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第三話 気高き炎の家

 「随分と大きな屋敷だな」

 「そうね」

 「普通はもっと驚くと思うんですが随分淡泊な感想ですね」

 「現実逃避をしたかったのよ、察してちょうだい。で、ウルカヌス家はどういった立場の家系?聞いてなかったわ」

 「公爵という立場です、ではついてきてください」


 広いな、公爵と言うなら王位に次ぐ立場だろう、となればこの広さは納得できるものなのだろうか。ビオラに付いて行き案内された部屋に入る。


 「君達が娘を守ってくれた人達だね、私はグロリオサ・ウルカヌス、この家の当主だ。まずは、ありがとう、娘を助けてくれて、そしてこれが報償金だ、白金貨100枚、そしてもう一つ何か望みを言ってくれできる限り叶えてあげよう」

 「では今後かかわらないということで」

 「同じく」


 白金貨100枚という大金を手に入れて、僕達はもう満足だった。そこからできる限りの望みを叶えてくれるというので、関係性の遮断を申し出る。


 「なぜかな、国の中枢を担う公爵家普通恩を売るように動こうとするはずだが」

 「こちらにもいろいろと事情があります。それに貴族とか人間関係に問題がありそうだから、極力かかわらないそれが私たちが権力者に向ける考えです」


 勝手な思想で家族を失いたくはない僕も姉さんもだ。けど権力者の思想問題は当人が理解しているのである程度は納得してくれる。


 「言いたいことはわかった、だがお金だけというのも……ふむ、君たち年齢は?」

 「14です」

 「13」

 「なら、王立学園にいくのはどうだ?」

 「いや、ですから貴族との関わりは」


 縁のない話だと思っていたが、ここでその名を聞くことになるとは思わなかった。


 「貴族だけではない、一般平民も入ることはできる。いわゆる将来の確定だな。王立学園に入るにはそれなりのスペックが必要だ、学費をこちらが負担する。これなら貴族と関わっても男爵くらい、君たちの言う権力問題には関わらない」

 「入学すら難しいですよ、学院に入らない前提での暮らしですから」

 「賞金刈り始めたのが5年前でしょ、その間は鑑定眼、物の価値、軽い計算くらいですよ」

 「後は実戦での戦闘だね」

 「後一年あるな、試しにやってみるか?過去問ならあるぞ」


 意地でも国においておきたいのか、お金だけでは目をつけられるのか、どっちにしろ受けるしかないようだ。


 「わかりました」

 「うん、」


 やってみれば、守護獣に付いてとか、国の歴史とか、そういった当たり前のことだった。


 「思ったよりできた」

 「そうね、」

 「実戦は一般部門にはありませんが、私と手合わせをしてくれませんか?エリスさん」

 「……いやです。貴族相手に剣を向けるなんて、」

 「手合わせなら別ですよ」

 「逃がしてはくれないんですね」

 「ええ」


 そんなこんなで始まった手合わせ、二人とも木剣だが実力差はわからない、蛮族より強いくらいしかわかっていない。


 「始め!」

 「はあ゙っ!」

 「くっ…」


 はじめの一言と共に、距離を詰め上段からの振り下ろしをする姉さん、それを驚きながらも確実に防ぐビオラさん。余力は姉さんの方が下みたいだが、ばねは姉さんの方があるみたいだ。

 そして、僕と姉さんは実線の中で編み出した蹴りを混ぜた剣を扱う。一歩離れる瞬間に回し蹴りをして相手を吹き飛ばす姉さん。手加減はしていないみたい、けど守護獣は互いに使っていない。


 「実戦を経験済みと言ったな。殺し合いということかな」

 「はい、賞金がかかった蛮族討伐で」

 「なるほど、君の目からはどう見るこの戦いは」

 「わかりませんよ、強いて言うならば、ビオラさんは攻守共に揃った剣技のように感じます。僕達は肉親以外の身は自分で守ってほしいという考えですから。正直間に入って助ける必要はなかったという認識です」


 剣のみのビオラさんと、蹴りを混ぜた剣を扱う姉さん。蹴りの間合いは槍に似ている。リーチの長さは姉さんに軍配が上がる。


 「正直だね。私達ウルカヌスは建国から王家を支えてきた人間だ。【王家を支える、気高き炎の翼たれと】それが我が家の家訓だ」


 「穿て(うがて)――alis() ignis()――」

 「凍てろ(いてろ)――Niflheimr() carcer(監獄)――」

 「ウソ……」


 拮抗していた二人が等々守護獣の力を展開する。ビオラさんはウルカヌスさんが家訓として言ったように、炎の翼を、姉さんは蛮族討伐に使う、霧の冷気を。

 炎の翼の推進力で放たれた突きは、姉さんがしゃがんだことであっけなく避けられた。それどころか翼の熱で溶けはするが、でけ始めた瞬間から凍るように意識を集中していた姉さんの力で足が凍りついていた。


 「これで終わりです」

 「うむ、そこまで、ビオラはまだ修練が足りんな。しかしエリスくん、君はどんな守護獣を持っている、」

 「幻獣です、名前は言いたくないです」

 「……そうか、そして実力を鑑みて、君たちは学園に確実に入れる」

 「そうですか……」


 これで学院に入学することが確定してしまった。気は進まないし、入学にあたっての身分の保障等がギルド由来といろいろと問題がある。

 ギルドというのは、簡単に言えばパスポートに近い、どの部署を主要に使っているかで、場所の特定などができ、実力があればその分後ろ盾となってくれる公共機関だ。因みにランクは貴族が優遇されることもある。

 ランクはE〜Aと上がってSが一番上のランクだが、B以上は貴族しかいない。簡潔に言えばBが準男爵から一代男爵、Aは子爵より上、そしてSは国家間で決める物とされ、ランクに応じて身分が変わる。

 このランク上げをサポートしているのが学院というわけだ。僕達はCと平民の中ではトップとなる。

 入学まで姉さんとビオラさんが一年、僕が二年、入学費が三人分になってもダメージに誘うなウルカヌス家には贔屓はするなと釘を差してその場を後にした。

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