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第七話 過去と立場と決闘と

 「賭けものもあるのかここ、」

 「いや〜随分偏ってるね……今すぐフェイトに賭けてくる!」

 「そうですね、私も賭けてきます」


 決闘当日、闘技場の入り口に賭けを仕切るブックメーカーにと、姉さんとリコリスさんは、足を進めた。僕が127.94倍に対して皇太子の方が0.00071倍、人望がないな、皇女様がこちら側だが第一継承権はそれほど信用があるらしい。姉さん達が大金をかけたことでオッズが一桁変動したが、それを見ていた周りの人が、皇太子にさらに金を入れで元と同じようになった。


 「すいません、フェイトさん、少しいいですか?」

 「いいですけど」

 「本当に闘うんですか?」


 ビオラさんが確認に来た。今からやめることは無理だし、あれは嫌いだし。何より国が安定しないほうが僕には面倒だ。まぁ少し荒れるかもしれないけど。


 「今から無理ですとは言えないですよ?それに僕はアレに政治を任せたくない」

 「……曲げる気はないと」

 「そうだね、親はなんて?」

 「軽薄だと、リコリスさんとの関係は継続しているのでまだ何とか、ただこの一件には手を貸すことはないと」


 支援しているものとのパイプが壊れようとしている上に学園での問題事そこまで関わることはできなかったか。


 「まぁ僕達の首はリコリスさんが、何とかしてくれるそうなので、全力でやるだけですよ」

 「……そうですか、殺さないでくださいね」

 「考えておきます」



 殺すな、か。決闘でそれは変な話だ。もともと決闘は小さな戦争だ、言葉で解決できない、言葉が通じない相手との交渉に扱う。どちらかが負けを認めるか、どちらかが死ぬか、どちらも死ぬか、それが決闘だ。皇太子以外は殺してもいいかもな、ああでも剣聖子息は残したほうがいいのかな敵対したらめんどくさそうだし。


 「逃げずに来たようだな、それは褒めてやる」

 「一度負けたやつに言われても何も響きませんよ。それに僕は貴方方の名前も覚えてないので」

 「お前、ふざけてるのか?」

 「ふざけてませんよ剣聖子息さん、」


 僕が相手方を剣聖子息や、乳兄弟と称すのは名前を覚えてないからだ。皇太子の名前は覚えたが、関わりの無い者の名前は覚えない。


 「はぁ…審判始めろ!グラディウス・エクエスだ」

 「ああ、剣聖はエクエスだったね」

 「ふざけるな!」

 『両者離れて!』


 魔法により拡大された声が闘技場に響く。始まる、殺さないという制約なら腿を切れば簡単に終わる。剣を使う家のものが腕や手を怪我するなん手問題だからな。


 『両者構えて……はじめ!!』


 「こないのか?剣も抜かずにどういうつもりだ」

 「こういう構えだ、それに間合いの外にいる相手剣を振るう馬鹿が何処にいる」

 「ふざけるな!」


 五足、四足、三足、二足……一足一刀の間合い、今、


 「はあ゙!」

 「なっ……はや…」

 「ちっ………」


 終わらなかったか、抜刀術なら初撃が見えないからいけると思ったが、案外硬いな。

 今の戦いの武装の主流は、皮や布などの動きやすさを重視とする。鎧を着るものもいるが稀だ。そして剣聖子息も布鎧だが、仲間で通らないところを見ると頑丈なのだろう。


 「突きかな」



――――――



 「やっぱりそうなるか」


 フェイトの構えから予測はしていたけど、やはり抜刀術を初撃としたものだった。


 「見えないんだよねあれ」

 「3対1の時も、あれで1人動けなくなりましたしね」

 「剣術では、グラディウスの方が上でしょうね、けど戦に関してはフェイトくんの方が上、守護獣の練度もフェイトくん、まずは一勝ね」


 リコリスさんも弟の勝利を確信したみたいだ。まぁこれは実戦経験の差だね。



――――――



 「速いがそれだけだ。戦いは守護獣があってこそ、それにカトレアと結ばれるためにも負けられない!顕現――スレイプニル――」

 「おお、8本足の駿馬か、さすがに剣だけじゃ勝てないね、けど、結ばれるねぇ、それは駄目だな、立場を理解していない、貴族が、剣聖の子息が、聞いて呆れる」


 王家に連なる家の中で最も剣の才を持って生まれやすい家、それがエクエス家身分も違う、力もない、見れるのは回復系統の力だけ、国への不利益になる。それで迷惑がかかるのは平民だから、

 さっさと終わらせよう。しっかりと乗っている、騎馬兵に歩兵が向かっても勝てる勝率は低い、しかも平坦な闘技場では尚更戦いづらい。空をも駆ける、神々の王の馬、まったくこのレベルが幻獣判定とはこの世界の神獣はどうなってんだか。


 「顕現――狐火(きつねび)雷獣(らいじゅう)――」


 更に、大天狗の神速と操風(そうふう)×鎌鼬の斬撃


 「断て(たて)――疾風(はやて)――」

 「甘い!」

 「避けられた、風の予測もできるのか厄介な神馬だな」


 刀を鞘に戻し、狐火の炎と雷獣の落雷で進路を狭め、鎌鼬の飛ぶ斬撃を大天狗の風を操る力で補佐し、神速の力を抜刀術に応用。腕が振り回されるため痛みが生じるが、間合いを無視して斬り込める優れた技だ。まぁ避けられたわけだが。

 しかし、馬に乗るなら剣じゃなくて突撃槍の方が使いやすいと思うが、搭乗しない場合はそうではないのか。神速の馬を止めれば勝ちか、攻撃はしてこない、避けに徹するつもりか、押さえつければ勝ちだな。


 瀧夜叉姫の餓者髑髏×酒呑童子の剛力、


 「操骨(そうこつ)――骨腕(こつわん)掌握(しょうあく)――」


 巨大な骨の腕が、スレイプニルとグラディウスもろとも地面に叩きつける。もともと瀧夜叉姫と餓者髑髏に関係性はないが浮世絵で瀧夜叉姫が餓者髑髏を呼ぶという絵が有名となりセットで表されるようになったが、この世界でもそうらしい。恐らく世界(物語)の都合だ。因みに餓者髑髏を呼ぶと上半身のみが限界だ、今は腕だけ出したが。


 「さて、ここから反撃できるならそれを証明してください、無理なら降参してください」

 「なぜそんなにも守護獣がいる、」

 「契約獣ですよ、まだいますが続けますか?」

 「いや、降参する」

 『しょ、勝者、フェイト・ストレンジ』


 まずは一勝、思ったより苦戦したが、今後も幻獣なら何とかなるはずだ。神獣がそんなホイホイトで来るわけがない。なんで姉さんに神獣がついたんだろう。



――――――



 「スレイプニル、強みはどこでも走れることだったかな?」

 「歴史に興味ないですね、」

 「こっちに迷惑がかからないなら、私達は貴族と関わらない。けど、こっち(平民)も政治問題に巻き込まれるくらいに、崩れるならそうも言ってられない。私は御二人の中を保てるように動いてきたつもり、何かあっても公爵家が王家への支援を手打ちにしないようにね」


 「平民がなんで出しゃばるのよ、皇子が認めたならそれでいいじゃない」

 「皇太子達に勝てるわけでもないのにな」

 「でも一勝されてる」

 「大丈夫だろ、手を抜いてやってたんだよ、希望を見せるためにな」


 今の状況を理解していない未来の貴族、皇太子からご厚意にされるために動いているようにも感じる。平民は貴族同士の結婚を深く知らないから軽い気持ちのよう、フェイトが歴史好きだったこともあって、政治問題が少し分かるようになった、結論は女に籠絡された男は国を潰すということだ。



――――――



 「なるほど、代理者として立候補するだけはありますね、」

 「次は、乳兄弟さんですか」

 「……私の名前はヴェントス・アコニツ厶だ、覚えろ!」

 「ヴェン…なに?人の名前を覚えるのは苦手なんだ、すいませんね、では始めましょうか」

 『両者構えて……はじめ!!』


 まずは、抜刀術と思ったが、始めから使うのか。


 「顕現――フレースヴェルグ――」

 「顕現――雷獣、鎌鼬――」


 様子見程度の斬撃……


 「げっ…」

 「無駄だ、風に関わるものは私には効かない」


 フレースヴェルグ…巨大な鷹か……出てこないな、北欧神話関連か?どっちにしろ、名門貴族に付く守護獣などろくなもんじゃない、神獣じゃないことを祈るだけだ。


 「狐火――焔――」

 「無駄だ、流せ(ながせ)――ventum() tectumque(宿)――」


 狐火の焔、霊獣故に威力は弱い、けど風で流されるほどとは思わなかった。風を操る系統かな?しかしそれだと鎌鼬と大天狗は使えない、餓者髑髏は骨だが体積がある分風に押されやすい。厄介だな風に影響を受ける攻撃は基本的にうまく行かないということだ。

 雲に頼らない雷なら貫けるかな、いや貫けるはずだ。雷は風の異形を受けるか、これは受けるというのが正しいとも言える。雷を発生させる主な雲は積乱雲それらは風の流れ気圧配置で作られる。故に発生するまでに影響を受けるが。雷そのものは風に影響を受けない、ジグザグに動くのは空気中の電気抵抗だが、別に風が空気中の電気抵抗に関係するわけではない。


 「穿て――霹靂(へきれき)――」

 「な、んで……」

 「フレースヴェルグだっけ?その守護獣の扱う風は目を見張る物があるよ、けどそれはあくまで風の影響を受けるモノが大半だ、風の影響を受けない雷なら、その風は意味をなさないんだ」


 雷を落とし続ける。何とか避けているみたいだがかなり苦戦をしている。まぁ電気を避けることは容易ではない、相手が霊獣なら二三発当てたら勝てただろう、けど幻獣ならそうもいかない、風の影響を受けても相手に届く力……


 「縛れ――蜘糸(ちし)――」

 「巻け――turbo(旋風)――えっ?」

 「糸なら巻き取れば絡まるからな、実戦経験の差だ、さてこれで終わりだ」

 『勝者、フェイト・ストレンジ』


 残りは皇太子か、周りは阿鼻叫喚だ、親に金を借りたやつもいれば、全財産を刷ったやつもいるみたいだ。ここまでやって頭が冷えてればいいんだけど……無理だなこの期に及んでわざわざ、期待させるようなことを言っているんだろう。控えに子爵がいた。



――――――



 「殿下、気おつけてください経験の差があります」

 「アイツは既にギルドのランクを上げる必要がなかったから、貴族の試験ができたんだったな、問題ない。授業での実戦も多い、勝つさ、カトレアと結ばれるためにも」


 控室、私は殿下に勝ってもらうために、言葉を投げかけに来ていた。殿下の乳兄弟、宮廷貴族のヴェントス様がアドバイスをしているようだ。大丈夫、殿下なら勝てる。


 「殿下……」

 「カトレアか、どうした?」

 「いえ、殿下の勝利を願っています」

 「!ああ、」


 殿下は優しいから、公爵令嬢にあまり強くでれなかったんだと思う。それなのに、あの平民が割って入った、無駄なことを、平民が王族に勝てるわけがないのに。



――――――



 「まさか、僕も出ることになるとは思わなかったよ。けどここまでだ、カトレアと僕の恋糸は切ることはできない!」

 「頭は冷えてなさそうですね、分かりました、続けましょう、勝てば要件をを聞かなきゃならないのだから」

 『両者構えて……はじめ!!』

 「顕現――ケルピー――」


 えっ?北欧神話で通すんじゃないの?え?なんで?国の名前もユピテルとか、北欧神話だったじゃん。なんで?ここでケルト神話が出てくるの?しかも三叉槍持ってるけど、それはギリシャ神話でしょ、


 「隙あり!流せ――sruthán() láibeach()――」

 「――餓者髑髏――危ないな、気が動転してた、ふぅ……殿下、一つ質問です。公爵令嬢に付いてどう思いますか?」


 ケルピーに水を操る力はない、世界(物語)の都合だろうが大量の水による濁流が襲ってくる。餓者髑髏の巨体を足場にして逃れることができるのでそのまま、この決闘の本質というか、皇太子と公爵令嬢の政略結婚という重要さについて指摘する。


 「政略結婚での嫁だ」

 「そうですね、そう聞いています。けどそれって公爵家が殿下を王位第一継承者になれるだけの支持を得る繋がりでもあるわけです、これを聞いて貴方はカトレア・パウペルという辺境子爵の家のでのものを選びますか?」

 「ああ、アイツには愛情というものがない、アイツは俺の気持ちを察しなかった、王宮の奴らと同じだ!俺に王族としての生き方を強要する、俺は王族に生まれたくなかった、もっと自由が欲しかった、俺個人を見ない、俺じゃない、皇太子を尊重する」


 貴族としての王族としての、約束された将来か、政のやり方、見方、国の現状、歴史、敵対国、貿易国、色々と叩き込まれてきたんだろうな。けど、理解していない。


 「そうですか、制限された暮らし大変だったと思います」

 「なら!」


 周りの見物人共も俺が負けを認めたと思ったのだろ、雰囲気が好転している。


 「でも、あんたは自由を理解していない。自由ってね大変なんですよ、問題が起きたら自分で対応しなきゃいけない、後ろ盾がないから貴族に目をつけられたら、最悪の場合生きるのすら難しくなる、それでもですか?」

 「強ければ問題ないんだろ!いいじゃないか!」

 「何処が?僕に勝てない時点で、生きていくことはできませんよ、」


 平民の、ギルドランクがCまでしかない理由、強さに身分が追いつかないから、平民というだけで評価は下る、故に平民はギルドランクを上げることに憧れはあるが実践する者は居ない。生きる過程で上げたランクだ、権力とは別だから、


 「正義ってなんだと思います?」

 「正義だと?」

 「ええ、正しいこと、でもいいですよ」

 「そんなモノ、国の法だろ?」


 自分の意見はないのか、政治で傀儡になりそうだなこいつは。


 「ああ、確かにそれもいいですね、では、人を殺したものは咎人ですか?」

 「当たり前だ!だいたいそれがこの決闘に何の関係が、」

 「ありますよ、関係は、人を殺したものは咎人か、貴方は咎人と答えました。では戦争で敵軍の騎士を殺したものは?」

 「咎人になるわけがないだろう」


 そうだ、敵は悪だ、けどそれは相手から見た僕達も敵ということで悪になる。今と同じ状態だ。


 「そうですね、戦争において敵軍は悪となります、ですがそれは敵軍から見ても同じことです」

 「何が言いたい」

 「話が通じないなら、意見が合わないなら、戦うしかないんだ、戦争をするしかないんだ。決闘とは、数人の間に巻き起こる小さな戦争、この場合こちらからすれば、辺境子爵を娶ろうとする殿下の意見を悪とします」

 「ふざけるな!カトレアは唯一俺の思いに気づいた、俺を見てくれたんだ、それを悪と言うな!」


 本音、これでいい、ビオラさんには申し訳ないがこいつに政権を握らせちゃだめだ。そして、もう一つ答えが欲しい。


 「では、今の身分を捨ててでも、辺境子爵を娶ると?」

 「ああ、そしてこれ以上彼女を侮辱するな、話し合いは終わりだ、武器を構えろ、」

 「……はぁ……では、命かけてくださいね?」

 「俺も覚悟は決めた、奪われるくらいなら死んだほうがマシだ」


 「殿下……そうまでして……その女がいいのですね……」


 泣いてる、そりゃそうだろう、公爵令嬢として皇太子との結婚を取り付けられた。けど、けどその過程で恋をした、皇太子にヒュドール・ジュピターに恋をしたのだ、人間関係の問題でよくあることだ。でも


 「今さら覚悟を決めるのは少し可笑しいですね」

 「何を言う、どちらかが互いに死ぬまで続けるぞ」

 「はぁ……馬鹿じゃないですか?」

 「が…ぁ」


 三叉槍を構え直して言った言葉に、距離を詰めて蹴りを入れる。はぁ…本当に頭にくる。


 「貴方は王族だ、さすがに殺すことはできない」

 「なんだと……」

 「同じ平民なら、殺そうとしても止められることはなかったし、腕や脚くらいなら許してくれたかもしれないですね、でも貴方は王族だ、殺すことはできないし、貴方の実力じゃ僕に勝てない、言葉でも説得することができないのは今しがた理解したはずです」

 「……」

 「貴方が公爵令嬢を切り離したことで始まったこの決闘は、そこの子爵か、貴方、もしくは公爵令嬢が止める権限を持ちます、どうしますか?どちらにせよ貴方が相手をするのはあちらです」


 泣いているビオラさんを指して皇太子の意識を阻止らに向ける。


 「無理だ、俺はカトレアを諦めることはできない」

 「そうですか、殺しはしません。寝てください」

 『勝者、フェイト・ストレンジ』


 終わった、誰も良い方向には行かないが、最悪を避けれたと思いながら決闘場を後にする。後は身内に任せる方が良い。


 「随分言ったねフェイト……」

 「流石にわかるでしょ、僕と同じ人を殺した経験があり、尚且つ失うことの辛さをさ………」

 「……うん、ごめん。今日は休もう、」

 「ああ、」


 不可抗力だったそれでも、深く残った、あれからあの街には戻ってない、もう戻ることもできない。

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