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第四話 『魔法とは』

 ーーー翌朝




 翌日、俺は早朝に目を覚ました。

 眠りが浅かったのだろう。

 寝た気がしない。

 まだ昨日の昼寝の方がスッキリしていた気がする。


「おはようございます慎吾様。 お早いですね」


 俺が目をこすりながら起き上がるとカミラさんが笑顔で挨拶をし、湯気のたったお茶を持ってきてくれた。


「お身体の方はどうですか?」

「寝不足気味ですけど、だいぶマシになりました」


 軽い受け答えをしつつ、俺はカミラさんからお茶を受け取る。


 透き通った緑色。

 そこには茶葉も残っており、なんだか日本のものに似ている気がする。


「本日は9時頃から戦闘の鍛錬が行われます。 それまでに支度を整えておいてください」


 そういえば、そんなことも言ってたな。

 割と早時間みたいだし、もう準備し始めた方がいいかも。


 俺はもらったお茶を一気に飲み干し、ベットから起き上がった。


 まずは服だな。

 この部屋には、王宮側が用意してくれた衣服がある。

 見た目は漫画に出てくるザ・厨二って感じのものだが、あまり違和感のようなものは感じない。

 これもこっちに来たせいなのだろうか。


 俺は数十もある服から、赤と白を基調とする一着を選び、見にまとう。

 肌触りも悪くない。

 もとの世界ではすれ違う人みんなに笑われそうなほどの厨二コスだが、やっぱり変な感じはしなかった。


「では参りましょう」


 支度を終え、カミラさんと一緒に部屋を出る。


 カミラさんは食堂や謁見の間に行くのとは反対の方向へと俺を案内して行った。

 長い階段を1番下まで降り、同じく長い廊下を歩いて行く。

 やがて俺たちは、外光の一切ない洞窟のような通路にたどり着いた。


「えと、カミラさん。 本当にこっちで合ってるんですか?」

「はい。 鍛錬は地下のワープゲートから転移できる亜空間にて行われますので」


 俺の問いに淡々と答えるカミラさん。

 前から思ってたが、なんだか愛想がない人だなあ。

 目元とか雰囲気も暗いし。


「あの、ちょっといいですか?」

「? はい。 なんでしょうか」


 通路の先はまだ見えない。

 どうせまだかかるなら、少し話してみよう。

 そう思い、俺はカミラさんに声をかけた。


「カミラさんって、いつから王宮に仕えてるんですか?」


 たわいもない会話。

 少なくとも俺はそんな感覚で質問を投げかけた。

 しかし、


「…。」


 カミラさんの雰囲気が一層暗くなった。

 何か悪いことを聞いてしまったのだろうか。

 そう思い、俺も不安になる。


 しばらくすると、カミラさんはためらいながらも口を開いた。


この王宮に来た(・・・・・・・)のは800年も前のことになります」

「800年!?」


 その回答に、俺は思わず大声を上げた。

 目上だろうとは思っていたが、まさか年単位だったとは。


 でも、そうか。

 カミラさんは獣人族。

 漫画とかに出てくる獣人も、見た目は若いまま歳を取るって場合がある。

 きっとそれと同じなんだろう。


「はい。 単に関わり始めるという意味ではもっと前からですが」


 え、ってことは…、ええ?

 カミラさんこの見た目で何歳なんだ?


「着きましたよ」


 俺があわあわしているうちに、目的地であるゲート部屋までたどり着いた。

 設置された松明の赤い光とは違う、日光のように明るい光が、真っ暗な通路の奥に見える。


 その光源まで進むと、目の前には巨大な扉があった。

 高さでいえば5m近く。

 木材で作られているようだが、多くの傷やこけに侵食され、かなり古臭いように思える。


 ギィィィィ。


 カミラさんがそっと扉に手を添える。

 すると、巨大な扉は鈍い音と砂煙を上げながら、ゆっくりと開いた。


「すげぇ…。」


 扉の先に進むと、俺は思わずそんな声を漏らした。

 扉の奥に広がるドーム状の空間。

 その外壁のいたるところに、紫色の渦を巻くゲートがあったのだ。


「こちらです」


 俺は目を丸くして立ち尽くす。

 そんな俺をよそに、カミラさんは正面の一際大きいゲートの前へと進んで行った。


 俺はカミラさんと共に、そのゲートの中へと足を踏み入れる。

 途端に、教室の時と同じような眩い光が、俺の視界を覆い尽くした。




 ーーー(046番ゲート 『修行の間』)




 次に俺が目を開けた時、そこはさっきまでいたゲートの部屋ではなくなっていた。


 雲一つない晴天の空。

 打ち込み人形や模造の武器が並ぶ荒野の上にいた。

 四方八方は草原や街中など様々なエリアが広がっている。

 よく見ると、荒野の中央にはジンがいた。

 周りにあと2人いるようだが、誰だろう?


「ここは『修行の間』。 多種多様な環境や武具が備えられている亜空間です」


 亜空間。

 王宮のある場所とは違う空間なのか?

 そういえば、部屋から見たの時と天気が違う。

 確か曇りよりだったはずだ。


「うわ! なんだここ!?」


 そんなことを考えていると、後ろのゲートから涼太が現れた。

 それに続くように、他の同級生たちも続々とここへゲートから出てくる。

 やがて、召喚された生徒全員が集まった。


「全員お揃いになりましたね」


 全員が揃ったのを確認すると、ジンと他2人がこちらに歩いて来た。


「今回は粒揃いと聞いてたが、こりゃすげぇな!」

「鍛え甲斐がありそうですな」


 1人は筋骨隆々の大男。

 茶色く厚い毛皮を纏い、片目から頬にかけて傷がある。

 もう1人は細身の男。

 腰に刀を下げており、衣服は日本の侍を彷彿とさせる。

 2人とも、そこらの兵士とは雰囲気が違っていた。


「私どもは陛下よりみなさまを任されました」


 ジンが一歩前へ出る。

 小さくお辞儀をした後、再び話を始めた。


「まずは私、ジンでございます。 王宮魔導士団団長を担っており、みなさまには魔力の扱いの指南をいたします」


 ジンにならうようにして、他の2人も自己紹介を始めた。


「俺はダリウス。 王宮戦士団団長だ。 お前らには体術を教える」

「拙者は王宮騎士団団長アリオン。 そなたらには剣術を指南いたす」


 この3人はそれぞれ、魔法,体術,剣術を教えてくれる。

 ただし、魔力の使い方は全員共通でジンに習い、その後は自分のスタイルに合わせて教わりに行く。


 例えば、《剣聖(けんせい)》を持つ涼太は、剣術のアリオン。

 魔法関連の《聖者の血(せいじゃのち)》を持つ美久は魔法のジン。

 特に戦闘タイプが決まっていない俺は、どんな状況でも使える魔法のジンか体術のダリウスって感じだ。


 それにしても、王宮の団長たちか。

 通りで雰囲気が違うわけだ。

 だが、この王宮でこれ以上の人材はいないだろう。


「それでは、早速始めましょう。 まずは魔力の使い方です」


 簡単な自己紹介が終わると、ダリウスとアリオンが後ろへと下がる。

 そして、1人だけ前に残ったジンが杖を構えた。


 目を瞑り、深呼吸をするジン。

 辺りが静まり返る。

 俺や涼太も、じっとジンのことを見ていた。

 すると、


「な、なんだあれ!?」


 風も立っていないはずなのに、ジンの周囲に砂埃ばこりが舞い始めた。

 その勢いはどんどん増していき、やがて大きな竜巻となってジンを飲み込んでいく。

 だが、これでは終わらない。


「よく見ていてください。 《獄砂の弾丸(サンドボール)》」


 ジンが呪文を唱える。

 すると、先ほどの竜巻が一瞬で杖のもとに収縮し、1つの球となった。


「魔力というのは単純なエネルギーです。 術式という出力機に流すことで、このような魔法を発動させることができます」


 ジンによると、魔力と魔法はまったくの別物らしい。

 魔力は魔法の動力源であり、それ単体ではほとんど役に立たないそうだ。

 一応魔力のみでも扱うことはできるらしいが、魔法と比べて燃費が非常に悪く、実用的ではない。


 ちなみに、戦闘タイプは基本的に魔力量が多いほど器となる肉体の身体能力は高くなっていく。

 他にも、使う魔法を絞ったり、自分自身に制約を課すことで、魔力や魔法の強化を行ったりもできるらしい。


「まずは基礎魔法の《魔弾(まだん)》をやってみましょう。」


 基礎魔法。

 これがさっき説明された魔力をそのまま出力する魔法だ。

 実用的ではないと言っても、感覚を掴むだけならこちらの方が手っ取り早い。


 一通りの説明を終えると、ジンは杖を振り払って魔法を消した。

 次は俺たちの番だ。


「目を瞑り、呼吸を整えてください」


 俺たちはジンの言う通り目を閉じ、深呼吸をする。


「集中してください。 全身にもやのような感覚があるはずです。 それを押し出してください」


 確かに、前の体とは何か違う。

 意識を向ければ分かる。

 明確に何が違うとは言えないが、体の中を流れるような感覚があった。


「体を動かすのと同様、頭ではなく感覚で扱うのです。 ゆっくり、慎重に」


 ジンの言葉に従い、ゆっくりとその感覚を手の先へと押し出していく。

 もう少し。 あと少しで手のひらまでいく。

 そのとき、


「ん? あれ?」


 俺の中にある違和感が生まれた。

 手のひらの直前、手首のあたりでその魔力のような感覚が止まってしまったのだ。

 俺は少し焦りつつも、深呼吸して押し出すを繰り返した。

 しかし、どれだけ力んでも、踏ん張っても、それ以上感覚を前へと送り出すことができなかった。


「おかしいなあ」


 他の人はみんなできていた。

 涼太も美久も、俺以外の全員の手に、黄色く輝く球体が浮かんでいる。


「なんで俺だけできないんだよ」


 俺はヤケクソになり、両腕に力を込めて感覚を押し出そうと試みる。

 だが、当然できるわけはない。

 ジン曰く特異体質が関係しているらしいが、結局、俺は一欠片の粒すら作ることができずに終わってしまった。


「魔法は基礎です。 素手や武器で戦う場合も必ず役に立つでしょう。 決して、疎かにしないように」


 これで、最初の共通の魔法鍛錬が終わった。

 そして、


「さーて。 やっと俺らの出番だな」

「ふむ」


 ジンの終了の合図と共に、アリオンとダリウスも俺たちの前へと出て来た。

 <ステータス測定結果>

 個体名:浅野 美久

 武力値:40

 魔力値:600

 知能値:180

 実戦値:820

 固有魔法:《聖者の抱擁》

 スキル:《神域展開》

 その他:なし


◯固有魔法説明

 回復系の魔法を使用できる。

 対象者のダメージが多いほど回復効果も高くなり、デバフや状態異常にも作用する。


◯スキル説明

 自身を中心として半径100mの聖域を展開する。

 聖域内では自身の魔法効果が増大し、範囲内にいる味方と判断した人に様々なバフをかけることができる。(以下参照)。


 ただし発動中は領域から出ることができず、その範囲内でしか動けない。

 また、クールタイムが5分必要。


・魔力消費量減少

・魔法効果向上

・自然治癒能力向上

・自然魔力回復量上昇

・持続回復効果付与

・ダメージ軽減付与

・身体強化付与

・異常状態耐性付与

・支配系耐性付与

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