第十九話 暁
「伯爵、もう撤退するべきかと」
「撤退? 馬鹿を言いますね。公国の軍隊は、王国の学生に負けて帰ったと笑われるつもりですか!」
そうだ、王国相手に後れを取るわけには行かない。被害は大きくなってきたが、これ以上は抑えなければならない。
「姫も攫われ、酒も奪われ、さらに相手は学生笑われに引くという選択肢はないのですよ」
「…………見苦しい」
「!そうでしたね、この艦隊には貴方がいましたね」
出撃許可は最初から降りていないが、これ以上の被害は学生相手にだせん、蹴りをつける。
「出撃停止していたのは貴様らだろう、姫様が捕らえられたと聞いた。お前を締め上げるのは後にしてやる。俺たちを出撃させろ」
「ええ、かまいませんよコルダータ・ブラカ・ホウトウニア子爵、貴方に、貴方達に任せましょう」
姫をさらったのは黒髪の男、黒い翼か、知らん守護獣だな、おそらくまだ実力者はいるだろうが。船に直接出向けば確実に助けられるだろう。
「いくぞ、飛翔――aripile drac――」
――――――
「何か来る!」
大獄丸×鈴鹿御前
「神剣――三明の剣――」
「ほう、強いな貴様」
なんだ、コイツ、今どうやってここに来た、速さが天狗と同じなのか?それにこの余力、速さだけじゃない。どんな守護獣だ、速さと力が両立した幻獣なんて…
「意識がぶれているな、いいのか?」
「あっ…」
「さて、姫様のところに」
女郎蜘蛛
「縛れ――蜘糸ちし――行かせるか」
幻獣とは言え鬼と同じ余力を持つこいつをいつまで縛れる。けどこっちの客船に来てくれたのは良かった、あっちには戦力を割いて、
「邪魔だ」
「まだ、!」
不知火+ヒバシラ+雪ん子
「幻――蜃気楼――、炎――火柱――、零――粉雪――」
「む、」
不知火が起こす蜃気楼は周囲との温度変化からなる物理現象が言伝に怪異かしたもの。つまり温度差を顕著にすれば、より鮮明になるはず、理数苦手だから高校以外の範囲はわからん!
「うっとうしいな変身――ceață――」
「んっな!?」
霧になった?!。まずい何処にいる、どこから来る?!わからない、
「隙だらけだな」
「?!っのわっ、」
「ずいぶんと感がいいな、だが貴様にかまっていられるほどの猶予はすでにないのでな、姫様のところに行かせてもらおう」
「凍――Niflheimr carcer――」
姉さん!なるほど相手が霧なら凍らせてしまえば捕まえられる。
「……構わず行け!姫様が優先だ!」
「ちっ!姉さん、頼む」
「……分かった」
なんでこう、命と目的を天秤にかけられる。いくら王といえど、命は一度だし、怨嗟は続くし。進むことしかできない戦場でなぜ人の為に止まることができるんだ。……いや、それは俺も同じか、行動理念は生きるため、けどそれを可能とするために、人の為に武器を振るう、人を殺す。
「……いいのか?あの小娘を行かせて、俺をここに縛るのが目的だろう?」
雪ん子
「零――寒波――別にできないことはしていない、護衛にされてるからな、アンタを止めなきゃ首が飛ぶ、」
「傲慢、というわけではないな。この大量に顕現している守護獣も貴様か、先の小娘の契約獣だろう、だが若い、若すぎる、故に危険だここで殺す」
ただ早いだけじゃだめだ、鬼の怪力も必要だ。常時発動の最台数は幻獣四体、十一体か、いや三明の剣を考えると十三体……戦場に慈悲はない、躊躇もない。
愛宕太郎坊 ×比良山次郎坊×飯綱三郎×大山伯耆坊×彦山豊前坊 ×白峰相模坊
「天駆――陸翼――、」
「ほう…」
酒呑童子×熊童子×虎熊童子×星熊童子×金童子
「鬼怪――五天――」
踏み込んで、翼を広げて、空を駆ける。
「?!」
「吹っ飛べ!!」
敵陣度真ん中けど、天狗六体分、六翼の速さ、さらに鬼のそれも重要の名持ちを五体、
「あ、アアアアアアアア」
「ずいぶんと力任せな」
「一太刀、入った」
「無駄だかな」
「速さ、力、霧、再生、暁……吸血鬼」
ようやくわかった、相手の守護獣、ルーマニアを起源とする西洋を代表する怪異、天狗の速さも、鬼の怪力も両方を持つ、
「よく気づいたな、俺の守護獣は吸血鬼だ、暁はこの真紅の格好と、戦場での返り血からだが……名前を聞こう」
「フェイト・ストレンジ一応、生き延び学園卒業で男爵だ」
「平民か……誇れ、我が名はコルダータ・ブラカ・ホウトウニア参る」
体とくに背中が痛い、日光で弱体化している可能性が高いのに勝てる気がしないとは化け物だな。姉さんはこれないかな、
―――――――――
「氷具――kenning――」
「エリス!」
「コルダータ?」
「まさか、暁が出てるの?」
追いついた、けどコルダータってだれ?もしかしてフェイトが引きつけてるあの騎士かな?
「だれ?」
「王国を追い詰めた一人の騎士です、返り血や鎧の色から暁と呼ばれています。や足し達が生まれる前に活躍していた公国最強の騎士」
「なるほど、」
「主なら心配はないぞ」
公国最強か、さすがにフェイト一人だけじゃ心配だな。
「白峰相模坊? 」
「ああ、撤退ように俺ともう一人残ってる、鬼六体に天狗六、妖狐一、今敵陣のど真ん中だろうな」
「……私も行く」
「飛べないお前が言っても足手まといだ」
そうだ、私の守護獣、フェンリルは飛べない、
「……それでも私は行く、それに、神と違えられた守護獣を神獣とするのなら、何で飛べないの?飛べなくても空を駆けることくらいなら」
「暴論だが、ある意味では正しいな、守護獣、それも幻獣や神獣は人の思い、恐怖、畏怖、畏敬、いろんなもんが形となったものだ」
空を掴む事は出来なくても、足場を作る事なら。
「……それじゃあ、ここ任せるね、空歩――pegma――」
―――――――――
「チートが過ぎる姉弟だな」
空に咲く氷の六花、それを足場にして駆けている。スレイプニルならば、足場は必要ないが、あの二人の高機動にはついていけない。
「いくら、いくら人数を増やしたところでコルダータは負けない、今度こそ王国は終わりです、公国最強の騎士が王国の卑劣な者に負けるはずはない!」
「卑劣ですか、随分と侮辱しますね」
「当たり前だ!王国が!公国に今まで何をしてきたか!忘れたとは言わせない!」
王国と公国のいざこざ、昔のことゆえに、事実はねじ曲げられて伝わる。今この場でどちらの主張が正しいかは分からない。そして、今この戦場を終わらせられるのは、三人だけだ。
「それでも待つしかないだろう、今の俺達はただ待つことだけしかできないのだからな」
「なら、私達は、信じましょう必ずしも勝ってくれると」
「……」
―――――――――
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」
「はあ゙ぁ゙っ」
「いい加減落ちてくれ、」
「それはできぬというものよ、しかし、わざわざこちらに来たというのに、まだ貴様を落とせぬこちらもこちらか、」
敵陣のど真ん中に来たせいで際限なくて気が来る。早く終わらせないと、体に限界が来る。限界以上に使ってるせいで、背中がかなり痛いな。
「さっさと終わらせないとな」
「ぬかせ!」




