ一族の末裔。その始まりを知るものは残されていないし、知る人もいない。現代まで続く謎多き一族。
「まずは、小手調べだな【身体強化・剛】。」
【身体強化・剛】とは大門家の血縁者に脈々と引き継がれる血縁継承スキルと呼ばれる特殊な強化スキルの一つだ。それぞれの代の研鑽と血の滲む様な修練の糧に生み出され、次の世代のため研ぎ澄まされては、受け継がれていく別名一子相伝スキルとも言う。
「オラのパンチが見たいかい?」
その瞬間、喜八郎の眼光が鋭く光り、ドーンという地面をえぐるようなロケットスタートでその巨躯な体からは想像できないようなスピードで敵の眼前へと迫る。
喜八郎に対峙する今回のボスは【牛鬼】と呼ばれ、牛の頭に蜘蛛の体と八本の足をもちフェンリルと同じくらいの大きさの魔物のボスだ。もし地上に出れば災害級のモンスターであり、その被害は計り知れない。
「行くぞオラァ!」
ズドーーン!
牛鬼の足は言い伝えられる伝承によれば、それだけで大木の丸太の様に太くて、鋼硬質があり、あらゆるものをまるで巨大なハンマーを振り下ろすように破壊しつくされると言われている。
その一本にまるで大砲を打ち込んだ様な衝撃波と共に喜八郎の拳が撃ち込まれると破壊不能と言われているその頑丈な足にヒビが入る。
「でっかいし、さすがにかったいのぅー」
いやいや、破壊不能と言われるその足に素手でヒビを入れる時点で、すでに人の域を逸脱しているのだが・・・
「しかーしこんな時は、爆裂拳!」
ただのパンチの連打である・・・スキルでも何でもない。
ズガガガガガ!
まるで削岩機で岩を砕くかの如く怒涛のラッシュが叩き込まれ、巨大な足の一本が完全に粉砕される。
「ブルルルァアアアアアアアア!」
牛鬼も足を一本破壊されて黙っているわけも無く。当然怒り狂ったような咆哮をあげる。その体表を赤黒く変色させながら怒り状態になりその巨大な残りの足を喜八郎めがけて振り下ろしていく!
その巨大なハンマーのような足がものすごい速度で振り下ろされるたびにダンジョン全体が、いや島全体がさながら地震である。
「おいおい!あんまり暴れるなや!島のみんなが迷惑するだろうが!」
喜八郎が常人ではその姿を捉えることが出来ないような、軽快なフットワークで振り下ろされる巨大ハンマーの様な足を躱しながらフェン丸に武器を要求する。
「フェン丸!《《如意棒》》よこせ!」
フェン丸がクワっと大口を開けるとそこからニョキっと黒地に金色の細工が施された棍棒が頭を出したかと思えば、ものすごい速度で喜八郎目掛けて飛んで行く。
それをしっかりとキャッチした喜八郎が牛鬼を睨みながら如意棒に一声かける。
「袁王力を借りる!」
それに呼応するように喜八郎が握りしめた如意棒が金色に輝く。
如意棒の詳しい説明は後にすることにするが、この武器は歴代最強と言われる三代目守り神人である大門菊三郎の編み出したスキル。屈服した魔物を従え封じる能力により、以後大門家に引き継がれる武器の一つだ。ちなみにフェン丸並びにフェニックスと大門家の付き合いもこの三代目との縁から始まっている。
喜八郎がフンと如意棒を突き出すと、ゴフッと音と共に50mは離れている牛鬼の頭部に直撃し、牛鬼をぐらつかせる。
如意棒は扱う者の意思によってその太さ長さを自在に瞬時に変化させる。
「からの~バチコーン!スイカ割!」
先端を極太に変化させながら、喜八郎の上腕筋からメキメキと音が聞こえそうな程の力で振り上げられた如意棒が次に、凄まじい速度で牛鬼の頭部、いや全体に叩きつけられる!。
ドーーーン!
物凄い地響きを伴い押しつぶされる牛鬼も、これではさすがにチーンだった。
やっと終わったかと言う様な感じで頭を擡げたフェン丸が大口を開いて言う。
「喜八郎、そいつの足は高く売れるから保管だ。」
「了解。よっこいせ!」
圧し潰された牛鬼に近づきその巨大な足に抱き着く様に腰を落としたと思ったら、勢いよくフェン丸に向かって、仰け反りながら投げられる牛鬼。
喜八郎の最大の武器はこの膂力と言ってもいいだろう。それは歴代でも屈指のものだ。
そしてその巨大な牛鬼の亡骸はフェン丸の口に吸い込まれるように収納される。
「フェン丸いつになったらこの戦いは終わるんだろうね。」
「この奈落の大穴から魔素が噴出され続ける限り終わりは無い。」
この原初のダンジョンの最奥にある奈落からは特別高濃度の魔素が噴出されており、一般の人間はそれを浴びただけで卒倒するほどの猛毒でもある。この魔素と呼ばれるものは毒でもあるが、少しづつ慣らして耐性を付けれればそれを浴びる生物を強くもする。現存するダンジョンにはここ程ではないが魔素の流れが存在する。そして強く上位の魔物ほど、高濃度の魔素が噴き出る深層に居るのだ。
この奈落の先はどこに繋がり、なんの目的で魔物が這い出てくるのか、今は《《まだ》》謎だ。
そうなのだ日本に現在あるダンジョンの始まりはすべてここからなのだ。
時は200年以上前にさかのぼるが、この島に突如現れたダンジョン。その中には魔物が潜んでおり、地上へと這い出て来ようとしていたのだ。それを代々の守り神人である大門の家系による壮絶な戦いにより阻まれたため、日本各地に地中より出口を拡大する様に至る所にダンジョンを発生させたのでは無いだろうかと言うのが、日本探索者協会の見解だ。
それが現在のダンジョンと共にある日本なのだ。そのダンジョンから産出される鉱物やアイテムは現在の生活でも貴重なものが多く、探索者と呼ばれる一部のスキル覚醒者が、活躍する世の中でもある。
戦いを見守るフェニックスが喜八郎の頭上すれすれを滑空する。
するとぶわっと喜八郎がオレンジの炎に包まれる。これは再生の炎とも呼ばれ、傷や疲労を回復させてくれる。
「ありがとなピーちゃん。さーてみんな帰って飯にしよう。」
世の中では伝説の魔物と言われ、その存在すら知られてない魔物を簡単に一仕事終えたかの様に倒してしまう喜八郎とはいったい・・・
この島の守り神人にとっては、当たり前の事なのか・・・
尚、現在に至るまで、原初のダンジョンの存在と大門家の事は世間には公表されておらず、知りえるのは、島民と日本探索協会の幹部と首相のみである。
お付き合いいただきありがとうございます。




