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第二話 『ステータス鑑定』

 そばにいた衛兵たちに誘導され、俺たちは謁見の間へと進む。


「さて、まずは説明からさせてもらおう。 今、この世界がどうなっているのか。 そして、なぜ貴殿らはここへ呼ばれたのか」


 玉座に座った老人、服装や周りの態度からしてあの人が王なのだろう。

 そして、王様はこの世界、俺たちにとっての異世界について、現状を話し始めた。




 数千年前から、魔界に住む魔族と天界に住む天使の間で戦争が起こっていた。

 原因は、魔族が天界を乗っ取ろうとしたこと。


 もちろん天使は抗った。

 しかし、単体として強い天使でも、魔族とは頭数で数倍という差がある。

 そのせいで、徐々に劣勢となっていった。


 やがて敗北の危機にさらされた天使だったが、下界(人族や獣人族などの亜人種が住む世界)に降り、そこに住む多くの種族からの協力を得ることに成功する。

 協力とは、単に戦力増強という意味ではない。

 武具の製作や資材,食料の確保。

 魔法の研究なんかもそうだ。


 そして、他種族合同の魔法研究の結果、世界と異世界を繋ぐ“道”を発見。

 同時にその道から異世界人をこちらの世界へ召喚する“召喚魔法”の開発にも成功したそうだ。




 で、こっからは俺たちが呼ばれた理由。

 まあ定番だが、魔族の王、魔王を倒すためらしい。


 召喚魔法は発動するだけでも莫大な魔力が必要で、その魔法の対象となる異世界人も多少影響を受ける。

 そのおかげで、常人とは比べ物にならない量の魔力と身体能力を得ることができ、スキルや固有魔法なども強力なものが多いそうだ。


「事情は分かったであろう。 次に移るぞ」


 ある程度の説明が終わると、王様はそばに控えていたジンに視線を向けた。

 それを受けたジンが俺たちの前へと出てくる。

 その手には人の頭ほどはある大きな水晶玉が乗っていた。


「では、皆様のステータスを測定させていただきます」


 ジンの持っている水晶玉は、別名『測定水晶』。

 魔力を持った生き物が触れると、その魔力を読み取って能力の測定を行ってくれる代物らしい。


「1番前の方、前へお願いします」


 ジンは、俺たちの最前列にいた学級委員長の美久を一段上へと誘導する。

 おどおどしながらも、美久は促されるままに小さな段差を上り、ジンのところに進んで行く。

 そして、その水晶玉に手をかざす。


 すると、その水晶玉の上にモニターのようなものが現れた。




 <ステータス測定結果>

 個体名:浅野 美久

 武力値:40

 魔力値:600

 知能値:180

 実戦値:820

 固有魔法:《聖者の抱擁(せいじゃのほうよう)

 スキル:《神域展開(しんいきてんかい)

 その他:なし




 そのモニターが出た瞬間、辺りで静寂を守っていた兵士たちが一斉に騒ぎ出す。


「おい、あんな女の子が実戦値820だってよ!」

「マジかよ…」


 そんな中、唯一平静を保っているジンが口を開いた。


「このように、それぞれの能力値が数字表示されます」


 ジンによると、武力値は身体的な戦闘能力,魔力値は魔力総量と魔力的な戦闘能力,知能値は戦闘における頭脳や参謀指揮、技量などの能力を数値化したもので、実戦値はその合計らしい。

 で、召喚された人は特別なスキルを得られるそうだ。


 それを聞いた瞬間、俺は舞い上がった。

 さっきまではあまりに淡々と話が進んでいたせいで理解が追いついていなかったが、要するに漫画によくある異世界召喚。

 なろう系のような最強ムーブをするのも夢ではない。

 高校生にとって、やっと飲み込めたこの状況は胸踊るものなのだ。


 それから、次々と同級生がジンに呼ばれていった。


 実戦値700,900,750,800。

 《鋼鉄化(フルメタル)》《限界突破(リミットオーバー)》《幻想(まどろみ)》。


 ステータス測定の結果を聞くたびに、俺のわくわくはどんどん大きくなっていく。

 真ん中あたりで呼ばれた涼太に至っては、実戦値1300という暫定最高値に加え、《剣聖(けんせい)》スキルに

自然の加護(エレメンタル)》なんてかっこいい固有魔法までもらっていた。


 そして、


「では次の方、お願いします」


 いよいよ俺の番だ。

 やばい。

 自分の心臓の音がうるさい。

 それほど興奮しているのだ。


 ゆっくり、ゆっくり。

 俺は緊張しながらも、目の前の小さな段差を踏み越えてジンのもとへ歩いて行く。

 そして、そっと水晶に手をかざした。




 <ステータス測定結果>

 個体名:加賀美 慎吾

 武力値:600

 魔力値:400

 知能値:200

 実戦値:1200

 固有魔法:なし

 スキル:なし

 その他:特異体質(炎)




 ・・・。

 え?

 スキル“なし”?

 固有魔法も!?


 その結果は、無双ムーブを妄想していた俺にとって最悪のものだった。

 異世界ものではお決まりのチートスキルが、俺だけなかったのだ。


 なぜだ?

 他のやつは全員あった。

 涼太も美久も、運動ができないやつや問題児のようなやつも含めて全員だ。

 なのになんで俺だけ…。


 俺は俯き、しょぼくれながらもとの場所へ戻る。


「まあ、あれだ。 元気出せよ」


 そんな俺に、涼太が肩を組んで慰めに来てくれた。

 クソ…。

 かっこいいスキルもらいやがって…。


 羨ましい。

 俺はそう思いながら涼太の顔を見る。


 だが、それでは終わらなかった。


「こ、これは!!!」


 突如、後ろでジンが叫んだ。

 あれほど、涼太の1300という数値にすら動じていなかったジンがだ。

 俺は何事かと振り返る。


「特異体質…!? それも炎の!?」


 ジンが騒いでいる原因は、どうやら俺の測定結果にあった特異体質のようだ。


「ジンよ。 残りの方々の測定を進めよ」


 取り乱すジンに、王様はそう命じた。

 それを聞いたジンも我に返り、一息置いて測定を再開する。

 正直ジンがあれだけ騒いだ理由は気になるが、測定ももう終わりに近い。

 わざわざ止めてまで聞くのも悪いし、後でもいいか。


 それから数分後、やっとクラス全員の測定が終わった。

 結果で言えば、実戦値の最高は涼太。 次いで俺だ。


「今日は疲れているであろう」


 王様がそう言うと、俺たちの通ってきた後ろの扉が開いた。

 その先では、動物の耳や尻尾といった特徴を持つ女性たちが、メイド姿でずらりと並んでいる。


「1人ずつ、世話や雑用係としてメイドをつける。 今日のところは案内に従って用意してある部屋で休むといい」


 獣人までいるのか。

 本当にザ・異世界みたいな場所だな。


 王様の言葉が終わると、メイドたちが一斉に歩き出した。

 1人、また1人。

 俺たちの前に立っては足を止める。

 近くで止まった人がその世話役?てことなのか。


「よろしくお願いします」


 俺の目の前で、1人の女性が足を止めた。

 白くて綺麗な長髪に、狼のような耳と尻尾。

 クールな雰囲気を持つ女性だ。


「あ、お願いします」


 俺はぺこっと頭を下げる。

 その後、全員にメイドがつくと、俺たちは用意されているという部屋へ案内された。


 また馬鹿みたいにあの長い廊下を歩いて行く。

 階段もそう。

 一階上がるのに多分50段ぐらいある。

 それを数回繰り返し、またその階の広ーい廊下を歩く。

 そして、やっと部屋に辿り着くことができた。


「どうぞ」


 俺を先導するメイドさんが、部屋のドアを開けてくれた。

 この人、あれだけ動いたのに息一つ乱れてないなんてすごいな。

 そう思いつつ、俺は誘われるままに部屋へ入って行く。


「すげぇ…」


 その部屋は、まるで高級ホテルのスイートルームのようだった。


 素材は木や石がメインだが、素足で歩いてもまったく違和感がない。

 風呂場や脱衣所も大きく、暖炉やキッチンまである。


 文明的にはもとの世界に遠く及ばない。

 が、それでも何一つ不満が出てこないほどの部屋だ。

 俺は子供のようにはしゃいでしまい、部屋の中を探索しようと駆け出す。

 その時、


「っ、体が…!」


 突然視界が揺れ、全身の力が抜ける。


「大丈夫ですか?」


 倒れかける俺を、メイドの人が支えてくれた。

 疲労。 部活や大会直後みたいな感覚だ。

 召喚者は召喚の影響を受けるって言ってたし、何かしら反動でもあるのだろうか。


「ベットへ行きましょう。 歩けますか?」

「はい。 お願いします」


 俺はメイドさんの肩を借り、すぐそこのベットへと横たわる。


「本日の予定は夕食のみとなっております。 それまではお休みください」


 メイドさんの言葉に俺はこくりと頷くことしか出来なかった。

 俺はそのまま、気絶するように眠りに落ちていった。

固有魔法について

 固有魔法はその人に刻まれた術式に魔力を流すことで発動できる魔法のこと。

 名称は使用できる魔法の分類やレベルを表しており、同じような効果を持つものでも上位下位互換が存在する。


スキルについて

 スキルは固有魔法と同じように、人それぞれ違う。

 ただ術式などは関係なく、一種の能力のようなもの。

 魔力を消費しない代わりにクールタイムなどの制限がある。

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