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第五話 入学式とダンジョン攻略

 「春風が心地よい今日、この良き日を迎え、私たち新入生を代表してご挨拶を申し上げます―――」


 眠い……基本することがない入学式、王都が誇る学園なだけあって、新入生256人三学年で768人、全員をしっかりとした椅子に座らせることができている。しかもソファのようにしっかりとして、座り心地がいい。一般が192と多いが八クラス中の2クラスが貴族用で、ランクが五ではそのうち二つは貴族のものとして、残りの六クラスを平民が使うとするで妥当と言えるだろう。

 しかし、話せる者が必要だ、できれば貴族ではないものがいいがAクラスに入る時点で望みは薄い、となれば男爵家との軽いパイプだな。平民がAクラスでもやっていけることは姉さんが証明してくれた。ならヘイトが薄いうちに下のものと付く。皇太子についたらそれこそ問題になりかねんからね。


 「最後になりますが、新入生の今後の健やかな成長と、皆様の益々のご発展を心よりお祈り申し上げ、私の挨拶といたします」

 「終わったな」


 ながい新入生代表挨拶を聞き流し、各クラスに移動する。

 周りの視線は鋭いものと、興味、好奇心といったところ、僕としては関わらないのであれば別に問題はない。入学式から一日は空きコマ行っても行かなくてもよい日だ。翌日の最初の授業は、茶会のマナー?必要なのかコレ……


 「やる気がありませんね、フェイト・ストレンジ、こちらに来なさい実演しましょう」


 「……合わない」

 「珍しいですね君は、平民の子でも心をつかめると思ったのですが、ブロッサムでの様式にしてみましょうか、」


 ブロッサム聞いたことないが恐らくチェリーブロッサムの約だろう、桜つまり和の形式だ。まだこちらのほうが乗れる。


 「上手いですね、こちらの方は経験が?」

 「本で読んだだけです」


 というより前世での知識だ、日本史は徹底的にあらったからたいていのことはわかる、けどはじめの授業の態度としては最悪と言える。姉さんもこんな認識だったんだろうか、


 「それでは、これで最初の授業を終わります、」


 次はダンジョン攻略についてか。

 ダンジョン、洞窟だったり遺跡だったりに魔獣が過剰に生まれることで生成される。出世に一番使いやすく、ハイリスクハイリターンでの命をかけたものだ。


 「え〜では、魔獣と守護獣の違いについて説明していきます。魔獣と守護獣は大きな違いはありません、知能の違いです。人の言葉を解すことは幻獣からですが、人の意に寄り添い、力を貸すモノを守護獣としています。知能が低く人間に牙を向くものが魔獣とされます。そしてもう一つ気おつけなければならないのが、言葉を解すモノでも人に危害を加えるものがいます。それらは国同士の連携やギルド間の情報共有によって、指定魔獣とされています」


 この辺は既に知識がある、ダンジョンに潜ることは少なかったが、それでも低層までなら潜ったことがある。


 「それでは、この後午後にダンジョン攻略をしたいと思います、32人ですので何人一組で余った者は他に入ってください、二年生がサポートにつくのでよっぽどのことがなければ、怪我をすることもないですが、空いた時間に準備をしてください」


 空いた時間、安めのポーションを三、当適用の小刀を二本、刀の手入れ、いつも着ていた外着、これで準備は完了だ。


 「入試ぶりでございますね皇太子様」

 「…………」

 「フェイト〜」

 「この編成は強制なの?」

 「そうだよ、入試の首席から三席は王族と共に攻略、王族がいなければその限りではないけど、まぁ一人初めましての方がいるけど」


 小柄な女性貴族がここにいた。


 「……お言葉ですが、貴方とでは殿下と身分が違います、女性は実技試験を免除することも可能ですが貴方は出ませんでしたね、実力があるのならばまだ良かったのですが貴方はどういった意図で殿下に近づいたのでしょうか」

 「わ、私は殿下といたいからここに来ました、迷惑なら断っても構いません」

 「頭に乗らないでください!だいたい名も名乗らない時点で不躾です!」

 「カトレア・パウペル、辺境子爵家の出です」


 小柄な貴族とビオラさんが言い争いをしている。そこまで食って掛かる必要あるのか?


 「ビオラさんは皇太子の許嫁、政略結婚で決まってるのよ、他にも皇子太子の乳兄弟の入試四席と、次席の剣聖子息も婚約者がいたはずだよ」

 「なるほど?」

 「貴方も政治に疎いですね」

 「政治を知って腹がふくれるわけでもないですし、金になるわけでもないですよ、今までは」

 「エリスさんと同じ事を言いますね」


 姉さんと言い争いを見守っていたが、問題は貴族の少女の立ち位置だ。子爵か、どっちにしても、他の皇太子を含めた他の者も、子爵の肩を持つように動いている。


 「けど、婚約者というならあれはマズイだろ。すり寄ってる貴族も大概だけど、それに肩を持つ皇太子も問題だ、下手すれば、公爵家と王族に亀裂が入りかねない…」

 「政治に興味ないのにそこはわかるんですね……」

 「「貴族に関わりたくない理由が人間関係の問題だからある程度は予想できる」」

 「私が注意しておきます、流石に目が余ります」


 「そうですか……分かりました、それにしましょう」

 「終わったようですね、ヒュドール後で話があります、まずはダンジョンの指定区域まで行きましょう」

 「はい、先頭は……」

 「フェイトさん、エリスさんお願いします」

 「「分かりました」」


 姉さんと並びダンジョンを進んでいく。守護獣の使用は禁止されていないが、使用してもいいとは言われていない面倒くさいことだ、


 「止まってください敵がいます」

 「フェイト、一人で行ける?」

 「問題ないよ、すぐに終わる」


 大きな蜘蛛、1メートルくらいの大きさの蜘蛛が六体、蜘蛛だが糸を使わずに足で攻撃してくる。蜘蛛は無脊椎動物で節足動物だ、昆虫型より皮膚は柔らかいが、それでも硬いので、節目に沿って斬っていく。

 一体、二体…一歩下がって三体目、後ろの二体に投げて、すぐ来たところを四体目、動きが鈍い方を仕留めてから、六体目


 「終わったよ」

 「うん、流石!」

 「まぁこれくらいならね、」

 「そうか、なら引き続き頼むぞ」


 皇太子の言葉に嫌気が差す、人を道具のように言いやがって……


 「まだ余裕そうですね、少しペースを上げましょうついてきてください」

 「ふっ、もちろんだ」


 少しペースを上げると、しっかりとついてくるので、もう少し上げていつものペースにしようとすると、ついてきた子爵が躓いて倒れる。


 「大丈夫か?カトレア」

 「だ、大丈夫治せるから 豊穣――Salūs(癒し) Flāns(の風)――」


 転んで振り向いたのか血が出ていて、心配する皇太子だが、自力で治している。珍しい回復系統の守護獣か、程度によってだが、神獣扱いされるものもある。ある意味としては王族に取り入れるものだ。


 「それがあんたの守護獣か、便利だな」

 「アンタっ!」

 「安心しろ黙ってるよ、教会についたほうがよかったんじゃないか?」

 「おいっ、カトレアを悪く言うな」

 「婚約者がいるのに他の女に手を出すんですね、少しペースを落としましょう、すぐに転ぶような人がいるとは思わなかったので、すいませんでした」 


 称賛したが、珍しさゆえに警戒される。身分というのはつくづく面倒だ。


 「行きますよ」

 「魔石も回収できたよ」

 「……本当に不思議だな、ダンジョンというものは」

 「そうですね、魔獣が生まれたり、魔石があったりと」


 媚びを売る甘い声、嫌になる。周りも子爵の行動は目に余る。本人が気にしないがゆえに、手が出しづらいと言ったところだ。


 「……一説によると、魔獣が生まれるのは高濃度の魔力がある場所だという、ダンジョンや、魔石が先なんじゃなく、魔力が溜まった場所に魔獣が集まったり、結晶化したりする、その場所をダンジョンとした」

 「それは本当なのか?」


 疑問に答えたら訝しむような反応をされる。


 「単なる考察ですよ、いわゆる「卵が先か、鶏が先か」これと同じですよ」

 「なるほど、では空を飛ぶ大陸があるのは?」

 「そこは分からないですよ、基本他国については興味がないので、ただ、不自然に気候が変わる場所は途中で切り離されるとされていますが」


 この世界の地理はめんどくさい。浮島とされる浮遊している陸がある。主に3層で区分され、今僕達がいる場所は2層目、一番上は世界樹があり、精霊が守護獣のことが多い、巨大国家アルヴヘイム、とその植民地、一番下は獣人やエルフといった亜人と呼ばれるモノがいる。身体能力や寿命といでっ人間より優れたモノたちが住むが、守護獣がいないため、奴隷とされている。北欧神話に近いのかと思ったが、少し違うようだ。


 「授業で行けるのはここまでです引き返しますよ」

 「どれくらいになる?」

 「この人数なら一人金貨21枚かな、」

 「探索されてるから、やっぱ少ないな」

 「見てわかるのか」

 「慣れですよ、皇太子なら甘く見られることもないでしょうしすぐに身につきますよ」


 こういうのは経験だ。というより冒険者としてギルド登録するのが学院では主だが、貴族は自分の身の安全を優先することが多い。憧れと命を天秤にかけて、無茶をするものと、何もしないものの2つに分かれる。

 前者を途中まで続けたものは、位階が同じなら発言権が強くなる。これも戦争での政治改革で勝利した国だからだろう。実力があれば認められる。


 「そうか…」

 「やっぱり一人はこういった実力者が欲しいですね」

 「そうね、貴族は経験不足から怪我人が多いと聞くからね」

 「空賊も問題になっていませんしたか?」

 「ええ、船を持っているのが貴族だけだから、どうしても後手に回るのよね」


 皇女様とビオラさんは政治というより学院の問題点を話し合っている。それに比べて皇太子は、カトレアの心配をするばかりで、皇太子としての自覚がないと見える。


 「それでは、今日はこれで終わりです。怪我はないですね」

 「終わった……大丈夫かなこの国、下手したら次期王の席が揺れる可能性があるな」

 「やっぱフェイトなら気づくか、」

 「姉さん」

 「皇太子の王位継承が高いのは公爵家が支援してるから、リコリスさんは、継承権は持ってるし、それを推す声もあるみたい。何かあったらそっちの方を持つのもいいかもね」

 「だね、恋愛系はめんどくさいから」

 「冒険者でも酷かったよね」


 前世もあるが、こちらでの人間関係の問題は恋愛と金が酷い。冒険者での男女で組むとほぼ確実に付いてくる。金は性別関係なしに問題が起こる。そしてそれらから更に政治という面倒事が加わるのが貴族だ、横領、政策、政略結婚、貴族同士のパイプ、これらが複雑に絡まる。

 それらを嫌う僕達がこの学院に来たのは卒業後の騎士という仕事についてだ。ギルドのランクはCまでが平民としての基本だが。騎士となれば、ランクが更に上がる。準貴族として特別的な扱いで一代限りだが、貴族でも干渉が難しくなるからだ。


 「ああ、そうだ学期末、ABクラスは強制参加のパーティーあるから」

 「強制?」

 「そう、フェイトはブロッサム式のほうがいい?」

 「うん、ソッチのほうがいいかな、頼めば作ってくれそうだし、ついでに戦闘用も変えるか」


 面倒事に自ら飛び込んでいる感は否めないが、国の存続が傾くよりマシだと感じながら、姉弟仲良く会話をしてその日は終わった。

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